各国機関、米国・WHOの追加調査方針支持
報告書の露見や「痕跡」の発見は、単なるきっかけに過ぎない。水面下では、常に疑惑と不信の影が見え隠れしていた。
WHOの現地調査報告書を賞賛する中国とは裏腹に、米国を含む一部の国の政府は「データやサンプルへのアクセスが十分ではない」と懸念を示していた。実際、武漢研究所が行っていた、コウモリのコロナウイルスを使った広範な研究に関する生データや実験記録は未だに公開されておらず、不透明な部分が多々残されている。
当局者の証言によると、英国を筆頭とする西欧州の情報機関および安全保障機関は、米国の追加調査方針を全面的に支持する考えだ。カナダもこれに賛同する意向を示している。一方、インドは「WHOによる包括的な調査に対する各国の要請」を支持する声明を発表した。
再燃の影響は民間にも及んでいる。Facebookは「コロナウイルスは人工的に作られた」と主張する投稿をプラットフォームから削除していたが、今後は削除しない方針を明らかにした。Twitterなど他のSNSがこれに続けば、たちまち武漢が再び注目を浴びるだろう。
中国は「米国の陰謀」と反発
面白くないのは中国だ。すっかり鎮静したと思い込んでいた「疑惑」が再び浮上している現状に、憤慨を露わにしている。
中国外務省の趙立堅報道官は「(米国は)事実や真実を尊重しておらず、科学に基づいた起源の研究には一切関心がない」「(米国の)目的はパンデミックを利用して(中国に)汚名を着せ、政治的操作を行い、非難を転化することだ。(このような行為は)科学への冒涜であると同時に人々の生活に対しても無責任であり、ウイルスと戦うための協調した努力に逆効果である」と厳しく非難した。
また、在米中国大使館は「(中国に対する)中傷キャンペーンと非難の転化が再燃している」との声明を発表した。
狭まる中国への包囲網
パンデミックの再発防止には、ウイルス起源の特定が重要なカギを握っている。そのためには、透明性の高いデータや情報を入手し、あらゆる可能性を検証する必要がある。しかし、解明に向けた努力も、中国の全面的な協力なくしては水の泡となるかもしれない。
世界各国が透明性の高い情報開示を求め動き出した今、中国への包囲網はますます狭くなっていくものと予想される。コロナの起源特定、ウイグル族や香港を巡る人権問題、台湾問題など、中国と世界の関係はかつてない規模の圧力にさらされている。果たして中国は世界を相手に、強硬な姿勢を貫き通すことができるのだろうか。
文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)