解雇理由証明書の交付時期

解雇理由証明書は、従業員から交付の請求があれば、「労働基準法第22条第1項」に記載されているように遅滞なく交付しなければならない。

明確な日数は定められていないが、従業員の解雇が裁判になってしまった場合、解雇理由証明書の交付に応じなかったり、交付が大幅に遅れていたりしたら、非常に心証が悪い。解雇理由証明書の交付請求があれば、従業員にも発行日の目安を伝えた上で、速やかに対応したほうが良いだろう。

解雇理由証明書の期限

解雇理由証明書の請求権は、「労働基準法第115条第1項」によると、2年で時効となる。

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

したがって、従業員を解雇してから2年以上の期間が経過しているならば、解雇理由証明書の発行を求められても応じる必要はない。とはいえ、請求者との関係性や解雇理由、ステークホルダーへのレピュテーションリスクなどを勘案し、応じるか否かを判断しよう。

解雇理由証明書の書き方

解雇理由証明書を書く際には、解雇理由はできるだけ具体的事実を踏まえた上で、正確に記載しよう。もし、解雇理由証明書の交付後に解雇に関する裁判をすることになれば、解雇理由証明書に記載されている内容が大きな意味を持つ。解雇理由証明書に記載された解雇理由と別の理由を裁判で主張することは事実上難しいため、正確な記載が必要だ。

ただし解雇理由証明書に従業員が請求していない事項について記入することは、「労働基準法第22条第3項」で禁止されている。

③ 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

これは、もし解雇された従業員が解雇の事実についてのみ、使用者に証明書を請求した場合、解雇理由証明書には解雇の理由を記載してはならないことになる。経営者側は、解雇の事実のみを証明書に記載するだけだ。なおこれに引き続く第4項では、秘密の記号などのわかりにくい何らかの形であっても当該従業員が再就職するのを妨げるような事項を記載することも禁止している。

④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

解雇理由証明書に法的に定められた様式は存在しないが、公的機関がフォーマットをインターネット上に掲載している場合があるので、参考にするとよいだろう。

<参考フォーマット1:大阪労働局>
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/hourei_youshikishu/youshikishu/_120080.html

<参考フォーマット2:厚生労働省>
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/standard/relation/22.pdf

客観的合理性のある理由とは

解雇理由を記載する際には、解雇事由に客観的合理性があり、かつ社会通念上相当な理由でなければ不当解雇とみなされる可能性があるため注意が必要だ。客観的合理性のある理由は、例えば就業規則違反が考えられる。解雇理由証明書には、該当従業員のどのような行為が就業規則の何条何項に抵触したのかを記載するといいだろう。

このとき該当条文とともに問題行動となった事項(年月日および具体的行為)を記載する。就業規則がない場合は、あらかじめ解雇理由を例示した上で該当する理由を伝えるのが一般的だ。例えば就業能力や勤務成績を理由とする場合は、以下の内容が考えられる。

・解雇の前に従業員の適性に応じた配置をしたにもかかわらず能力不足だった
・会社側が研修や指導などの対応をしたにもかかわらず改善の見込みがない

多くの場合は、先に紹介した参考フォーマットのなかにある理由であろう。しかし具体的な会社の対応および問題行動となった事項(年月日および具体的行為)を記載するのが賢明だ。