世界各国が環境問題の重要課題であるプラスチックごみに取り組む中、日本も「2030年までにプラスチックの使用を25%削減する」という目標を掲げています。ところが日本のプラスチック廃棄量は世界5位と、目標達成には程遠い状況です。

日本が現状を打破するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。欧米を中心に普及が進む最新のサステナブル・パッケージ(Sustainable Package/持続可能な包装・容器)に、そのヒントが隠されているかもしれません。

日本のプラスチック汚染度は世界5位

地球に優しい「サスイティナブル・パッケージ」最新動向 ゴミ大国・日本が学べること
(画像=nito/stock.adobe.com)

国際統計サイト「World Population Review」の2021年のデータによると、日本では年間約 7.99 トンのプラスチック廃棄物と 14.3万トン以上のプラスチックごみが発生しています。プラスチック循環利用協会の2017年のデータによると、一般家庭のプラスチックごみで最も多いのは包装や容器類です。これらの86%がリサイクルされていますが、残りはそのまま焼却されたり、埋められたりしています。

リサイクルの方法は主に3つ。廃棄物を化学処理で原料に戻し、化学原料などとして再利用するケミカルリサイクル、再資源化・再生利用を目的とするマテリアルリサイクル、焼却の際に発生する熱を発電に回すサーマルリサイクル(熱回収)があります。

86%というリサイクル率は高い数値に見えますが、実は58%がサーマルリサイクル(熱回収)で、マテリアルリサイクルは29%、ケミカルリサイクルは3%です。サーマルリサイクルはゴミをエネルギーに変換する点で有益ですが、焼却処理を行うため、排気ガスや発がん性のあるダイオキシンの発生を懸念する声もあり、100%カーボンニュートラルではありません。

海外で普及が加速する「サステナブル・パッケージ」とは?

廃棄物を適切にリサイクルすれば、焼却に比べて温室効果ガスの排出量を削減できますが、廃棄物の量自体を減らすことができれば、より効果的に環境保全に貢献できるでしょう。

このような現状を踏まえ、欧米諸国ではリサイクルとともにリデュース(削減)の取り組みが加速しています。欧州では、2021年 から一部の使い捨てプラスチック容器の使用が禁止され、ニューヨークなど一部の米都市では、使い捨て発泡スチロール容器の使用が禁止されました。

それに伴い、プラスチックや発泡スチロールの代替として、サステナブル・パッケージが急速に普及しています。サスイテナブル・パッケージは、環境への影響を最小限に抑えることを考慮して製造された包装・容器類で、微生物によって最終的に水や二酸化炭素に分解される「生分解性プラスチック」や、トウモロコシや海藻など再生可能なバイオマス資源を原料とする「バイオマスプラスチック」などがあります。

環境対策としての効果が期待される反面、例えば生分解性プラスチックは高温多湿の堆肥化環境を必要とし、製造過程や分解過程でメタンガスや二酸化炭素ガスを発生するものがあるなどの問題点も指摘されています。

注目のサステナブル・パッケージ3選

現在、このような課題をクリアするために、以下のような新しいサステナブル・パッケージの採用が進んでいます。

1 100%再生可能な紙パック入りミネラルウォーター

店舗や自動販売機などで、気軽に購入できるペットボトル入り飲料。価格も手頃なものが多く、容器を洗う必要もないため、日常的に利用している人も多いでしょう。このように「便利だから」という理由で使用されているペットボトルの数は、世界中で毎日1億本以上。しかし、再利用されるのはわずか25%です。

そこでペットボトルを少しでも減らすために、Drinks CubedやNOBL Thirstといった英スタートアップが、100%再生可能な紙パックに入ったミネラルウォーターの販売を開始しました。通常のプラスチックボトルと比べてCO2を最大41%削減できるため、環境に優しい紙パックとして注目されています。

2 マッシュルーム菌糸体から作る代替プラスチック

プラスチックや発砲スチロール、プラスター(石膏)ボード、革、肉など、さまざまなものの代替となる技術として期待されているのが、米Ecovative Designによるマッシュルームを利用した新素材です。減菌処理後、粉砕した農業廃棄物(もみ殻や綿くず)にマッシュルーム菌糸体(糸状菌の栄養体の集合体)を付着し生育させることで、廃棄物同士が結びついてプラスチックのような素材になります。

この新素材が優れているのは、自宅で100% 堆肥化できることです。有毒性もないため、安全に自然へ戻すことができます。

3 食べられるバイオマスプラスチック

「ゴミをまったく出さない」というコンセプトに基づいて、ブラジルのルイスデクエイロス農業大学の科学者チームが開発した「食べられるバイオマスプラスチック」。これはキャッサバ(イモノキ属の熱帯低木)澱粉の分子特性をオゾンガスで変化させることにより、特殊な生分解性プラスチックに加工したもので、食品包装や買い物袋、使い捨てコップなどに利用できます。中身だけでなく容器や袋も食べられるため、ゴミの量を大幅に減らせると期待されています。

日本がゴミを減らすためにできること

繰り返しになりますが、ゴミ問題を改善する上で最も重要なのは、ゴミを出さない努力をすることです。

日本のゴミが多い理由の一つに、過剰包装があります。丁寧な包装には日本人ならではの衛生観念や繊細さ、価値観などが反映されているのかもしれませんが、地球や生物への長期的な影響を考えると、これまでのやり方を見直す必要があるでしょう。

「簡易包装は味気ない」「リサイクル素材は華やかさに欠ける」といった声もありますが、近年はグッチやボッテガ・ヴェネタ、バーバリーなどのラグジュアリーブランドも、サステナブル・パッケージへの移行を図っています。簡易包装やリサイクル素材でも、工夫次第で魅力的なパッケージを開発できることが証明されているのです。

サステナブル・パッケージは、日本がプラスチックの削減に成功する上で重要な役割を果たすキーアイテムになるかもしれません。また、サステナブルであることが企業の価値をも決めると言われている今、サステナブル・パッケージは今後世界で伸びゆくビジネスとしても注目です。未来の投資対象となる企業をWealth Roadとともにリサーチしていきましょう。

※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road