本記事は、和島英樹氏の著書『1万円からはじめる 勝ち組銘柄投資』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています

強い株は、急落しても戻る

強い株
(画像=taa/PIXTA)

「株価の下落は怖い」と思う方は少なくないでしょう。

しかし、中長期投資では「強い株は、急落しても戻る」という考え方をぜひ知っておいてください。

1985年に証券会社に入って営業を担当し、その後、株式新聞社(現モーニングスター)記者、ラジオNIKKEI記者として多くの投資家や上場企業などを取材してきました。

外国人や機関投資家の運用手法がさまざまであるように、個人投資家の投資スタンスも千差万別です。目先の株価に一喜一憂する人もいれば、日経平均など関係ないと悠然と構える資産家もいます。上場企業でも、コツコツ進む企業もあれば、ひと山あてよう的な企業もあります。超一流と言われるトップ企業であっても何年かに一度、大幅な赤字を出すところもあります。

いずれが良いとも悪いとも思えません。しかし、中長期で投資するには、基本を忘れてはなりません。

現在、株式市場では日経平均株価が30年ぶりに3万円台を回復するなど、先高期待が広がっています。株価は上昇と下落を繰り返しながら、経済の成長とともに右肩上がりになるのが基本です。「はじめに」で触れたように、指数の採用で銘柄の新陳代謝が進みやすい日経500種平均は2020年9月に史上最高値を更新しています。好調な業績を上げている企業はより高く買われていきます。

ただし、個別企業では時代の流れについていけず、業績や株価が低迷したり、あるいは伸び悩んだりする企業も少なくありません。一方、ヒット商品を出し、一過性の株価急騰になる企業もあります。相場全般が上昇すれば、「出遅れ物色」といって業績が芳しくない企業も底上げされる傾向もあります

株式市場では、一定の期間で株価の大幅調整がやってきます。経済の循環による景気の波で企業業績が変動するのが主因です、ただし、金融危機、戦争などの地政学リスクなど、突発的な事象では「暴落」ということも考えられます。古くは1929年の世界恐慌や、1990年初からの日本経済のバブル崩壊、2000年の米ITバブル崩壊、2008年の金融破綻のリーマンショックなどがあります。

暴落局面ではほぼすべての株価が大幅に下がり、傷がいえるのに時間がかかります。日経平均という物差しでは1989年末に3万8915円を付け、2008年のリーマンショック時の7054円まで約20年かけて82%もの下げとなっています。恐ろしいことです。

しかし、個別の銘柄を見れば、そんなことはありません。場合によっては安値から数年後に上場来高値をつけている銘柄もあるのです

投資家は、株価の暴落に遭うと世界経済全部がダメになると思いがちです。確かに、リーマンショッククラスに遭遇すると、多くの国の経済が停滞する要因にはなるかもしれません。しかし、**世界の人々は毎日食事をしますし、仕事をしたり、レジャーに出かけるという日常は大きく変わりません。発展途上の国や地域も同じです。一部の人を除き、基本的な営みに変化はないのです。

今、まさに世界中がコロナ禍におかされていて、さまざまな制限があります。それでも工夫を凝らして生活しています。その裏には製品を供給したり、サービスを提供する企業があります。ビジネスもまた、常に動いているのです。株価は下げるときには一斉に下げますが、戻るときは強い企業の株価から上昇していきます。

そう、下げたときこそ、基本に帰るべきなのです。世界経済が変調をきたしても、ニーズがある商品やサービスを提供する企業は成長できます。人口が減少する日本でも、消費者の嗜好をくみ取る企業は最高益を更新し続けています。仮にこうした企業が株価暴落で急落すれば、それは中長期投資家には天与の買い場かもしれません。株価の暴落は確かに厳しいですが、その場面をチャンスととらえられるようになりたいものです。

私がこれまで見てきた企業で、それに該当しそうな企業をピックアップしました。本書でたびたび登場する企業も含まれます。

ずっと持ち続けたい優良銘柄の例

●ユニ・チャーム(8113)
紙おむつや生理用品が主力。普及していない新興国に乗り込み市場を開拓。先進国では高付加価値品で稼ぐ。

●エムスリー(2413)
医療情報サイトを通じ医師に新薬情報などを提供。日本の医師を囲い込み。ビジネスモデルを海外にも移植。世界600万人の医師ネットワーク構築。

●ジンズホールディングス(3046)
メガネチェーン「JINS」運営。世界でも珍しいメガネのSPA(製造小売り)を展開。海外にも徐々に進出。

●ダイキン工業(6367)
エアコンの大手。高性能なインバーター方式に強み。M&Aを駆使し、製品を世界に展開。

●キッコーマン(2801)
醤油最大手。北米など海外を相次いで開拓。日本の調味料を現地で展開し、浸透させる。売上高の過半は海外。

●日本光電(6849)
医療用電子機器の専門メーカー。生体情報モニターに強み。海外進出の際にはメンテナンス部門も同時展開。現地の信頼を得やすい。

●ニトリホールディングス(9843)
家具・インテリアのSPA。22年2月期で35年連続の増収増益へ。「お、ねだん以上。」の戦略で消費者ニーズをとらえ続ける。

●テルモ(4543)
医療機器の大手。カテーテルなど心臓血管分野に強い。日本初の再生医療製品も。医薬品の製造受託など幅広く展開し成長継続。

●日本電産(6594)
HDD用精密小型モーターを祖業に、産業用など中大型へシフト。現在はEV駆動用モーターに傾注。M&Aを絡めて成長。

●リンナイ(5947)
ガス器具トップ。日本の高性能なガス給湯器などを海外に展開。厨房機器でも優位性。コロナ禍で日本ではガス衣類乾燥機なども拡大。

1万円からはじめる 勝ち組銘柄投資
和島英樹(わじま・ひでき)
経済ジャーナリスト。1985年、日本勧業角丸証券(現みずほ証券)に入社。1988年、株式新聞社(現モーニングスター)に入社。企業へのトップインタビューやマーケット取材などを担当。2000年にラジオNIKKEIに入社。東証記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。35年間でのべ2000社を取材。2020年6月に独立。現在のレギュラー番組は「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI)、「攻めのIR」(日経CNBC)、「ストックボイス」(MXテレビ)、「和島英樹のウィークエンド株!」(有料コンテンツ)。会社四季報オンライン(東洋経済新報社)、週刊エコノミスト(毎日新聞出版)、日経マネー(日経BP)、株探などへの寄稿多数。国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)、日本テクニカルアナリスト協会評議委員としても活躍している。

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