ジニ係数の計算方法と警戒ライン

ローレンツ曲線と45度線で囲まれる部分をA、縦軸・横軸・ローレンツ曲線で囲まれる部分をBとすると、ジニ係数は以下の式で計算できる。

ジニ係数=A÷(A+B)

ジニ係数
(引用:総務省統計局「ローレンツ曲線」)

一般的に、ジニ係数の理想値は0.2~0.3であり、0.4を超えると警戒ラインといわれている。

厚生労働省の資料(※1)によると、2021年における日本の再配分所得ジニ係数は0.381である。一方で、社会混乱を引き起こすテロやデモなどが見られるアフリカの国々では、0.600を超えることもある(※2)。

(※1)参考:厚生労働省「令和3年所得再分配調査」の結果を公表します
(※2)参考:経済産業省「アフリカ

なお、ジニ係数が低いほど平等な所得であることを意味するが、人為的な政策等がない限り0.1を割り込む可能性は低い。

日本のジニ係数はどれくらい? 世界の実情と比較

日本と世界のジニ係数を比べると、どのような違いがあるだろうか。一般的に、日本は治安が良い国といわれるが、実は完全平等に近い社会とはいえない。

ここからは政府などの資料を参考に、世界各国のジニ係数を紹介する。

日本は再配分前の格差が拡大傾向

日本の当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数は、以下のように推移している。

ジニ係数

1990年代から2000年代にかけて、日本の再配分所得ジニ係数はやや上昇した。その後は横ばいの状態が続き、2017年までは0.37台を推移していたが、2021年には0.38を再び超えている。

一方で、当初所得ジニ係数については増加傾向が長らく続いている。つまり、所得格差を是正する政策は機能しているが、所得再配分前の格差は拡大傾向にあるといえるだろう。

米英よりは低いものの、主要国全体では日本のジニ係数はやや高め

次に、世界の主要国におけるジニ係数(2021年)を紹介する。

ジニ係数

前述の日本のデータとは計算方法が異なるが、2021年の国別ランキングは上記の通りである。米国やイギリスに比べると日本のジニ係数は低いが、世界全体で見ると所得格差が小さい国とはいえない。

一方で、社会保障が充実している北欧には、0.30を割り込んでいる国が多い。国民の平均所得や社会構造に変化が生じないと、この差を埋めることは難しいと考えられる。

所得再分配の重要性

上記のデータに関しては、「所得再分配の重要性」も押さえておきたい。日本のジニ係数を見ると分かるように、当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数には大きな差がある。

つまり、日本は税金や社会保険などによって所得を再分配することで、国民の所得格差を是正しているのだ。世界の主要国も必要に応じて所得を再分配しており、例えば社会保険などが充実している北欧はジニ係数が低い傾向にある。