NISAに関心はあるものの「詳細についてあまりわかっていない」という方に向けて、制度の概要から活用メリット、注意点などについて解説します。また、後半では、3種類のNISAのうち多くの方が利用できる一般NISAとつみたてNISAの2種類にスポットを当て、それぞれの特徴やメリット、注意点についても説明します。

目次

  1. NISAの概要と3種類の「NISA」
  2. NISAで資産を運用するメリット
  3. 一般NISA口座の特徴とメリット&注意点
  4. つみたてNISAの特徴とメリット&注意点
  5. 一般NISAとつみたてNISAを比較
  6. 老後資金を作るためにNISAの活用を

NISAの概要と3種類の「NISA」

NISAの非課税期間や非課税金額は?「一般NISA」「つみたてNISA」のメリットと注意点
(画像=YukaHashimoto/stock.adobe.com)

最初に、NISAの種類や概要について基本を理解しておきましょう。

NISAの概要と制度が生まれた背景

NISAとは「Nippon Individual Savings Account」の略で、イギリスにあるISAという個人貯蓄口座制度の日本版と定義されています。日本はすでに人口が減少し始めており、少子高齢化が進行することで公的年金に対する不安が広がっています。国としても公的年金を守りたい意向はあるものの、急速に進む高齢化に対応できるかどうか不透明な部分があります。金融庁の諮問機関から「老後2,000万円不足問題」が提起されたのも、記憶に新しいところです。

そこで国民の自助努力による老後資金作りを国が支援する一環として、NISAが誕生しました。NISAを適用すると運用しているお金の運用益が非課税になるため、その税金分も老後資金の足しにすることができます。NISAを適用することに特別なコストは不要なので、ぜひとも利用したい制度です。

NISAには、「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」がある

NISAには、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAがあります。それぞれ非課税枠があるのは同じですが、用途や対象となる人が異なります。

一般NISAとつみたてNISAは20歳以上の人であれば誰でも対象になりますが、ジュニアNISAは未成年者向けの制度なので、19歳未満の人が対象です。

また、一般NISAは年間120万円までの非課税枠があり、非課税期間は最長5年です。つみたてNISAは年間40万円までですが、非課税期間は20年と長くなっています。この違いからは、一般的な資産運用と長期的な積み立て運用とで使い分けられるようになっていることがわかります。

ジュニアNISAは18歳以降でないと運用資産を引き出せないので、主に保護者が子どものために資産形成をしておくための制度といえます。

3つのNISAに共通している特徴

NISAの大きな目的は、老後など将来の資金を作るための自助努力を支援することです。そのため、3つあるNISAのすべてに枠の違いはあるものの非課税措置があります。運用益には通常、20.315%の税金がかかりますが、この非課税期間、非課税枠の範囲内であれば配当金(分配金)や譲渡益といった運用益のすべてが非課税になります。

他に共通する特徴として、損益通算ができないという点があります。国としては非課税というメリットがあるのだから売買損失はないと考えており、NISA口座で損失が出たとしても他の所得と損益通算をすることはできません。同じく3年まで可能な繰越控除もできないことになっています。

また、すでにNISA口座で保有している投資信託などの金融商品を他の口座に移すことができないのも、3つのNISAに共通している特徴です。

NISAで資産を運用するメリット

NISAを活用して投資をするメリットについて解説します。

国もNISA口座の活用を推奨している

NISAが導入された背景には、日本の少子高齢化や人口減少の問題があります。金融広報中央委員会の調査では2018年の時点で約31%もの世帯が「金融資産ゼロ」であることがわかっています。こうした人たちがこのまま老後を迎えると公的年金だけでは足りなくなる可能性が高く、最悪の場合は「老後破産」状態になることが懸念されます。そこで国は少しでも豊かな老後を迎えるための資金作りを促すために、NISAを導入しました。ここでは割愛しますが、NISAと同様に老後資金作りに特化したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)という制度もあります。

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預貯金とNISAを資産シミュレーションで比較

それでは実際に、NISAと通常の預貯金を資産運用シミュレーションによって比較してみましょう。運用期間は30年、毎月5万円の積み立てをしながら運用していくモデルで比較します。このシミュレーションには、金融庁が提供している「資産運用シミュレーション」を用いています。

最初に、定期預金で30年間運用した場合のシミュレーションです。金利は大手メガバンクの定期預金金利である0.002%を適用したところ、このような結果になりました。

金利があまりにも低いので、30年かけて増えたのはたったの5,386円です。そこに20.315%の税金がかかるので、税額の合計は1,094円です。税金を差し引くと、30年後の手元に残るのは1,800万4,292円となります。

それでは次に、NISAを利用して非課税枠を活用しながら年利3%で運用しながら、5万円ずつ30年間積み立てたとします。積み立てと運用の結果は、以下のとおりです。

ここでは先ほどのシミュレーションで小さすぎて見えなかった運用益の部分が、年々大きくなっているのがわかります。年利3%で運用すると30年後には運用益だけで1,100万円を超える金額になります。

同じ5万円ずつの積み立てであっても、30年後には約2,913万円の資産形成が実現し、問題になっている2,000万円の不足分を十分カバーできる金額となっています。ここで一般NISAを適用すると5年間の運用益が非課税になります。

最初の5年間に一般NISAを適用したとすると、約23万円の運用益に対して課税される税金分として約4万7,000円が自分のものになり、先ほど計算した30年後の総額に上乗せすることができます。

この2つのシミュレーションからわかるのは、以下の2つのポイントです。

▽預貯金とNISA投資の違い

  • 預貯金は元本保証で安全だが、低金利での資産形成は困難である
  • 資産運用でお金を増やしながらNISAなど非課税メリットも味方につけるのが重要

一般NISAとつみたてNISAの共通メリット

当記事では一般NISAとつみたてNISAについて詳しく解説していきますが、この両者に共通するメリットは、ともに非課税期間(一般NISAは5年、つみたてNISAは20年)があることです。これがどれくらいの金銭的メリットになるかは、先ほどのシミュレーションでイメージしていただけたと思います。

これとは別に、制度そのものとは直接の関係がないメリットもあります。それは「金融リテラシーの向上」と「資産運用に取り組むきっかけづくり」です。

預貯金だけで資産を保有している人は運用のことをあまり理解しておらず、そのせいでお金を増やすチャンスを逃している状態にあります。NISAが登場したことによって「税金が安くなるなら考えてみよう」という人が出てきています。資産運用に目を向けるきっかけになっていることは二次的なメリットだといえるでしょう。

一般NISA口座の特徴とメリット&注意点

一般NISAの特徴やメリット、そして投資をする際の注意点をまとめると以下のとおりです。

一般NISAで取引できる金融商品

一般NISAの対象となっている金融商品は次の6つです。

  • 株式投資信託
  • 国内、海外株式
  • 国内、海外ETF
  • ETN
  • 国内、海外REIT
  • ワラント債

個人投資家が資産運用のために利用している金融商品の大半が含まれているので、ほぼすべての資産運用に適用できると考えてよいでしょう。その一方でFXや株価指数先物、金などの商品などは対象となっていません。

口座開設可能期間

一般、つみたてともにNISAは期限のある制度です。一般NISAは2023年までの制度なので、口座開設可能期間は制度が始まった2014年1月1日から、制度が終了する2023年12月31日までです(2024年からは新NISAが始まる予定)。

一般NISAの非課税期間

一般NISAの非課税期間は、最長で5年です。毎年120万円までが非課税の対象になるので、120万円×5=600万円が非課税枠の上限となります。

なお、一般NISAには、非課税期間である5年を終了したあとも保有し続けている金融資産については翌年以降も非課税枠として適用することができる「ロールオーバー」という制度があります。ロールオーバーの最長は5年なので、最初の5年と合わせると最長で10年間にすることができます。これを概念図にすると、以下のようになります。

年末の取引は要注意

一般NISAの適用を受ける金融資産は、受け渡しベースで認定されます。証券取引所で売買されている株やETFなどの金融商品をNISA口座で買い付ける場合、2019年7月から従来よりも1日早く受け渡しされるようになっています。これは「T+2化」と呼ばれる取引の迅速化措置で、従来のまま約定から3日後に受け渡しされると思っていたものが2日後に受け渡しとなるので、年末年始をまたいで取引をする際には「2日後に受け渡される」ことをしっかり認識しておきましょう。

この「T+2化」を理解していないと、前年のNISA枠を120万円いっぱいまで使った状態で1日早く受け渡しがあったために翌年のNISA枠に入れることができなかったということが起きる可能性があります。

自分で投資対象を選択できる自由がある

先ほどご紹介したように、一般NISAでは個人投資家が資産運用に利用している商品のほとんどが対象となっているため、自由度の高い制度といえるでしょう。後述しますが、つみたてNISAは投資信託のみが対象となっているため、この点においても優位性があります。

つみたてNISAの特徴とメリット&注意点

次に、つみたてNISAの特徴やメリット、注意点について解説します。

投資対象が決められている

つみたてNISAの大きな特徴であり、一般NISAとの最大の違いは投資対象です。一般NISAは自由度が高い制度であると述べましたが、つみたてNISAの対象は投資信託のみです。しかもすべての投資信託が対象になっているわけではなく、つみたてNISAの対象商品として届けられ、認められている銘柄のみです。

この銘柄については、金融庁のホームページで常に最新の一覧表が公開されています。

対象が投資信託のみということで自由度が低く感じられる面もありますが、対象商品のなかには魅力的な銘柄も多く含まれており、投資信託だけが対象となっていることで自ずとリスク分散を図りやすいともいえます。

つみたてNISAの非課税期間

つみたてNISAは名称のとおり、積立投資を前提にした制度です。そのため毎年の非課税枠は40万円ですが、その代わり非課税期間が20年と長く設定されています。毎年40万円が20年間なので、総合計の非課税枠は800万円です。合計にすると一般NISAよりも200万円多いのも1つの特徴です。

つみたてNISAの注意点

一般NISAと違ってつみたてNISAで注意したいのは、20年間の非課税期間が終了したらそのまま終了するという点です。一般NISAではロールオーバーで翌年以降の非課税枠に移行することができますが、つみたてNISAでロールオーバーはできません。これを図で表すと、以下のようになります。

一般NISAとつみたてNISAを比較

一般NISAとつみたてNISAの違いを分かりやすくするため、一覧表にしてみました。同じNISA制度同士なので共通している点も多いですが、異なる点があるので注意が必要です。

▽一般NISAとつみたてNISAの違い

一般NISA つみたてNISA
利用できる人 20歳以上で日本に住んでいる人 同じ
非課税対象の商品 投資信託、ETF、株など 対象の投資信託、ETFのみ
口座開設可能数 一つの金融機関にどちらかのNISAから1口座のみ 同じ
非課税期間 5年間 20年間
ロールオーバーの有無 有り 無し
非課税枠の上限 600万円 800万円
取引手数料 証券会社によって異なる 同じ

なお、取引手数料については、NISA制度で定められているわけではなく、証券会社の方針によって異なります。ネット証券各社はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券などほとんどの証券会社で無料となっています。

老後資金を作るためにNISAの活用を

当記事ではNISAについての基本やメリットなどを中心に解説をしてきましたが、その背景には「預貯金だけではお金は増えず、老後資金作りには不十分」という現実があります。それであればNISAのメリットを活かしながら資産運用でお金を増やし、将来や老後に備えることを検討するのがよいでしょう。一般NISA、つみたてNISAそれぞれにメリットとデメリットがあるので、ご自身の老後資金計画に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。

文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中