本記事は、上岡正明氏の著書『自分のやりたいことを全部最速でかなえるメソッド 高速仕事術』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています
90分×3セット仕事術を使え!
仕事を高速化する有名なメソッドに「ポモドーロ・テクニック」という方法もあります。これは「25分集中して働き、5分休憩する」のを繰り返す手法です。考案者である作家のフランチェスコ・シリロがトマト型のキッチンタイマーを使って時間を計っていたことにちなみ、「ポモドーロ(イタリア語で「トマト」の意)」と名付けられたそうです。
それはさておき、ポモドーロ・テクニックを知った私は、会社で実践したことがあります。「25分集中するぞ!」と意気込んで始めましたが、まあ、集中できない(笑)。
電話はかかってくるし、部下には声をかけられるしで、集中力が途切れてしまいます。一度途切れた集中力を取り戻した頃には、25分の制限時間が終わってしまい、結果、全然仕事が進まないという悲劇が訪れてしまいました。
うまくこなしている人もいるのかもしれませんが、ポモドーロ・テクニックは日本でオフィスワークしている人にはなかなか実践が難しいのでは、というのが私の感想です。逆に一人になれる場所で、徹底的にタスクに集中したいときには力を発揮するでしょう。
では、オフィスではどのように働くと高い集中力を得られるのか?
結論からいうと、「1日、90分の集中時間を3回つくる」ことです。
これには脳科学的にも根拠があります。
昨今の研究で、人間の体には「ウルトラディアンリズム」という約90分の脳波の周期があることがわかってきました。
脳波を調べた研究では、人間は覚醒度の高い90分と眠気が強い20分が交互に訪れていることが判明したのです。
私はこの「ウルトラディアンリズム」に注目し、1日のスケジュールに、90分集中する時間を、20分の休憩を挟んで3回作って働くようにしました。
これが大変有効なのです。
90分の集中時間の間、私は出退勤のホワイトボードに「不在」と記し、電話が鳴っても来客があっても、取り次がないよう部下にお願いしました。そうすれば、集中力を途切れさせず、ひとつの仕事にフォーカスすることができます。
また、90分という時間があれば、かなりディープにひとつの仕事を掘り下げられ、失敗体験も成功体験も得られるのは嬉しいところです。せっかく集中するなら、その時間内に何かしらの達成をしなければ、継続するのが億劫になってしまいます。25分だけだと、時間が短すぎて難しいのです。
さらに、90分という区切りは「ウルトラディアンリズム」が示す通り、人間が集中できる限界の時間だといわれています。限界値まで集中できたという成功体験が、また私の脳にドーパミンを分泌してくれるわけです。
集中時間を終えた後の20分は、外を散歩したり、ストレッチするなどして、脳を回復させていきます。そして、また次の90分に挑んでいきます。
このリズムを習慣化すれば、1日に4時間半もの集中時間を確保できます。脳を使わずに処理できるメールの返信や書類の捺印などの事務作業、ルーティン化した会議などはそれ以外の時間で処理することが大切です。
高速仕事術を実践する際は、ぜひ「90分×3セット仕事術」を取り入れてみてください。
職種によっては電話や来客、部下や上司からの声がけなど、さまざまなノイズがあるかもしれません。
しかし、90分あれば一度途切れた集中を取り戻すことができるでしょう。「高速タイムアタック時間術」とあわせて行えば、効果はさらに倍増します。
「壺の中には大きな石から入れる」がタイムマネジメントの鉄則
「90分×3セット仕事術」は、タイムマネジメントの観点からも非常に有効な働き方です。
こんな話があります。
ある大学教授が大きな壺を取り出し、壺が満杯になるまで大きな石を詰めたといいます。学生に「この壺は満杯か?」と尋ね、学生が「はい」と答えると、今度は砂利を出して、壺の中に流し込みました。砂利の次は砂、砂の次は水という具合に、次々と粒子の小さい物質を満杯だと思った壺の中に入れていったそうです。
このエピソードが何を意味しているかというと、「先に水を入れてしまったら、壺の中に石を入れることはできない」ということです。
このことを仕事に置き換えると、壺は「ワーキングメモリ」や「時間」であり、大きな石は「フォーカスする仕事」、砂利、砂、水は「メール返信や事務作業」にあたります。
つまり、日常の雑事を優先的に処理していると、本当にすべき仕事に集中するためのワーキングメモリや時間がなくなってしまうわけです。
「90分×3セット仕事術」によって、大きな石(フォーカスする仕事)に集中する時間を1日のスケジュールに入れる。
そのスキマ時間に、砂利や砂、水で壺を満たしていく。この順番が成果を上げるための鉄則なのです。
何を優先すべきか迷ったときは、「壺の中には大きな石から入れる」ことを忘れないようにしてください。
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