株式市場が米国の長期金利の上昇に対して乱高下するなど、敏感な反応を示している。過去において、米長期債利回りの上昇が株価下落のきっかけとなることがあったからだ。ただ、金利上昇は景気や株式相場のサイクルと連動するものであり、一概に悪いわけではない。

この記事では、良い金利上昇と悪い金利上昇の違いについて解説していこう。

金利上昇の良し悪しとは

金利上昇に良し悪しがある !? 米ドル保有者への影響は ?
(画像=m.mphoto / stock.adobe.com)

コロナ禍で世界の主要中央銀行は、企業の資金繰り悪化などを防ぐために過去最大規模の金融緩和を行った。また、主要国の政府は、景気の大幅後退を防ぐために過去最大規模の景気対策を行った。その結果、世界景気は持ち直し、株価はコロナ禍以前のレベルに回復した。

経済が上向けば、原油や資源などを中心に物価が上がり、長期金利も上昇するのが自然の流れである。経済実態の回復を伴い、緩やかなインフレ率のもと、緩やかに金利上昇するのが「良い金利上昇」だ。株式市場にネガティブな影響を与えることは少ない。

一方、急激なインフレや巨額の財政支出に伴う金利上昇は「悪い金利上昇」だ。コロナ後に景気がV字回復していることで、半導体不足やリベンジ消費などによりインフレ率が高めに推移している。また、巨額な財投出動の財源として債券の増発も避けられそうもない。「悪い金利上昇」だと、金融市場がリスクオフに転じる可能性がある。

過去の「良い金利上昇」「悪い金利上昇」の例

●良い金利上昇

過去の「良い金利上昇」期間の例としては、16年~18年の米国相場が挙げられる。この期間をエコノミストなどは「ゴルディロックス (適温) 相場」と呼んだ。英国の童話「3匹のくま」で登場する主人公の少女「ゴルディロックス」が、熱すぎず冷たすぎないちょうどいい温度のスープを作ったことに由来し、景気が緩やかに長期で上昇、金利も景気の上昇とあわせて緩やかに上昇、その間株式市場も大きなブレもなく長期的に上げる状態のことだ。

米長期債利回りの指標である10年債利回りは16年7月の1.3%台を底に18年10月の3.2%でピークをつけるまでほぼ一貫して上げ続けた。米連邦準備制度理事会 (FRB) は、政策金利のFFレートを15年11月に0.25%から0.5%に上げたのを皮切りに18年12月の2.5%まで0.25%ずつ実に9回も利上げした。しかし、米国の実質GDP成長率は、16年1.7%増、17年2.3%増、18年3%増と緩やかに加速した。インフレ率は、16年1.3%、17年2.1%、18年2.4%で推移した。景気の成長と相応のインフレ率と金利上昇だったのだ。

良い金利上昇を背景に株式市場は上昇し、NYダウは16年に13%高、17年に25%高、そして18年は▲6%安となるが、18年のピークとなる18年10月時点までは9%上げていた。特に17年は月次ベースで11ヶ月がプラス、17年4月から18年1月まで10ヶ月連続で上昇し、「ゴルディロックス相場」の象徴的動きだった。

●悪い金利上昇

悪い金利上昇の典型例とされるのが13年の米国での金利上昇期だ。テーパー・タントラム (テーパリング (量的金融緩和の縮小) による金融市場のかんしゃく (混乱)) として、株式市場などが急落した。今でも市況関係者にとってはトラウマとなっており、金利上昇を気にする人が多い。

10年債利回りは12年7月の1.3%台を底に13年12月の3.0%台まで上昇する。GDP成長率を大きく上回る金利の上昇で、米国の実質GDP成長率は12年の2.1%増から13年1.5%増と急減速する。景気の減速に合わせて、インフレ率も12年の2.1%から13年は1.5%に低下した。

その間、FRBはリーマン・ショック時の08年12月に過去最低の0.25%の政策金利に下げたあと、15年12月までは0.25%の金融緩和をつづけていたのにもかかわらず、市場の長期債利回りが上昇した。リーマン・ショック対策として、金融緩和、財投をすすめたことに対する財政面での不安が広まったためである。13年は年間を通じては景気刺激策を好感してNYダウは27%上げ、13年は8%上げるが、金利が急騰する局面で13年8月には月間で4%、14年1月には月間で5%下げる局面があった。

金利上昇の良し悪しを鑑みた投資判断を

株式市場が長期金利の動きに敏感になることが多いが、必ずしも金利上昇が全てダメというわけではない。現在の景気、金融政策、株価がどの位置にあるかを意識していれば、必要以上に金利上昇を警戒することもなく株式投資ができそうだ。

(提供:大和ネクスト銀行


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