本記事は、上岡正明氏の著書『自分のやりたいことを全部最速でかなえるメソッド 高速仕事術』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています
億り人になりたければ、金銭欲を捨てろ!
矛盾しているようですが、お金を稼ぐためには金銭欲を捨てなければなりません。自分だけ得をしようとすると、いずれうまくいかなくなります。
金銭欲が強いと、人はついてこなくなります。人の生命を左右するものだけに、人間はお金に関する直感だけは非常に優れています。自分が儲けることしか考えていない人は、一瞬で見破られるものです。
そういう人は、どんなに取り繕っても、立ち居振る舞いも、話すことも、すべてが噓くさく、自分勝手に見えます。あなたも、直感で「自己中心的な人だな」「うさんくさいな」と思ったときは、その直感を信じたほうがいいのです。
そして、私たちもそんな人物にならないように注意しましょう。仕事が軌道に乗ってきて、まとまったお金が入ると、誰しも少なからず「調子に乗って」しまいます。そんなときは、今調子がいいのはたまたまいい流れに乗っているだけだと自覚し、常に謙虚な気持ちを持つことが大切です。
独り占めするのではなく、儲けの何割かはくれてやる!の心意気でいることが大切です。
私は創業時の一番苦しいときには、社員にはきちんと給料を払いながら、自分の給料は5万円に設定していました。自分のもとで人に動いてもらう。自分を信頼し、時間とチャンスを使ってくれる。そのことに感謝して、自分はまず部下を優先して、金銭欲を捨てることから始めました。
このことは投資の世界でも同じです。投資は、欲が出るとまず勝てません。欲に支配されたら、財産をすべて失う可能性があります。
すべてを独り占めして自分が儲けると考えると、必ず失敗します。株式市場はお金を奪い合って、相手を負かしている世界であり、自分が得をすれば必ず誰かが損をしています。だから、利益の何割かは残して当然、というメンタルセットをして、負けたときは誰かにお金を残しているのだ、と考えることが大切なのです。
こういった精神状態で臨むと、相手から奪うことばかり考えている投資家より余裕が生まれて、選択の視野も広がります。投資の世界では考えられないような手を打つことができます。その結果、勝ちが広がっていくのです。
金銭欲を捨てることが億り人になるコツだなんて、まるで禅問答のようですが、ここにも、脳科学のエビデンスがあるのです。
金銭欲を手放すと、なぜお金が集まってくるのか?
アメリカのウィスコンシン大学のダビッドソン博士らの研究グループは、脳にはアクセルに相当する部位とブレーキに相当する部位があることを発見しました。
アクセルの部位が活性化すると心が前向きになり、ブレーキの部位が活性化すると心が沈むのですが、この研究グループは脳波の測定によってアクセルの活性が強い人はどのような人か突き止めたのです。
最もアクセルが活性していたのは、ダライ・ラマの通訳もしているチベット仏教の僧侶、マシュー・リカール氏という人物でした。
リカール氏は、通常時でも普通の人より10〜100倍もアクセルが活性していました。また、「あること」をしていると、さらに5倍の50〜500倍も普通の人より活性化していたのです。
その「あること」が何かわかりますか?
それは、彼が利他の心(慈悲の心)で、人の幸せを願う瞑想をしているときです。このときの脳の状態は「セルフレス」と呼ばれています。つまり「私心がない」ということ。この研究によって、金銭欲や名誉欲などの私心がない状態が、最も脳を活性化させることがわかったのです。
一方、脳の機能を衰えさせているのは「エゴ」。すなわち「自分さえよければ」「自分さえ稼げれば」という心持ちでした。
エゴが強い人は、脳のアクセルとブレーキの回路が分断されてしまい、脳全体の機能を鈍らせてしまうことがわかりました。
つまり、金銭欲を手放せれば、脳の機能が最大限に高まり、誰も思いつかなかったような発想や働き方をすることができるようになるのです。
もちろん、私は金銭欲を捨てろと言っているわけではありません。経営者の使命は利益の追求と社員の幸福です。社員の幸福は給与の額に左右されるのも事実です。チベット仏教の僧侶のように、あらゆる私心を手放すことなど、一朝一夕にできることではありません。
しかし、もし自分が「自己愛」「自己中心的」な状態になっているときは、この研究のことを思い出してほしいと思います。私も欲が出そうなときは、意識的に「利他の心」を心に刻んでいくことで、脳にブレーキがかからないように心がけています。
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