SPCを理解し、資金調達に活用

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(画像=THE OWNER編集部)

SPCの役割は、企業から資産を切り離して保有することであり、SPCを設立することにより資金を調達しやすくなる。そのスキームは3つあり、それぞれにメリットが異なることなどを理解し、資金調達や資産管理の選択肢として活用していただきたい。

SPCに関するQ&A

Q.SPCとは何ですか?

A.日本の会社には、株式会社や合同会社などさまざまな形態の法人がある。その一つがSPCだ。SPCとは「Special Purpose Company」の略で日本語では「特別目的会社」と呼ばれる。SPCは、SPC法をもとに創設される会社だ。SPC法とは資産の流動化に関する法律で、簡単にいうと資産をもとの会社から切り離して現金化させやすくするための法律である。

SPC法は、先に海外で普及した法律だが日本では1998年に成立した。SPCは、主に「会社が所有している不動産などの特定の資産を切り離しその資産を所有する」「その資産を使った特定のプロジェクトを推進するためだけに作られる」といった会社だ。SPC法の施行当初、SPCはペーパーカンパニーであることが多かったが現在では実際に動きがある会社も多くなってきている。

またSPCが資産を保持することを目的としている場合は、当初その資産を保有している会社が倒産しても資産を守ることができるため、企業にとって大きなメリットになるだろう。

Q.SPCのメリットとは?

A.SPCには、多くのメリットがあるが代表的なものは「資産の保持」と「資産の切り離し」である。SPCは、そもそも資産の流動化のために作られる特別目的会社のため、資産保持できるメリットが大きい。まずSPCは、その仕組みにより倒産することがないため、保有資産を第三者から差し押さえられることがない。つまり「資産の保持」のメリットがある。

もともとの会社に資産がある場合、その会社が倒産すれば差し押さえの対象となるが、SPCを設立し資産を移しておけば保持する資産は守られることになる。またSPCには「資産の切り離し」のメリットもある。これは、もともとの会社が存続することを前提に考えたメリットだ。もともとの会社に資産があると、その資産を維持するために資金調達を継続的に行っていく必要がある。

会社の成績によっては、投資家にとって好ましい成果を出しにくい可能性も出てくるだろう。しかしSPCを設立し本体の会社からSPCに資産を切り離すことで自己資本比率や総資産回転率などの指標を改善することが可能だ。

Q.SPCのデメリットとは?

A.SPCの代表的なデメリットとしては「コストや手間がかかること」「不正利用」などがある。例えば株式会社などは、資本金が1円から設立できるが特定目的会社の設立の場合は最低10万円の資本金が必要だ。また会計監査や投資家に対する報告などの運用面でもコストがかかる。そのほかにも内閣総理大臣への届出や資産流動化計画および業務開始届出の提出など多くの手間がかかる点もデメリットだ。

またSPCの不正利用のデメリットについても押さえておきたい。実は、SPCが日本に導入された当初は、会計に関する規定もあまりできていなかったため、会計の抜け穴も大きかった。その結果、含み損のある資産を簿価で売却し損失を計上しないようにすることなどが可能だった。

またSPCは、連結対象にしなくてもよかった時期には、多額の含み損を抱えた資産をSPCに売却することで本社の決算で損失を少なくすることも可能だった。現在は、SPCに関する会計基準も厳格化されており不正はしにくくなっている。

Q.SPCの3つのスキームとは何か?

A.SPCのスキームには「合同会社匿名組合スキーム」「特定目的会社スキーム」「投資法人スキーム」の3つがある。

・合同会社匿名組合スキーム
投資家からの匿名組合出資や金融機関からの借り入れで不動産などの信託受益権を取得して運用するスキームだ。法人の維持管理のためのコストが少なくすみ、会社の組織も簡素でよいなどのメリットがある。

・特定目的会社スキーム
特定目的会社を設立するスキームである。金融機関からの特定借入・特定社債や投資家からの優先出資により不動産信託受益権やその不動産自体を取得して運用する。ほとんどの資産や財産権に投資することができるなどがメリットだ。

・投資法人スキーム
投資法人を設立し投資家から資金を集めて運用するスキームだ。運用期間を設けずに長期の運用を行うことができるので、収益性の高い資産に対して投資できるメリットがある。

この3つのスキームのうちどのスキームを利用するかは、自社の事情に応じて判断しよう。