「1月効果」や「1月相場が強いとその年の株価は上昇する」など、年初である1月に関するアノマリーがある。この記事では、こうしたアノマリーが本当に有効なのかを、日経平均、マザーズ、NYダウなど、長期の指数をさかのぼって検証してみたい。
「1月効果」、「1月の株価が強いとその年の株価は強い」とは ?
なぜだか理由がはっきりとはしないが、季節や月など、一定の規則に応じて起こることが多い経験則をアノマリーという。1月に関するアノマリーには「1月効果」、「1月の株価が強いとその年の株価は強い」などがある。
「1月効果」は、機関投資家などが年末年始のリスクオフで絞ったポジションを、新年のスタートで改めて買いから入る「新年効果」が一つの原因だと言われている。特に小型株に「1月効果」が強いという。
また、12月には個人投資家などが保有株式の損切りをすることが多い。予定納税や源泉徴収で納めた税金の還付を狙った節税対策を行い、年初にはその買い戻しを入れるからだともいわれている。
「1月の株価が強いとその年の株価は強い」は、1月の株価が高いとその四半期や年間の株価が上がる傾向が強いというアノマリーである。
「1月効果」を2000年以降で検証
日経平均の2000年以降の1月の騰落率が (表1) だ。1月に上昇したのが12回、下落したのが10回。上がる確率は55%で、確かに1月は上がっている年の方が多い。しかし、同じ期間での年間騰落率が上昇14回、下落8回なので、1月が「上げの特異月」とまではいえないようだ。
(表1)
むしろ1月は、リーマンショック時の2008年の11.2%安、2009年の9.8%安、アルゼンチンペソが急落した2014年の8.5%安、米国の年末利上げを懸念した2016年の8.0%安など、急落が多い。
おそらく、機関投資家の新年効果はあるのだろう。しかし、リスクオフ時には逆に年初からの損失の拡大を防ぐため、大きくポジションを閉じる逆の新年効果を出すことがあるからだと考えられる。
QUICK Money Worldのマーケットカレンダーで特異月・特異日を調べると、データの全期間 (1976年~) においては、1月に上がる確率は62%だ。12月の69%、11月の67%、4月の67%に次ぐ確率で、上げの特異月である。
ところが、期間を平成バブル崩壊以降 (1990年~) にすると、1月の上げ確率は53%に低下する。11月の68%、12月の65%、4月の61%のトップ3は変わらない。期間をリーマンショック以降 (2008年~) にすると、1月の上げ確率は50%に低下するが、11月の77%、12月の77%、4月の69%と上げの上位は変わらない。
つまり、過去には1月効果がある程度見られたが、最近はその傾向がなくなってきているといえるだろう。
「1月の株価が強いとその年の株価は強い」を検証
日経平均の2000年以降の1月の騰落率 (表1) で、年間の騰落率との相関を調べた。騰落率のプラスマイナスの方向性が1月と年間で一致するのは、21年において9回で確率は43%である。1月の方向性が年間の相場を示唆するとはいえないようだ。
1月が高かったときに絞ると、年間で上げたのが6回、下げたのが5回。1月が高ければ年間でも高いことの方が多いが、特別に相関関係が高いわけでもなさそうだ。
小型株の代表としてマザーズの「1月効果」は ?
「1月効果」が目立つのは小型株だという。小型株指数の代表として東証マザーズ指数、さらに米国指数の代表としてNYダウでも「1月効果」を確認してみたい。
マザーズ指数の算定が始まったのは2003年9月なので、2004年以降を見てみると (表2) 、1月が高かったのが10回、安かったのは8回だ。同じ期間でみると日経平均も10勝8敗なので、勝率は同じである。
ただマザーズは、平均2.8%高で2桁の上げが4回もある。日経は1.1%安で2桁高は一度もない。だからこそ、年初は小型株が高いという印象があるのではないだろうか。マザーズの1月高で年間のパフォーマンスが高くなることは、13勝8敗の62%となっている。1月の小型株高が年間高につながる可能性は、日経平均よりは高いといえそうだ。
(表2)
NYダウの「1月効果」は ?
NYダウの2000年以降 (表3) の1月は、10勝12敗で勝率は45%と低い。年間の勝率が14勝7敗の76%なので、むしろ1月は冴えない月だといえる。ただ、1月の高安と年間の高安の相関は13勝8敗と、比較的高い相関性がある。
(表3)
2021年の1月相場は上昇、今年はどうなる ?
21年の1月の株価指数は、日経平均が0.8%高、マザーズが2.8%高と、ともに高く始まった。NYダウは2.0%のマイナススタートだった。アノマリーの検証から考えると、年間でのマザーズ高、年間でのNYダウ安の可能性が高い。
ただ、今回検証したようにアノマリーには、現在の市場ではあまり効果のないものもある。今年はどうなるかに注目したい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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