コロナウイルスの感染拡大防止に伴う経済対策として注目される「持続化給付金」は、副業者も対象になることをご存じでしょうか。今回は、副業をしているサラリーマンに向けて、持続化給付金の概要についてお伝えします。

コロナ対策「持続化給付金」は副業でももらえる可能性あり

金融
(画像= beeboys/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自粛を余儀なくされた事業主の多くは売上が減少しました。彼らを救済すべく創設された国の支援制度の1つが、「持続化給付金」です。持続化給付金は、以下の要件を満たす個人事業主であれば受け取れます。

  • 原則、2020年以前から事業を行っていたこと
  • 2020年1月から12月までのいずれかの月の売上が前年同月に比べて50%以上減少していること

なお、個人が受け取れる金額は「前年の総売上-前年同月比で50%以上売上減少した月の売上×12」(上限額:100万円)です。

申請は原則オンラインで行い、確定申告書や決算書などで月の売上が前年同月に比べて50%以下に減少したことを証明する必要があります。具体的には、会計ソフトで作成した試算表や売上台帳といった帳票のコピーを添付することになります。なお持続化給付金は、2021年1月15日まで申請できます。

副業サラリーマンがもらうための条件

持続化給付金を受け取れる個人は、独立して事業を営む個人事業主やフリーランスだけではありません。一部の副業を行っているサラリーマンも受け取ることができます。

事業所得で申告している場合はOK

副業をしているサラリーマンについては、副業部分を事業所得として申告していることが求められます。つまり、確定申告の際に確定申告書Bに加えて、以下のいずれかの書類を添付して申告している人が対象になります。

  • 所得税青色申告決算書(一般用)
  • 所得税青色申告決算書(現金主義用)
  • 収支内訳書(一般用)

持続化給付金を申請する際は、これらの書類だけでなく、前年同月に比べて副業収入が50%以下に落ち込んだ月があることを証明する売上台帳などの書類と、身分証明書の添付が必要です。

給与所得・雑所得は事業性の証明がカギ

副業者のなかには、副業の収入を給与所得や雑所得として申告している人もいるでしょう。本来、事業所得以外は持続化給付金の対象外ですが、6月に国会で成立した第二次補正予算で、給与所得・雑所得で事業を営んでいる人にも持続化給付金が支給されることになりました。

6月19日時点では正確な手続や要件が明らかになっていません。しかし、こちらは業務委託契約書や支払調書などで売上が減少したことを証明することが求められるでしょう。

副業サラリーマンが申請する際の注意点

持続化給付金は副業サラリーマンでももらえる可能性がありますが、注意点が3つあります。

・持続化給付金は課税対象
持続化給付金は、事業所得として課税されます。なぜなら所得税法上の非課税所得として定義されていないためです。事業上の費用の補填に当たるものは原則、すべて課税対象となります。

・株投資と不動産投資は対象外
副業で株式投資や不動産投資を行っている人もいるでしょう。残念ながら、株式投資や不動産投資については、持続化給付金を申請することができません。株式投資は「譲渡所得」、不動産投資は「不動産所得」として申告するため、持続化給付金の申請要件である事業収入に該当しないからです。

・税務調査で否認されるおそれあり
副業の収入を事業所得として申告していれば持続化給付金を受け取れますが、将来税務調査が入る可能性があります。なぜなら、正社員として生活の糧を得ている人が行う副業は、本来「雑所得」として申告するというのが税務上の考え方だからです。

事業所得として申告するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 自己の責任において継続的・反復的に事業を行っていること
  • その事業に対して相当程度の精神的・肉体的労力をかけていること
  • 社会的・職業的な地位を有していること
  • その業務から継続して安定した収入が得られること

まとめると、「本業として事業を行ったとしても、安定した収入を得られること」になります。サラリーマンについては、副業がそれなりの規模であったとしても、継続して安定収入を得ているのは給与所得であるとするのが税務署の考え方です。そのため、副業の収入を事業所得として申告していると将来税務調査が行われ、修正申告を求められるおそれがあります。

経済産業省のホームページで確認を

持続化給付金の手続きの詳細は、中小企業庁の特設サイトで確認できます。こまめに特設サイトを確認するようにしましょう。

文・鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」

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