日本の所得格差はなぜ広がる? 主な要因と改善方法

日本の再分配所得ジニ係数は比較的安定しているものの、当初所得ジニ係数は1980年代から急速に上昇している。このような所得格差と真剣に向き合うのであれば、格差を生む「要因」を理解しておかなくてはならない。

ここからは、日本の所得格差が広がる主な要因と改善方法について解説する。

【要因1】非正規雇用者の増加

非正規雇用者の増加は、大きな所得格差を生む要因となる。正規雇用者と比べると、非正規雇用者は全体的に所得が低く、社会保障をはじめとした待遇面も充実していないためだ。

厚生労働省の資料(※)によると、日本の非正規雇用者は1980年代から急激に増えており、2016年には2,000万人を超えた。その後はほぼ横ばいの状態が続いており、2022年には2,101万人となっている。

(※)参考:厚生労働省「「非正規雇用」の現状と課題

この問題を解決するには、各企業が積極的に正社員への転換をしたり、非正規雇用者の待遇を改善したりする必要がある。しかし、各企業にもさまざまな経営課題があるため、この問題を根本から解決することは難しいだろう。

【要因2】税金をはじめとした社会保障の逆進性

日本は所得再分配によって格差を是正しているが、税金や社会保障のなかには逆進性の一途をたどっているものも存在する。例えば、所得税は1970年代から一貫して累進緩和が進んでおり、少しずつではあるが低所得者の負担が増えてきている。

このような制度の逆進性が止まらない限り、国内の所得格差を根本的に解決することは難しい。税金や社会保障の逆進性は、高収入とは言えない経営者にとって深刻な問題になり得る。

資産を守りたい場合は、所得控除などの税制優遇制度を活用する必要があるだろう。

【要因3】製造業の海外移転

意外に感じるかもしれないが、実は製造業の海外移転も格差拡大につながっている。製造業の会社が海外移転をすると、主に地方を中心として生産性の低い非製造業への依存が高まり、地方民の所得が下がりやすくなるためだ。

例えば、2016年度のデータを参照にすると、東京都と九州各県の県民所得は年収にして200~250万円ほどの開きがある。この問題を解決するには、地方が大企業を誘致したり、企業側が地域活性化を目指して地方移転したりなどの動きが必要だ。

【要因4】雇用環境の低水準化

世界の主要国と比べると、日本の雇用セーフティネットは充実しているとは言えない。特に、国の予算に対する「積極的労働市場政策費(※職業訓練などに関わる費用)」は低比率であり、実際に失業したまま困り果てている労働者も多く存在している。

一方で、ジニ係数が低いデンマークなどは、多くの積極的労働市場政策費をねん出している。雇用の平等性が高い国を参考にしながら、官民一体となって施策を推し進める必要があるだろう。

【要因5】都市と地方の格差

以下の表は、内閣府の「国民経済計算(GDP統計)」を基に算出した県民所得のデータ(2015年版)である。

ジニ係数

上記の通り、東京都と沖縄県では1人あたりの所得金額に200万円以上の差が生じている。ほかの都道府県についても、企業・人口が集まりやすい地域と集まりにくい地域とでは、県民所得に差があることが分かる。

ふるさと納税のように地方分権を推進する政策もあるが、都市と地方の格差は決して小さくない。単に税金を分配するだけではなく、地方に移住したくなるような街づくりが必要だ。