本記事は、村松由美子の著書『話し方に自信がもてる声の磨き方』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「感動ヴォイス」の基本はバイブレーション**
「こんなによく通る声が出るようになるなんて……自分でもびっくりです!」
感動ヴォイスのレッスンを受けてくださった方からは、こんな感想をいただきます。
よく通るいい声のポイントは「響き」。
この響きが出せるようになると、たった1分でその場の空気をつかみ、聞き手の心を揺さぶることができるようになります。
欧米では政治家やエグゼクティブには、専門のヴォイストレーナーがついているほど「声」は重要視されています。なぜなら「声が武器になる」ことを知っているからです。
前述しましたが、声は空気の振動、バイブレーションです。
声が響くというのは、発声者の豊かな呼吸によって、空気が揺さぶられているということです。つまり、よく響く声とは、呼吸によって空気をよく震わせるための強いエネルギーがあるということ。
このエネルギーに圧されて、人は心を揺さぶられます。
逆に、弱々しい声から生み出される声のバイブレーションは小さく、聞く人はエネルギーを感じません。そのせいで聞く人の胸に迫ってこず、感動が起きないのです。
ですから、聞く人の心を揺さぶるいい声になるためには、まずは大きなバイブレーションを起こせる声になることが大前提です。
私は、声は自己発電できるエンジンだと思っています。
感動ヴォイスが習慣化できれば、話をするたびに豊かな呼吸を行い、使うべき筋肉を使い、必要のない部分はリラックスさせて大きなバイブレーションを起こすことができる。まさにエンジンそのもの。
そのために、私のレッスンでは、まずは大きなバイブレーションが起きる「響く声」を出せるようになっていただきます。
全身に響かせるからバイブレーションが起こる
では、どうしたら声で大きなバイブレーションを起こせるようになるのでしょうか?
端的に言うと、あなたの体の使い方を「赤ちゃんの状態」に戻せばいいのです。
赤ちゃんのように心も体もリラックスすることで、おのずと響く声が出るようになります。そうすることで発した声が、声帯付近だけでなく全身に響くようになるのです。
たとえば、弦楽器を思い浮かべてみてください。弦の振動を楽器全体に響かせることで、遠くまで届く、深く美しい音色を出すことができますよね。ですが、ミュート(消音器)を使って弦の振動が楽器全体に伝わらないようにすると、音が出にくくなり、小さくなって遠くまで届かなくなります。
これと同じで、声のバイブレーションを起こすためには、全身を使って声を響かせる必要があるのです。
そもそも、声は声帯だけで出すわけではありません。
全身で出しています。
ごく簡単に説明すると、私たちは次の4段階で声を発しています。
①「腹筋」で「横隔膜」を動かすことで、「肺」を圧して息を吐く
②吐く息で「声帯」を振動させる
③声帯の振動が、「喉・口・鼻の空間」に響いて声になる
④声に「舌・唇・歯」などで変化を加えて言葉にする
「発声」というと、声帯や喉ばかりを気にする方が多いのですが、実は「 」内の器官はすべて使っています。
「はじめに」で、「声にはその日の体調も、精神状態も、すべて反映される」とお伝えしたのは、声がこれらの器官の状態を反映するからなのです。
さらに、発声に関係しているのは、ここに挙げた部位だけではありません。
たとえば、目の周りの表情筋も、発声の元になる呼吸と密接につながっています。
ちょっと実験してみましょう。あなたもやってみてください。
まず、吸って吐く、通常通りの呼吸をしながら、目をだんだん大きく見開いていきます。そして、ゆっくりと元に戻してください。
目を見開いたとき、戻したとき、それぞれ呼吸はどうなっていますか。吸っていますか?吐いていますか?
目を見開いたときは「吸う」、戻していくときは「吐く」になったはずです。その逆は難しくてなかなかできません。
これは、表情筋と肺の下にある横隔膜がつながっているからです。つまりは、表情を変えるだけで呼吸の深さも変わり、出る声がまったく違ってくるということです。
これらの器官をすべて柔軟に使えるようになることで、よく響く声、感動ヴォイスが出るようになります。
そのためには、赤ちゃんのように全身の筋肉をほどよくリラックスさせ、バイブレーションの源となる豊かな呼吸ができるように、姿勢を整える必要があります。
感動ヴォイスの基本ステップとなる「ヴォイササイズ」(声のエクササイズ)は、次の3段階です。
STEP1 筋肉をゆるませる
STEP2 姿勢を整える
STEP3 呼吸を整えて声を出す
これらができるようになると、感動ヴォイスがラクに出るようになります。
京都生まれ。大学在学中にテレビのレポーターとしてはじめて「伝える」仕事を経験。就職した企業では広報・IRとしてプレゼンテーションを実施。 その後、フリーアナウンサーに転身。テレビ・ラジオのニュースキャスターをベースに、パーソナリティ、レポーターなどを務める。ナレーション・CM ソングを担当したラジオCMが2年連続ACC広告賞受賞。2009年、桜美林大学大学院に入学し、身体心理学における声とメンタルの関係を研究。ヴォイササイズ(声のエクササイズ)で声が変化すると同時に、メンタルアップと印象アップの両方の効果が出ることを、世界ではじめて実証する。2011年、その研究結果を論文にまとめ、ヨーロッパと日本の健康心理学会で発表。2014年、一般社団法人感動ヴォイス協会を設立。
現在は、企業研修講師、セミナー講師として全国で活動し、主にヴォイス・プレゼンテーション・コミュニケーション・メンタルを軸にさまざまな分野 のセミナー・研修を行っている。これまでの総受講者数はのべ4万人におよび、受講者満足度も98%と高い評価を受けている。受講者や聞き手を惹きつけ、突き動かしていくための感動ヴォイスを起点にした、感動の空気・空間づくりができる感動ヴォイステラーを育成・支援している。
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