『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』より一部抜粋

(本記事は、山中 伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』=同文舘出版、2021年7月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

iDeCo導入時の加入者(従業員)からの質問

会社も従業員もトクをする! 中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方
(画像=kyo/stock.adobe.com)

新規でiDeCoに加入する場合、手続きにどの程度時間がかかりますか?

会社が掛金を一部支給してくれるのであれば、iDeCoを始めたいという従業員は少なくないはずです。その場合、制度導入を機にiDeCoに加入したい人が増えるでしょう。

iDeCo加入については、従業員本人の手続きとなります。まずは運営管理機関を決め、口座開設のための必要書類を取り寄せ、書類を作成して提出します。この手続きが完了するまで2カ月程度はかかりますから、十分な時間を確保したうえで社内の説明会などを設定してください。

経営者や役員もiDeCo+の対象として掛金を拠出できますか?

厚生年金被保険者で60歳未満の場合は、経営者や役員であってもiDeCo+が可能です(2022年からは65歳まで加入可能になります)。

経営者の場合、小規模企業共済を利用されている方も多いかと思いますが、iDeCo+は小規模企業共済との併用が可能です

小規模企業共済は月7万円までの掛金が全額所得控除となり、税制優遇を用いて有利に将来に備えることができます。

60歳定年制ですが、再雇用になっても継続できますか?

2022年以降はiDeCoの加入資格が65歳まで拡大しますので、60歳以降も雇用形態が変わらず働き続ける場合は、引き続きiDeCo+の対象とするのが合理的でしょう。もし雇用形態が変わるのであれば、扱いをどうするか制度導入時に方針を決めておくとスムーズです。

仮に60歳以降対象から外れる場合、本人が希望すれば、iDeCoはそのまま65歳まで加入を継続できます。

一方、加入を継続(掛金を拠出する)していると、給付が受けられない(資金の引き出しができない)ので、人によっては必ずしも加入の継続を希望しないかもしれません。その場合は、本人が事業主掛金の拠出を希望しなければ、iDeCo+から外れることもできます。

現在、iDeCoの掛金上限まで拠出していますが、どうしたらいいですか?

iDeCo+の掛金は、事業主拠出と従業員拠出を合計して2万3,000円が上限です。仮に会社が2万円拠出をすれば、従業員本人が拠出できる額は3,000円となります。

今までiDeCoをしていた社員の場合、もしかしたら年末の還付金が楽しみだったという方がいるかもしれませんが、iDeCo+導入後事業主掛金分は個人掛金を減らさなければならず、結果的に所得控除の恩恵が少なくなります。

しかし、どなたにとっても会社から掛金を出してくれるのであれば、所得控除の税制メリットよりも実利が取れるわけですから、個人掛金をその分減額するよう伝えればよいかと思います。

自動移換された資金があります。iDeCoに移すことはできますか?

前職で加入していた企業型確定拠出年金の資産はそのままにしていると、国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。その場合でも、資金は自分のiDeCoの口座に移動させることができます

その場合、まず従業員がiDeCoの口座を開設し、その際自動移換された資産がある旨を運営管理機関に申出をします。必要書類を運営機関に提出すれば、資金を取り戻し、自分のiDeCo口座に合算することができます。

会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方
山中 伸枝(やまなかのぶえ)氏
心とお財布を幸せにする専門家ファイナンシャルプランナー(CFP®)株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役FP相談ねっと代表 一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。執筆:金融庁サイト有識者コラム連載、50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話(東洋経済新報社)、ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他

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(提供:Wealth Road