■景気減速のワケ

では、正規労働者の求人が増加しているはずの経済が、実際には減速局面に入っている、というのはどういうわけなのだろうか?

ここでは、内閣府が毎月行っている「景気ウォッチャー」から抜粋してみたい。10月8日に公表されたものだ。「9月の現状判断DIは、前月に対し横ばいの47.4となった。 家計動向関連DIは、消費税率引上げ後の駆込み需要の反動減が幅広い分野で和らいだこと等から上昇した。 企業動向関連DIは、製造業が弱含んだことから低下した。 雇用関連DIは、一部で求人の増勢に一服感がみられたこと等から低下した。 9月の先行き判断DIは、前月比1.7ポイント低下の48.7となり、4か月連続で低下した。 先行き判断DIについては、引き続き消費税率引上げ後の駆込み需要の反動が和らぐことへの期待等がみられるものの、エネルギー価格等の上昇への懸念等から、家計動向部門、企業動向部門及び雇用部門で低下した。 以上のことから、今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、『景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある。ただし、先行きについては、エネルギー価格等の上昇への懸念等がみられる』とまとめられる」

DIは様々な業種の現場の声を反映させたものだが、ここから見えるものは原油高騰によるガソリン料金や電気料金の上昇、これを原因とする生産コストの上昇がじわじわと広がっているということだ。例えば、平成13年11月のガソリン価格(実売)全国平均値は148.8円/ℓ。14年7月には162.4円/ℓに高騰、9月には157円/ℓに下がったとはいうものの、1年間に15円もの上下を繰り返している。


■まとめ:景気減速の増税への影響は?

最後に、内閣参与の本田悦郎静岡県立大学教授と黒田日銀総裁の租税政策の違いに触れながら、景気減速の増税への影響を見ておこう。10月7日のTHE WALL STREET JOURNALによれば、本田氏は1年半の増税先伸ばしを主張している。他方、黒田日銀総裁は先延ばしに否定的である。もっとも、両者とも、円が対ドルで下落すれば国民の生活費が上昇するため経済成長が妨げられる、とは考えていないようだ。つまり、増税路線は変更なし、ということだろう。

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