投資家であれば気になるのが値上がりや値下がり、取引回数などの「ランキング」でしょう。市場からはさまざまなランキングを入手することが可能です。今回は特に「値上がり率」のランキングを元に、入手した情報を具体的に投資に活かすコツを紹介します。

目次

  1. ランキング指標を投資に活かすコツとは?
  2. 東証一部「値上がり率」ランキングトップ10
  3. 値上がり率ランキングを実際に投資に活かす5つのステップ
  4. ランキング指標はどこで見ることができる?
  5. まとめ:ランキング指標を毎日見ることで投資の材料が見つかる

ランキング指標を投資に活かすコツとは?

初めて投資をする際の金額の目安は?何を買えばいい?

株式投資をするのに情報収集は欠かせません。証券会社が発信するレポートやプロの相場見通しなどさまざまですが、すべての情報が自分の役に立つとは限らないため取捨選択が必要です。

しかし投資初心者は、どの情報を参考にしたらよいかわからないケースがあるでしょう。そんなときは、「ランキング」を参考にすることをおすすめします。ランキングを有効活用して投資のチャンスを掴みましょう。

値上がり率のランキングで動きのある銘柄がわかる!

参考にしやすいランキングに「値上がり率」があります。特に上位や下位にランクインしている銘柄は、何かしら動きがあると考えてよいでしょう。

株価成長の「初動」を掴み、投資リターンにつなげる

大きな値動きは株価成長の「初動」であることが多く、ランキングは「初動」に気づくきっかけになる可能性があります。初動を掴み、投資リターンにつなげることが株取引を成功させるコツです。

「ランキング上位だからよい」とは限らない

株価が大きく動く理由としてはいくつかあります。企業の業績が向上しそうな新しいサービスを打ち出した場合は、株を買いたい人が増えるため株価は上昇するでしょう。一方、業績不振や不祥事があった場合は、株を売る人が増えるため株価は下がります。また、社会情勢や政策に影響を受けるケースもあります。

しかし、単純に上位にランキングしているから購入すべき銘柄であると判断することはできません。今回株価が上昇したニュースが今後も業績へ継続的にインパクトがあるかを見極める必要があります。

東証一部「値上がり率」ランキングトップ10

2021年1月21日の値上がり率ランキングトップ10を見てみましょう。

▽東証一部の値上がり率ランキングトップ10銘柄(2021年1月21日現在)

順位名称時価総額取引値上昇率
(前日比)
出来高業種
1(株)サイバーリンクス256億5,000万円2,480円13.50%97万6,500株情報・通信
2(株)ランド129億6,900万円9円12.50%1,799万600株不動産業
3(株)日本M&Aセンター9,958億800万円5,920円10.04%194万4,700株サービス業
4(株)アバント472億3,000万円1,256円9.98%21万7,700株情報・通信
5(株)アゴーラ・ホスピタリティー・グループ70億4,300万円25円8.70%544万800株サービス業
6(株)ダイレクトマーケティングミックス674億7,000万円3,365円8.55%62万7,500株サービス業
7(株)Link−U186億4,000万円1,334円7.93%33万8,200株情報・通信
8ISID2,382億4,200万円3,655円7.82%44万6,500株情報・通信
9(株)セラク253億4,500万円1,841円7.72%75万4,500株サービス業
10日本光電工業(株)2,763億9,700万円3,115円7.38%88万600株電気機器

※ヤフーファイナンス 2021年1月21日時点の情報です。

1位の「(株)サイバーリンクス」は、和歌山県に地盤を持つ、食品流通や公共向けシステムを提供する企業です。2位はマンション開発、再生エネルギー投資を行う「(株)ランド」、3位には中小企業のM&Aの仲介大手である「(株)日本M&Aセンター」がランクインしました。業種で見ると、情報・通信とサービス業がそれぞれ4銘柄ランクインしています。

また、2位のランドと5位の(株)アゴーラ・ホスピタリティー・グループは、1株が1,000円未満である低位株です。低位株が安価となるのは、成熟業種や発行済み株式数が多いケースなどです。

低位株は少ない費用から投資ができることや値上がり時の上昇率が高いといったメリットがあるため、低位株を狙って投資する方法もあります。ただし、赤字が続いている、債務超過に陥っているなどもあるため業績をよく読み込む必要があります。

株価が上昇した理由を見てみよう

2つの銘柄を取り上げて、株価上昇につながった理由やその材料について解説します。

まず前提として、2021年1月21日の市場概況は、米国でバイデン新政権発足により経済対策への期待により買いが優勢、東京市場では前日の欧米株高にリスクを取る動きが強まりました。日経平均株価は反発し、1月14日の高値を上回る2万8,756円で取引終了し、30年5ヵ月ぶりの高水準となっています。

4位の(株)アバントは、連結経営・会計システムのパッケージソフトを開発する企業で、前日の20日夜に英国のソフト会社メタプラクシスの資本・業務提携が発表されました。メタプラクシスが提供する財務情報の計画や分析、可視化を支援するツールの日本における独占販売権を得ることになり、期待感から株価が上昇したと考えられます。

8位のISIDは電通の基幹システム構築を担う企業です。1月20日付けで(株)電通デジタルと電通アイソバー(株)とともに、クラウドインテグレーションを強化するグループ横断組織を設立したことを発表しました。

また1月21日夜には、2020年12月期の連結純利益が前期比で18%増に上方修正することを発表しました。企業間提携や上方修正は企業の成長性が期待できる材料です。引き続き注目したい銘柄でしょう。

同じ東証一部でも時価総額はバラバラ

ランクインしている銘柄を見てわかるように、東証一部上場といえども、時価総額はバラバラです。当然ですが、時価総額が小さい銘柄の上昇率が高くなりやすい傾向にあります。

値上がり率のランキングを参考にするときは、数値だけでなく時価総額に対しての上昇率も注目する必要があるでしょう。

値上がり率ランキングを実際に投資に活かす5つのステップ

実際に値上がり率ランキングを使って投資を行う方法を紹介します。

ランキングを投資に活かすステップ1:値上がり上位ランキングを確認する

ランキングはリアルタイムで動きます。毎日値上がり率ランキングを上位50銘柄程度チェックし、トレンドを把握しましょう。

ランキングを投資に活かすステップ2:上昇した理由を見ていく

大きな値動きには、なにかしら背景があるものです。テレビやインターネットニュース、ツイッターなどのSNS、掲示板なども参考に情報収集をしましょう。

ヤフーファイナンスのトップページにある「ヘッドラインニュース」では、あらゆる媒体の最新ニュースを一覧で見ることができます。

ランキングを投資に活かすステップ3:注目すべき材料かどうかを見極める

上昇した理由を把握したら、投資するに値する材料であるかを見極めます。

・上方修正
特に注目したいのが上方修正です。上方修正とは、従来発表していた利益を上回ることが見込まれるときに、予想利益などの数字を引きあげることです。最も多いのが四半期決算のタイミングで、企業から上方修正にあたっての説明が発表されます。

・合併・買収、提携
企業の合併や買収(M&A)、業務提携によって、企業価値が上がると判断できる場合は、引き続き株価上昇が見込めるでしょう。

・復配・増配
配当金が出る、前回より増えるという発表があった場合は、業績が好調であるあかしと捉えられます。

・自社株買い
自社株買いとは、企業が株式市場から自社発行の株式を買い戻すことです。自社株買いにより流通する発行株式数が減少するため、1株あたりの価値が高まり株価が上昇します。つまり株主が持っている株の価値が上がるため、投資家から好感を得ることになります。

・黒字転換
それまで赤字だった企業が黒字に転換するなど、節目となるニュースは投資家から注目を集め、株価上昇の要因となります。ただし、一過性のものでないかしっかり見極める必要があるでしょう。

ランキングを投資に活かすステップ4:注目した銘柄のほかの指標を見ていく

今回の株価上昇が一過性のものではないか、どのような特徴を持つ銘柄であるか、より確実性を高めるためにさまざまな指標から銘柄を分析しましょう。

・株価位置
ある定めた期間中の高値を100、安値を1として、現在の株価がどのあたりにあるかを数値化したものです。また、ローソク足を参考にして相場の見通しを把握します。

・PERなどのバリエーション指標
株価収益率(PER)とは、株価が割高か割安かを判断するための指標です。「株価収益率(PER)=株価÷1株あたり当期純利益」で計算できます。

業種により差はあるものの、一般的にPERの適正値は15倍〜20倍ほどで、これより低い場合は割安で高ければ割高といわれます。

・自己資本率や有利子負債
自己資本率は、企業の安全性を見る指標です。負債と純資産の合計額に占める純資産の割合で、自己資本比率が低いと負債が多く、高ければ体力のある企業であると判断できるでしょう。設備投資や新規事業のため借り入れをして、一時的に低下するケースもあります。

有利子負債は、利息をつけて返済する必要がある負債で、銀行からの借入金や社債などです。有利子負債が多いと利息返済が経営の負担になっていると判断できるでしょう。また、不動産業や製造業はサービス業と比べると、設備投資や不動産取得で資金が必要になるため有利子負債が大きくなる傾向にあります。よって、有利子負債を指標として使用する際は、同業他社と比較するようにしましょう。

・ビジネスモデル
画期的なサービスや新製品の発売など、魅力あるビジネスモデルは投資家の心を動かします。

また、証券会社が提供するアナリストレポートも参考になるでしょう。マネックス証券やSBI証券、楽天証券といった主要なネット証券では、サイトにアクセスすれば誰でも無料で読めるものから口座開設者のみ閲覧可能なものまで豊富に展開しています。銘柄分析にぜひ活用しましょう。

ランキングを投資に活かすステップ5:投資をする

分析を終えたら、いよいよ株を購入しましょう。

ランキングを投資に活かすステップ6:急上昇してもさらに伸びそうなら投資をする

最初はどれだけの株数を購入するか迷うものです。心配なら1単元の購入に留め、様子を見ましょう。

ほかの投資家の動向が気になるようなら、投資家が集まる掲示板を参考にするのもおすすめです。また、個人投資家やアナリストによる売買予想が記載されているサイトもあります。これらを踏まえ、今後も上昇しそうであると判断したら追加投資しましょう。

ランキングを投資に活かすステップ7:乱高下しやすいので落ち目を待つ

値上がり率ランキングの上位にある銘柄は、多くの投資家が注目しています。購入する人が多ければ上昇、一方上昇したタイミングを見計らって手放す人もいるため、株価は乱高下しやすいでしょう。

乱高下をしている最中で焦って取引をするのは禁物です。中長期での伸びが期待できそうなら、ある程度の上昇が続いているタイミングで買っても十分利益を狙うことができるでしょう。

ランキング指標はどこで見ることができる?

ランキングはインターネット上で、リアルタイムで確認することができます。

チェックしておきたいランキング指標:ヤフーファイナンス

ランキングを探すには、インターネット検索で「値上がり率 ランキング」と入力すれば、複数出てくるため、自分が使いやすいものを選ぶとよいでしょう。

なかでもおすすめしたいのが「ヤフーファイナンス」です。ランキング表には、銘柄、取引値、前日比、出来高が掲載されています。

特に使い勝手がよい点は、コード番号から銘柄の個別ページに移動できるため株価の推移や業績予測などがすぐに確認可能です。また、銘柄ごとに掲示板が用意されており、投資家のリアルな反応を知ることができます。値動きがあると掲示板が賑わうため、ほかの人の意見も参考にしたいときに活用するとよいでしょう。

ランキング指標は各ネット証券に口座開設するとチェックできる

ランキングは、証券会社のホームページでも確認できます。たとえば、SBI証券のランキングは、口座開設の有無にかかわらず無料で閲覧が可能です。口座開設をして会員ページにログインした状態で閲覧すれば、取引の項目から売買ページへ直接移動することができます。

代表的なネット証券である「マネックス証券」、「楽天証券」そして「SBI証券」のいずれかに口座を開設しておけば、ランキング情報を入手するのに困ることはないでしょう。

まとめ:ランキング指標を毎日見ることで投資の材料が見つかる

実際に投資するにあたり、単に上位にランクインしているからという理由だけでなく、上昇した背景を把握しなければなりません。それまで赤字だった企業が、黒字に転換するなどのニュースは絶好の「投機」であり、上昇した後でも利益が狙える可能性があるでしょう。ランキングをきっかけに企業研究をし、業績に継続的なインパクトがあるかを見極める必要があります。

また、同じ東証一部でも時価総額にはバラツキがあります。小さい銘柄のほうが上昇しやすいため、時価総額に対しての上昇率といった視点も大切です。

値上がり率ランキングは株のトレンドを把握するために欠かせない指標です。大きな値動きは投資のチャンスとなるため、ランキングをマメにチェックすることで、株取引を成功させましょう。

文:木田 文
大学卒業後、企業にて経理・税務・総務などを担当。結婚を機に節約や資産形成に興味を持ちFP2級を独学で取得する。現在は男児の子育てをしながらライターとして活動し、マネーに関する話題をはじめとして幅広い分野を執筆。