三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は、日本の「3大メガバンク」だ。2021年3月期の決算が出揃ったが、唯一最終利益が前年割れしたメガバンクがある。3大メガバンクの業績を比較しつつ、前年割れの理由も考察する。
コロナが銀行業界に与えたプラス面とマイナス面
新型コロナウイルスの感染拡大は、銀行業界にどのような影響を与えたのだろうか。マイナス面もあるがプラス面もある。
プラス面は、業績が悪化する企業が増えたことで、新たな融資先を獲得しやすくなったことだ。もちろん融資先企業に対する審査は厳しく行う必要があるが、融資先が増えるということは将来の利益拡大につながるため、各行が力を入れている。
コロナ禍によって社会不安が高まったことで、資産運用に関心を持つ人が増えたこともプラスに働いた。投資信託などの販売が増えれば、その分手数料収入が増えるからだ。
マイナス面は、融資先企業の倒産に備えて多くの「貸倒引当金」を計上しなければならなくなったことだ。貸倒引当金は利益を圧迫するため、その分を何かで補わなければ、利益が前期を割る可能性が高まる。
3大メガバンクの2021年3月期の連結業績を比較
このように、コロナは銀行業界に対してプラス面の影響とマイナス面の影響を与えた。プラス面の影響で利益を押し上げられた企業は、コロナ禍でも前期割れを回避できた。
それでは、3大メガバンクの決算概要を紹介していこう。
三菱UFJフィナンシャル・グループ:最終損益は47.1%増
まずは、三菱UFJ銀行の金融持株会社である三菱UFJフィナンシャル・グループの2021年3月期の連結業績(2020年4月〜2021年3月)を見てみよう。経常収益、経常利益、最終利益は以下のとおりだ。
<2021年3月期の決算概要>
項目 | 2021年3月期 | 前期比 |
---|---|---|
経常収益 | 6兆253億3,600万円 | ▲17.5% |
経常利益 | 1兆536億1,000万円 | ▲14.7% |
最終利益 | 7,770億1,800万円 | 47.1% |
経常収益と経常利益は前期を割ったが、最終利益は47.1%増の7,770億1,800万円と大幅に増えた。
みずほフィナンシャルグループ:最終損益は5.0%増
みずほ銀行の金融持株会社であるみずほフィナンシャルグループの決算概要は、以下のとおり。
<2021年3月期の決算概要>
項目 | 2021年3月期 | 前期比 |
---|---|---|
経常収益 | 3兆2,180億9,500万円 | ▲19.2% |
経常利益 | 5,363億600万円 | ▲15.9% |
最終利益 | 4,710億2,000万円 | 5.0% |
経常収益と経常利益はともに前期割れで、どちらも下げ幅は三菱UFJフィナンシャル・グループよりも大きい。そのため、最終利益は前期比5.0%増の4,710億2,000万円にとどまったが、前期割れは回避している。
三井住友フィナンシャルグループ:最終損益は27.1%%減
最後に、三井住友フィナンシャルグループの決算概要を見てみよう。
<2021年3月期の決算概要>
項目 | 2021年3月期 | 前期比 |
---|---|---|
経常収益 | 3兆9,023億700万円 | ▲15.0% |
経常利益 | 7,110億1,800万円 | ▲23.7% |
最終利益 | 5,128億1,200万円 | ▲27.1% |
経常利益の下げ幅は他の2行よりも大きく、最終利益は前期比27.1%減の5,128億1,200万円と、3行の中で唯一前期を割った。
唯一前期割れしたメガバンクは三井住友フィナンシャルグループ
最終損益で前期割れした唯一のメガバンクは、三井住友フィナンシャルグループだった。
三井住友フィナンシャルグループは、コロナによるマイナスの影響を強く受けた。貸倒引当金を多く計上したことによって、利益が大きく圧迫されたのだ。
他の2行は、証券業務や投資信託の販売による手数料収入の増加で利益を増やし、最終利益の前期割れを回避した。三井住友フィナンシャルグループも証券業務などは堅調に推移したが、貸倒引当金の計上による利益圧迫をカバーしきれなかった。
今期のメガバンクの業績はどうなる?
ここまで読めば、貸倒引当金が銀行の業績に与える影響の大きさがわかっていただけただろう。
貸倒引当金は企業の倒産に備えるための費用だが、コロナが終息し国内経済が回復に向かえば、おのずと規模は小さくなる。よって、前期は最終利益が前期を割った三井住友フィナンシャルグループも、今期は好決算が期待できる。
今後は、各メガバンクの四半期ごとの決算発表に注目したい。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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