従業員の解雇については労働基準法でルールが定められており、解雇の正当な理由が必要となる。経営者ならば、解雇した従業員から「解雇理由証明書」の提出を求められることもあるだろう。今回は、解雇理由証明書の交付時期や期限、従業員が解雇理由証明書を求める理由や作成するときの注意点などについて解説する。

目次

  1. 解雇理由証明書とは何か
    1. 解雇理由証明書の交付請求時は遅滞なく発行する
  2. 解雇理由証明書の交付時期
  3. 解雇理由証明書の期限
  4. 解雇理由証明書の書き方
    1. 客観的合理性のある理由とは
  5. 従業員が解雇理由証明書を求める理由2つ
    1. 1.解雇理由が知りたい
    2. 2.不当解雇として訴える予定である
  6. 解雇理由証明書を作成するときの注意点2つ
    1. 1.第三者から見られる前提で作成する
    2. 2.根拠になる就業規則の条文を明示する
    3. 3.不当解雇とみなされた場合のリスクをイメージしておく
  7. 労働問題に詳しい専門家に相談することも選択肢のひとつ
  8. 解雇理由証明書に関するQ&A
    1. Q.解雇理由証明書は何に使う?
    2. Q.解雇理由証明書のもらい方は?
    3. Q.解雇理由証明書の期日は?
解雇理由証明書とは?従業員から提出を求められたらどうする?
(画像=gunnar3000/stock.adobe.com)

解雇理由証明書とは何か

解雇理由証明書とは、会社が従業員を解雇した理由などについて記載した書面のことだ。一般的には、以下のような項目を記載するが、法的に定められた様式は存在しない。

・解雇する従業員の名前
・解雇を通知した日付
・解雇理由証明書の発行日
・事業主氏名又は名称
・使用者職氏名
・解雇理由

解雇理由証明書は、『解雇通知書(解雇予告通知書)」や『雇用保険の離職票」とは別に発行する書面である。なお、『解雇通知書』は、解雇日の30日前までに予告するように、「労働基準法第20条第1項」に定められている。

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

解雇理由証明書の交付請求時は遅滞なく発行する

解雇理由証明書は、従業員を解雇した際に必ずしも交付する必要はない。しかし、解雇された労働者から請求があれば、遅滞なく交付しなければならないことが、「労働基準法第22条第1項」に記載されている。

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

また、労働者から解雇予告をした後に、予告期間中に解雇理由証明書の請求があった場合も遅滞なく交付する必要があることが、「労働基準法第22条第2項」に記載されている。

② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

解雇理由証明書の交付を請求できるのは、正社員だけとは限らない。「労働基準法第9条」が適用されるため、契約社員やパート、アルバイト、試用期間中の従業員などから請求された場合でも、解雇理由証明書を交付しなければならない。

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

解雇理由証明書の交付を請求されたのにも関わらず発行しない場合、「労働基準法第120条第1項」に則って、「30万円以下の罰金」が課せられる可能性がある。解雇理由証明書は経営側から積極的に交付する義務はないが、解雇された従業員から交付を求められれば、原則として対応必須と覚えておこう。