本記事は、本橋亜土氏の著書『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

あなたも無意識に使っている!言葉を弱める恐ろしいひと言

言葉
(画像=yu_photo/PIXTA)

伝わり方を弱めてしまうひと言。先ほどの「級」以外にもあります。しかも、私たちは知らず知らずのうちにこれらの言葉を多用しています。

気づかないうちに大損している、といっても過言ではないのです。

それはいったいなんなのか。その前に、私たち日本人のある特性を説明します。

日本人は古くから、あいまいな語尾とおじぎで、独特のコミュニケーションを作り上げてきました。その背後には、人を傷つけないようにする配慮や謙遜を重んじる文化があります。

そのせいもあって、日本人は、ハッキリものを言う「言い切り口調」が苦手です。これが、言葉を弱くする大きな要因の1つなのです。

逆に、「言い切り口調」を意識するだけで、まわりの人と差別化できるとも考えられます。つまり、

使う言葉に「ダイレクト感」を持たせること

です。

「ダイレクト感って何?」と思った人もいらっしゃることでしょう。

簡単に言えば、余計な言葉をつけず、よりシンプルに伝えることです。

あなたは、普段の会話や文章を書く際にこんな表現を使っていませんか?

○○という話
○○などを経て
○○とかがいいと思う

○○の後にくる部分、実は余計な言葉であることが多いのです。

過去にご自身で書いた資料やメール、SNSの投稿を見てみてください。おそらく、無意識に使っているはずです。

これらは、言葉をぼんやりさせ、表現を弱くしてしまう不必要ワード!

もちろん、これらの言葉が必要な場合も多々あります。しかし、思い切って取ってみると、内容にまったく影響を与えない場合のほうが多いのです。

例を挙げてみます。

(1)本書が伝えるのは、
オンライン会議の伝わり方が弱まるという点を解決する演出法。

(2)本書が伝えるのは、
オンライン会議の伝わり方が弱まる点を解決する演出法。

いかがでしょうか?

「という」が入っているか、入っていないかだけの違いですが、(1)の文章はなんだかまどろっこしいですよね。 当該部分だけ抜き出すと、より顕著に違いを感じることができるはずです。

(1)伝わり方が弱まるという点を解決

(2)伝わり方が弱まる点を解決

(1)よりも(2)のほうが、何が解決されるのかがダイレクトに伝わってきます。

私たちは、普段の話し言葉でも、「という」「っていう」をはじめとする不必要ワードを多用しています。普段の会話を録音する機会はなかなかありませんが、未編集のインタビュー映像を見ると、驚くほど多く使われているのです。

余計な言葉を排除して、ダイレクト感を強める作業は、番組制作の現場でナレーションを書くときに大切にされているテクニックです。

法則 余計なひと言を徹底排除する

番組のナレーションは、限られた尺のなかで、最大限の伝達効果を上げなければなりません。そのため、多くのディレクターが、一語でも余分な言葉を排除して「ダイレクト感」を出そうと試行錯誤しています。

以前、「しゃべくり007」(日本テレビ)のディレクターをしていたとき、こんなやりとりがありました。

その日、私はタレントのSHELLYさんがブレイクしたてのころの「恥ずかしいVTR」を発掘し、本人に見せるという企画のナレーションを書いていました。

そのとき、私が書いたナレーションは次のとおりです。

その時、SHELLYの取った行動が、実は視聴者に誤解を与えるということに……。その一部始終、ご覧下さい。

プレビュー(チェック)の際、先輩ディレクターからこんな指摘を受けました。 「余計な言葉が入っているからフワッとしてしまう」。そして、こんなふうに直してくれました。

その時、SHELLYの取った行動が、実は視聴者に誤解を与えた。その一部始終、ご覧下さい。

尺は短くなり、伝わり方に「ダイレクト感」が増し、言っていることがより明確になった印象を受けます。

わかりやすく2つを並べてみましょう。余計な言葉に線を引いてみます。

【ビフォー】
その時、SHELLYの取った行動が、実は視聴者に誤解を与えるということに……。その一部始終、ご覧ください。

【アフター】
その時、SHELLYの取った行動が、実は視聴者に誤解を与えた。その一部始終、ご覧ください。

先述の通り、限られた尺の中で、最短距離で内容を伝えられるのが良いVTRです。

普段のコミュニケーションでもまったく同じことが言えます。

短く、インパクトのある文章で「いいね」を獲得したい、印象に残る履歴書を書きたい、限られた打ち合わせ時間内にクロージングをかけなければいけない……、そのためには、余計なひと言を極限まで排除して「ダイレクト感」を演出する必要があります。

これが、「相手に頭を使わせない」ことにつながるのです。

テレビ番組のナレーションは、常にこの考えで書かれています。「ダイレクト感」のある表現のお手本にもなりますので、注意深く聞いてみてください。

ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則
本橋亜土(もとはし・あど)
1978年生まれ。番組制作会社スピンホイスト代表取締役。大学卒業後、バラエティ番組専門の制作会社を経て、ドキュメンタリーを制作するフォーティーズに入社。同社代表で、日本ドキュメンタリー界の巨匠である東正紀氏に師事する。その後、複数の制作会社でディレクターとして「王様のブランチ」(TBS)「行列のできる法律相談所」「嵐にしやがれ」「しゃべくり007」(全て日本テレビ)など、複数の人気情報・バラエティ番組を制作する。その後、プロデューサーを経て2017年に独立し、株式会社スピンホイストを設立。「ニンゲン観察バラエティモニタリング」「バース・デイ」(ともにTBS)「それって!? 実際どうなの課」(中京テレビ)などの番組を制作。一方、独立時に本書の元となった、テレビ業界の「伝え方の勝ちパターン」を体系化し、そのノウハウを使った企業PR動画の制作業務をスタート。「テレビの手法を活かした完成度の高い動画が作れる」と評判を呼び、住友林業、新日本製薬、マルコメなど、数多くの企業から依頼が舞い込んでいる。

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