新型コロナウイルスの影響で、老舗アパレル大手の苦境が続いているようだ。「タケオキクチ」などを擁するワールドは、ブランドクローズや店舗閉店などの構造改革を迫られている。

ワールドの直近の業績は?

ワールドは破綻してしまうのか?続く希望退職、店舗閉店、ブランドクローズ……
(画像=Imaging L/stock.adobe.com)

ワールドの2020年3月期(2019年4月~2020年3月)決算は、売上収益が前期比5.4%減の2,362億6,500万円、営業利益は同16.9%減の123億1,400万円と厳しい結果になった。

同社は要因について、2019年10月の消費税増税による消費抑制傾向や自然災害による店舗休業、記録的な暖冬による冬物重衣料の低調に加え、2020年2月後半以降の新型コロナウイルスの感染拡大の影響が追い討ちをかけたとしている。

2021年3月期の連結業績予想については、売上収益が15.8%減の1,990億円、営業利益は71億9,000万円のマイナスと、厳しい数字をはじき出した。緊急事態宣言のもと、4月末時点で2,227店舗が臨時休業しており、本格化するコロナウイルスの影響を考慮した結果だ。

2021年2月発表の2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月)決算では、売上収益が前年同期比27.2%減の1,328億4,800万円、営業収益は96億7,000万円の赤字となっている。

セグメント別では、コロナ禍が直撃したブランド事業の売上収益が前年同期比29.8%減の1,187億700万円、Eコマースの運営受託などを手掛けるデジタル事業の売上収益が同5.9%増の196億5,900万円、生産や販売ノウハウを活用したプラットフォーム事業の売上収益は同18.3%減の670億6,700万円となっている。

業績悪化に対するワールドの対応策

ワールドは2020年8月、収益力の抜本的な改善を図るため、ブランド事業の一部終息・統廃合及び希望退職の募集を柱とする構造改革の実施を決議・発表したほか、2021年2月にも構造改革に向けて取り組みを追加で実施することを発表した。

早期退職募集

2021年3月期からの新たな3ヵ年の中期計画において段階的に進める予定だった希望退職制度を前倒しし、40歳以上の社員を対象に200人規模の退職者を募集したところ、294人の応募があったという。

2021年2月には、グループ会社2社を対象に約100人規模の希望退職者を追加募集したところ、125人が応募した。退職希望者には、退職金に加えて特別加算金を支給するほか、再就職の支援も行っている。

ブランドクローズ

すべての不採算ブランドマーケットポジションや収支改善効果、顧客の購買行動の変化による影響などを多角的に検討した結果、「ハッシュアッシュ」「サンカンシオン」「アクアガール」「オゾック」「アナトリエ」の5ブランドを終息することを決定した。

その他の複数ブランドも、統廃合や改革により効率化を断行していく方針を打ち出している。

2021年2月には、「ジェット」「スーナウーナ」「エアパペル」「スマートピンク」「モディファイ」「ピンクアドベ」など、百貨店チャネルで展開するブランドなどの終息も発表した。

また、リザグループの事業移管やイノベーションリンク社の吸収合併なども発表している。

店舗閉店

ブランド終息に伴う214店の退店、また統廃合対象ブランドにおいて再編時に撤退を想定している14店、改革対象ブランドなどの低収益店130店の計358店の退店を期中に実施する方針を明らかにした。

また、2021年2月の追加改革では、新たに改革対象となるブランドに加え、さらに保守的なシナリオを検討した結果、来期も450店を退店する計画を発表している。

アパレル業界を取り巻く状況

アパレル業界では2020年に老舗レナウンが破綻するなど、新型コロナウイルスが大きく響いているようだ。

レナウンは親会社の中国企業・山東如意科技集団の子会社に対する売掛金の回収が滞ったところにコロナが追い討ちをかけ、2020年5月に民事再生手続を開始した。

同年10月には⺠事再生手続廃止が発表され、翌月から破産手続きが行われている。なお、主要ブランドの「SIMPLE LIFE」などは小泉アパレルに、「Aquascutum」や「D'URBAN」などはオッジ・インターナショナルに譲渡されている。

アパレル大手では、三陽商会の第78期第3四半期連結決算(2020年3~11月)における売上高が前年同期比約36%減の268億9,500万円となった。

一方、ユニクロを要するファーストリテイリングやワーキングウェアを専門とするワークマン、衣料品チェーンストアを展開するしまむらグループなどはコロナ禍でも前年と同水準、あるいは増収を果たしている。

安価で機能性が高いことや、コロナ禍でも足を運びやすい郊外店の展開などが功を奏しているようだ。

今後ワールドはどうなっていくのか?

コロナ禍においても、アパレルが売れなくなったわけではない。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの2021年3月期第3四半期連結ベース(2020年4〜12月)の売上高は、前年同期比で約18%増である。

従来の百貨店を中心としたビジネスモデルから脱却し、ECをはじめとしたデジタルトランスフォーメーションなど時代を反映した経営改革が求められているのかもしれない。事実、ワールドのデジタル事業は売上収益を伸ばしている。

コロナ禍では老舗の「のれん」に頼ることなく、顧客の嗜好に寄り添った商品を新たな販売スタイルで提供することが求められるだろう。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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