株式などの金融商品を保有していると配当を得られることがあります。配当はそのまま現金としても受けとれますが、再投資によって複利効果を得たほうが、効率的な資産形成を図れるかもしれません。

今回は、配当の使い道の種類や複利効果の意味、再投資と長期投資の親和性、再投資と増配企業の親和性、再投資の注意点などについて解説します。

利回りが固定なら「配当の再投資」は有効な選択肢

複利効果と長期投資の相性が良い理由
(画像=m.mphoto/stock.adobe.com)

配当金を再投資すると、追加で投資をした分にもリターンが生じます。この手法を繰り返せば複利効果を得られるため、利回りが固定であることを前提にした場合は、配当の再投資は有効な選択肢になります。

ただし、投資総額を増やすと損失のリスクも拡大する点には注意が必要です。再投資の後に金融商品が下落すると、想定していた以上の損失を抱えてしまうかもしれません。

配当の再投資はひとつの選択肢ですが、ご自身の目的や相場状況を見ながら慎重に判断しましょう。

配当の3つの使い道

配当には、どのような使い道があるのでしょうか。以下では3つの選択肢を確認していきましょう。

1.生活費に回す

配当金は現金で受けとれるため、日々の生活費に回せます。具体的には、食費の足しにしたり娯楽や趣味に回したりする選択肢があるでしょう。また、基本的に配当は時期が決まっているため、事前に使い道を決めやすい特徴があります。

2.貯金する

資産形成を目的にしている場合は、配当を貯金に回すことも選択肢になります。ただし、金融商品の利回りに比べると金利が低いため、大きなリターンを期待することは難しいでしょう。

日本銀行のデータを参考にすると、定期預金の平均金利(総合)は2024年9月時点で0.189%です。仮に100万円を預け入れた場合、1年後に期待できるリターンは1,890円になります。

参考:日本銀行「定期預金の預入期間別平均金利(新規受入分)(1)総合

3.再投資する

投資元本から得た配当を再投資に回す方法です。たとえば、配当利回り3%の株式Aを100万円購入すると、年3万円の配当を受けとれます。この3万円で、再び金融商品を購入する方法が再投資です(例ですので税金や手数料などは考慮していません)。

なお、金融商品によっては金額指定の購入ができないため、配当をきれいに使い切れない場合もあるでしょう。また、年間配当だけでは、金融商品の最低購入金額に届かないケースも想定されます。端数が残ってしまった場合は、一時的に現金として保有し、まとまった資金になったタイミングで再投資する方法もあります。

配当を再投資すると効率的な資産形成を目指しやすい

効率的な資産形成を目指している場合は、配当の再投資がひとつの選択肢になります。生活費に回さないと生活が成り立たない場合はやむを得ませんが、できる限り運用益を再投資に回すと、複利効果を得られる可能性があります。

複利効果とは

運用益を再投資に回すことによって効率的な資産形成を実現できる理由は、「複利効果」があるためです。複利効果(複利運用)とは、投資元本を運用して得られた利益を再投資することで元本が増え、得られる利益が増えることです。利益を再投資せず、当初の投資元本を変えずに利益を受けとることを「単利」と呼びます。複利運用をすることで、単利運用よりも資産を早く大きく増やすことができます。

たとえば、投資元本100万円を年5%の利回りで10年間運用するとします。税金や手数料などを考慮しない場合、単利運用だと150万円(投資元本100万円+年間利益5万円×10年分)になりますが、複利運用だと約163万円に増えます。10年で約13万円の差がつくのです。

複利効果と長期投資は相性がよい

複利効果は、長期投資と相性がよいと言えます。上記の設定の運用期間が20年・30年に伸びた場合のシミュレーションは以下のとおりです。

<投資元本100万円を年5%利回りで運用> ※税金や手数料などは考慮せず
10年間単利運用した場合:150万円
10年間複利運用した場合:約163万円(10年間単利運用に比べて+約13万円)
20年間単利運用した場合:200万円
20年間複利運用した場合:約265万円(20年間単利運用に比べて+約65万円)
30年間単利運用した場合:250万円
30年間複利運用した場合:約432万円(30年間単利運用に比べて+約182万円)

運用期間が20年の場合、複利運用は単利運用に比べて約65万円多く、運用期間が30年の場合、複利運用は単利運用に比べて約182万円多く得られるのです。このように、投資期間が長くなればなるほど複利効果は大きくなります。

ただし、配当を再投資すると投資総額が増えるため、金融商品が下落したときの影響も大きくなります。実際に再投資で複利効果を狙うかどうかは、相場状況を見ながら慎重に判断してください。

連続増配企業だとなおよし

複利効果と長期投資を組み合わせることで効率的な資産形成を実現できますが、投資対象が連続増配企業だった場合は、さらに大きな効果を得られます。

増配とは、株主に還元する配当金を増やすことです。なかには、30年以上連続で増配を続けている企業もあります。

増配できるということは原則として業績が好調であり、連続増配ができるということは原則として業績が右肩上がりということです。そのような銘柄は、中長期的には株価も上昇する可能性が高いと言えます。

税金がかかることに注意

配当には、20.315%の税金がかかります。したがって、税金を支払った後の金額を再投資することになります。

再投資する資産の価格の下落に注意

配当を再投資して複利効果を得る運用は効率的ですが、万能ではありません。再投資した資産の価格が大きく下がると、配当と売買益を合わせたトータルリターンはマイナスになる可能性があります。

配当の再投資する方法は優れているものの、「投資対象をよく見極める」という投資の大原則は忘れないようにしましょう。

「配当再投資(複利効果)+長期投資」の組み合わせが有効

ここまで、配当金の使い道の種類や複利効果の意味、再投資と長期投資の親和性、再投資と増配企業の親和性、再投資の注意点などについて解説しました。

効率的な資産形成を実現するためには、配当を再投資して複利効果を得ることをおすすめします。「配当再投資(複利効果)+長期投資」をコツコツ続けていくことで、いずれ大きな資産形成が期待できるでしょう。

※上記は参考情報であり、特定の株式やファンドの売買を推奨するものではありません。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

(提供:Wealth Road