本記事は、村松由美子の著書『話し方に自信がもてる 声の磨き方』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
聞き手を惹きつける声の出し方
先日、コンサルティングの仕事をしている友人が、こんなことを言っていました。
「自分が話しているのに、相手がなんだか眠たそうにして……ついにウトウトしてきてさ。ほんと、話す気をなくしたよ」
確かに、目の前の人がウトウトしていたら、話す気をなくしますよね。
ですが、もしかしたら話し手が聞き手を眠くさせたのかもしれません。
この友人のように、
「自分が話すと眠そうにされる」
「つまらなそうな顔をされる」
という悩みを抱えている方、けっこう多いんです。
ちなみに私は、組織内の内部講師を養成する研修も実施しています。
最近は組織内でのさまざまな研修において、外部から講師を呼ぶのではなく、内部で講師ができる人を育てている企業が増えています。
この内部講師養成研修の受講者の方に、「受けたくない研修って、どんな研修ですか?」とおうかがいすると、一番にあがるのが「眠たくなる研修」です。
専門用語が多くて何を言っているかわからない、テーマに興味をもてない、聞いていてワクワクするような情報が盛り込まれていないなど、眠たくなる研修にはいろいろな原因があると思います。
この「聞いていて眠くなる原因」は、声の観点から見ると、「一本調子で抑揚がない」ことにあります。
とくに日本人は謙虚で恥ずかしがり屋が多いので、普段から話し方が淡々としていて、表情の変化も乏しい傾向にあります。
人前で話すとなると、そこに緊張感が加わるので、余計に声に抑揚がなくなって一本調子になっていきます。
ですが、聞き手は「変化」に反応します。
変化があると、「おっ」と興味を惹かれて身を乗り出してしまうのですが、変化がないと「反応しなくていいや……」と無意識のうちにスルーするようになります。
そうなると聞き手に悪気はなくても、どうしても集中力が続かなくなり、ウトウトしてしまうのです。
そもそも人間の集中力は45分程度しか持続しないといわれています。
では、それだけの間ずっと集中していられるのかというと、もちろんそんなことはありません。
45分もの間、一本調子で淡々と語られる話を集中して聞き続けられる方はまれです。
話に抑揚をつけるためには、「ポイントになるところ」を、
・大きな声で話す
・ゆっくりと話す
・繰り返す
・その文言の前と後に「間」を空ける
ことが大切です。
次の文章を、抑揚をつけて読んでみましょう。
響く声は、相手の心に届く。
自分の想いや感情まで、相手に伝えることができる。
響く声は、人の心を共鳴させる。
響く声で人とつながり、大きな幸せの輪をつくっていこう。
ポイント!
①「響く声」という単語を強調して読んでみましょう。
②自分の好きな言葉を強調して読んでみましょう。
※読むたびに強調する言葉を変えていくといい練習になります。
相手の興味を自分の話にしっかり惹きつけておきたいなら、話す前に原稿を作って、大きな声で話すところはどこか、間を空けるべきなのはどこかなど、前述した4つのポイントを練習してから本番に臨むといいでしょう。
声の抑揚で、どこがポイントなのかがわかりやすくなると、聞き手はメモをとりやすくなりますし、記憶にも定着しやすくなります。
ジェスチャーで声の表現力を一気にアップさせる
抑揚のなさを改善するために、もうひとつ効果的な方法があります。
それが、「身振り・手振りをおおげさに(大きく)つけること」。
つまり、ジェスチャーを使うことです。
身振り・手振りをおおげさにつけると、見た目が変化するだけでなく、「声」にも変化が起きます。
第3章で説明したとおり、声は声帯のみならず、横隔膜や腹筋、口腔や鼻腔など、全身を使って出すもの。なので、体を動かすと一本調子で話せなくなるのです。
これを体験してもらうために私が開催しているプレゼン講座では、淡々と話してしまう人に、「大きくジェスチャーをつけながら話していただく」という練習をしています。
すると、自分が強調したいポイントでは、自然にジェスチャーが大きくなります。
ジェスチャーが大きくなると、それにつれて胸を張るような体勢になり、肺が広がって空気がゆったり吸えるようになります。
すると、吐く息が増えて、自然とよく響く声が出るようになります。
声に強弱と抑揚がついて、話す内容が聞き手に伝わりやすくなるのです。
また、心身相関から体を動かすことで、固まっていた心や感情までが活発に動き出します。
「この商品は本当に素晴らしいんです!」という手振りをすると、実際にその感情が自分の中でグッと高まるのです。
こんなふうにジェスチャーをつけながら話すことで、シャイな日本人がかけがちな「自制のブレーキ」が自然に外れます。
素晴らしいものを本当に素晴らしいという熱意を込めて伝えられる。だから説得力があり、相手の心を揺さぶるプレゼンやスピーチができるようになり、信頼を得られるわけです。
世界のトップ企業のCEOは、みんなジャスチャーをつけて話していますよね。
これは、聴衆の目を自身に集めるためのパフォーマンスでもありますが、ジェスチャーの力を借りて話者の感情を届けるためのテクニックでもあるのです。
身振り・手振りと声はリンクしています。
ジェスチャーを使って、ぜひ「自制のブレーキ」を外して感情豊かに伝えてください。
京都生まれ。大学在学中にテレビのレポーターとしてはじめて「伝える」仕事を経験。就職した企業では広報・IRとしてプレゼンテーションを実施。 その後、フリーアナウンサーに転身。テレビ・ラジオのニュースキャスターをベースに、パーソナリティ、レポーターなどを務める。ナレーション・CM ソングを担当したラジオCMが2年連続ACC広告賞受賞。2009年、桜美林大学大学院に入学し、身体心理学における声とメンタルの関係を研究。ヴォイササイズ(声のエクササイズ)で声が変化すると同時に、メンタルアップと印象アップの両方の効果が出ることを、世界ではじめて実証する。2011年、その研究結果を論文にまとめ、ヨーロッパと日本の健康心理学会で発表。2014年、一般社団法人感動ヴォイス協会を設立。
現在は、企業研修講師、セミナー講師として全国で活動し、主にヴォイス・プレゼンテーション・コミュニケーション・メンタルを軸にさまざまな分野 のセミナー・研修を行っている。これまでの総受講者数はのべ4万人におよび、受講者満足度も98%と高い評価を受けている。受講者や聞き手を惹きつけ、突き動かしていくための感動ヴォイスを起点にした、感動の空気・空間づくりができる感動ヴォイステラーを育成・支援している。
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