中国は、2030年ごろに米国を抜き世界最大の経済大国になると見込まれている。約14億人の人口を背景に内需のポテンシャルは大きくすでに経済大国となった2021年現在でも経済成長力は世界でも傑出している状態だ。2021年4月時点で世界の株式時価総額の上位は、世界のプラットフォーマーである米IT大手のGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)が占めている。
しかし将来的には、ここに中国企業が入ってくる可能性があるだろう。本稿では、注目の中国急成長分野を解説していく。
目次
成長著しい中国
中国の2021年第1四半期(1~3月)のGDPが18.3%増と過去最大の伸びで市場を驚かせた。前年同期は、新型コロナウイルスの直撃による経済活動の停滞で-6.8%。しかし世界に先駆けてコロナからの回復を示した。IMF(世界通貨基金)は、2021年4月時点の世界経済見直しで2021年の世界の実質GDP成長率予測を前回1月の+5.5%→+6.0%に引き上げた。
なぜなら世界的な経済対策が効果を発揮しコロナワクチンが普及してきたからだ。上方修正をけん引したのは米国と中国。米国は、5.1%→6.4%に中国は8.1%→8.4%に引き上げられた。ちなみに日本も3.1%→3.3%に引き上げられている。2020年の世界経済はコロナ禍で-3.3%だった。米国は-3.5%、日本は-4.8%だったが主要国の中で中国だけは+2.3%とプラスを維持。
中国の2021年は、2020年がプラスなうえでの+8.4%なのだ。このように中国の強さは際立っている。IMFは、2022年について世界は+4.4%、米国+1.3%、中国+5.6%、日本+0.2%を見込んでいる。中国の成長力は目覚ましい。
中国の成長は、“中国のシリコンバレー”深センから!
中国は、官民を挙げて最先端のテクノロジーに取り組んでいる。5Gや電気自動車、電子決済など多くの先端分野のインフラが普及しているため成長余地は大きい。けん引しているのは、アジアのシリコンバレーといわれる「深セン」である。深センは、金融、貿易センターとしての地位を確立していた香港と隣接している地理的重要性から1979年に誕生、1980年には経済特区となった。
外資系企業などを誘致しもともと何もない農村地帯であった場所を一気に近代的都市として発展させ人口も経済も飛躍的に拡大。当初は、労働集約型の産業が発展したが1985年ごろからハイテクに大きく舵を切り世界を代表するハイテク都市へと変貌した。ファーウェイやテンセント、BYD、ZTE、DJIなど世界的にも有名な企業が深センに本社を置いている。
深センのGDPの約3分の1がハイテク産業なのだ。深センの2020年の実質GDPは+3.1%。中国全体の+2.3%を大きく上回っている。民間企業も積極的に先端分野に投資しプラットフォーマーとして着実に世界での地位を上げてきているのだ。2021年4月時点で世界の時価総額トップ10にテンセント、アリババがランクインしている。
また世界のユニコーン(企業価値10億ドル超のスタートアップ企業)の約3分の1が中国企業だ。中国には、上海証券取引所と深セン証券取引所の2つの証券取引所がある。大企業向けのメインボードとして上海にA株とB株、深センにA株とB株市場があるのだ。新興市場としては上海に科創板、深センに中小企業板、創業板がある。
深セン総合株指数は、テクノロジー株のウェイトが高くパフォーマンスは2019年、2020年ともに+34%と上海総合指数の2020年+22%、2021年+14%を大きく上回っている状態だ。上海総合指数よりもこういった中国の成長を享受する指数に注目したい。
今後中国で注目される8テーマ
深センの盛り上がりも踏まえて今後中国で注目される8つのテーマを紐解いてみよう。
1. BAT……GAFAMの次を担うIT系大手
まず押さえておきたいのが米国のGAFAMを追う存在のBATだ。中国IT系ジャイアント企業の頭文字で検索サービス大手の「バイドゥ」、Eコマース大手の「アリババ」、SNS大手の「テンセント」を指す。スマホの普及とネット社会の進展のため、すでに中国ではBATなしでは生きていけないような存在となっているのだ。
モバイル決済やオンラインゲーム、AI、動画サービスなど、多くの新規ビジネスやサービスで中国を主導している。またBATの次の存在も押さえておきたい。未上場のスタートアップ企業で評価額が10億米ドルを超えるユニコーン企業には、米国と中国企業が多い傾向だ。中国には、評価額が100億米ドルを超える以下のスーパーユニコーンも3社ある。
・バイトダンス:人気動画SNSアプリ「TikTok」を運営 ・ディディ:配車サービス ・クワイショウ・テクノロジー:ショートムービーアプリ運営
クアイショウは、2021年2月5日に香港市場にIPOし上場。2021年4月にディディはIPOを申請、NY市場で上場する見込みだ。こうした次世代を担うスタートアップがドンドンでてくるのが中国の強みである。
2. 中国製造2025での重点分野
習近平国家主席が2015年5月に発表した産業政策で製造業の高度化を目指し次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定した。世界の製造強国の先頭グループ入るための長期戦略の根幹である。これも大きなテーマとして把握しておきたい。10の重点分野には、以下のようなものがある。
・次世代情報技術(半導体、5G) ・高度デジタル制御の工作機械・ロボット ・航空・宇宙 ・海洋エンジニアリング・ハイテク船舶 ・先端鉄道設備 ・省エネ・新エネ自動車 ・電力設備 ・産業用機材(大型トラクター) ・新素材(超伝導素材、ナノ素材) ・バイオ医療・高性能医療機器
3. AI
AIの実用性が向上しあらゆる分野で本格的な導入が始まった。中国でもAIは注目の分野としてBATや大学発のベンチャー企業など研究開発に力を入れており政府・金融機関も手厚く支援している。ソフトバンクグループの孫社長がAI革命と称してAI関連企業に多く投資していることでも有名だ。AIは、あらゆるビジネスを変えていく力があるだけに中国市場でも重要なテーマとしてクローズアップされていくだろう。
4. 電気自動車
2019年時点で中国の自動車市場は、米国を大きく上回り世界一だ。電気自動車(EV)の販売台数も世界一。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車(NEV)の普及が急ピッチで進めており2035年までに新車に占めるNEVの比率を50%以上に高める方針だ。中国の主要都市は、タクシーやバスなどの公共車両のEV化を進行中。深センでは、すでにほとんどの公共車両はEV化されている。
また佐川急便が中国製EVの導入を決め配送用の軽バン7,200台すべてをEV化し中国の五菱汽車が製造を受託。中国発の自動車業界の革命が始まりだ。中国EV大手のBYDは、自社のEV全車種に自社開発の新型電池を搭載すると発表した。今後は、EVとともに自動運転や車載バッテリーなどもテーマとして注目されるだろう。
5. フィンテック
中国では、スマホ決済やQRコード決済が完全に普及するなど決済のIT化が進んでおりフィンテックでも世界のトップグループだ。BATを中心に多くのIT企業が市場に参入している。アリババの金融子会社アント・フィナンシャルとテンセントのフィンテック事業が双璧。グループが保有する幅広いデータを使うことでデジタル決済を利用する大勢の顧客融資、資産運用、保険、信用スコアなど金融サービスに誘導する戦略だ。
ちなみにアントは、2020年にIPOの計画があったが金融分野の規制問題で上場は延期された。アントもテンセントのフィンテック事業もユニコーンでありグループ内でも企業価値が高いだけに今後も注目だ。
6. ドローン
中国のDJIテクノロジーは、世界最大のドローンメーカーだ。米国で大成功を収め市場シェアは圧倒的。ドローンは、空撮や農薬散布、点検、測量といった多くの分野ですでに実績がある。しかし山間地や離島の物流にも使われ始めており物流や警備などを根本から変える可能性があるため「空の産業革命」ともいわれている分野だ。
DJIは、米中摩擦で米国の禁輸リストに挙げられたため今後の動向は不透明だが中国のドローンでの優位性が揺らぐわけではなさそうだ。
7. サービスロボット
ロボットは、国を挙げて強化している部門の一つ。増加しているのがサービス用ロボットだ。2019年の中国のロボット市場は約8,900億円で産業用が65%、サービス用は35%である。ロボット市場の成長をけん引しているのは、サービスロボットであり過去2年間で70%も市場が拡大した。サービス用ロボットは、家庭用や特殊用途(物流など)、医療用、公共サービスなどに拡大している。
中国は、世界最大のロボット市場だが国内ブランドの技術力が弱かった。しかし中国メーカーが力をつけはじめ日本メーカーのシェアが落ち始めている。既存の機械メーカーもロボット分野に次々と参入しており今後も目が離せないだろう。
8. 再生エネルギー
中国は、世界最大のCO2排出国である。しかし習近平国家主席は、2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ2060年までにカーボンニュートラル達成を目指して努力すると表明。さらに2030年までに太陽光と風力の設備容量を計12億キロワット以上に引き上げる計画だ。2020年に新設された風力発電の発電能力は、前年の2.7倍、太陽光発電も8割増。
原発約120基分もの再エネがわずか1年で整備された。中国の再エネ市場は大きい。再エネ以外でも廃棄物処理や水処理、新エネ・再エネ、エコ自動車など中国のグリーン経済市場は注目だ。
中国株を選ぶなら、まずは「BAT」に注目!
中国経済の成長力は、他の先進国と比較しても高く2030年ごろにはGDPが米国を超えて世界一になるのはほぼ確実だ。今プラットフォーマーとして世界に君臨するGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)を抑えてBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)が世界の時価総額上位を占めることもあるかもしれない。投資でイノベーションによる成長企業を取り込みたいなら中国に注目しない手はないだろう。
また中国株は、日本株に比べて米国株との相関関係も低いため、分散投資効果も期待される。世界の覇権争いで米中摩擦が激化することも予想されるがうまく共存してけるなら中国が次世代に与える影響は大きいはずだ。個別銘柄でテンバガーを狙うのもETFで中国ハイテク市場の上昇を狙ってもいいだろう。BATならびに今回紹介したテーマには注目しておきたい。
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