本記事は、藤嶋由香さんの著書『一緒に飲みたくない客は断れ!』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています。
リモート飲み会は本当に人の心を癒せるか?
リモート会議、リモート授業、リモート合コン、リモートお見合い……。
コロナ感染防止のため、2020年はさまざまなものがリアルからリモートに置き換わりました。
その中で、苦肉の策として「リモート飲み会」も生まれました。
しかし、リモート飲み会を「楽しめる」と回答したのは、たったの3割だった、という調査結果があります。
最初は目新しく、面白そうだということで注目されました。
なにせ、距離に関係なく、地球の裏側に住んでいる人とも飲み会ができるわけです。
また、
「上司にお酒を強要されない」
「自分の予算に合わせてお酒を用意できる」
「好きなタイミングで退席できる」
「服装も上半身だけキメればいい」
などのメリットもあり、主に若い人たちの間で盛り上がりました。
でも、実際は定着しませんでした。
その理由は、自宅なので現実的な刺激がないからです。片付けも、自分でする必要があります。家族がいる人は「大人のぶっちゃけトーク」もできません。
ネット環境の問題で笑いのタイミングがずれたり、同時に2人以上の人がしゃべったり、と聞こえづらくなることもあります。
こんな状態ではストレス発散や気分転換にはならない、と感じた人が多かったようです。
私もやってみましたが、対面ならできる簡単な会話の呼吸も合わず、話すのも聞くのももどかしく、正直、「こんなものは早くなくなればいい」と思いました。
緊急事態宣言解除後にお店に来たお客様は、口を揃えて、「やっぱり、リアルに人と一緒に食べるほうが、だんぜん美味しいし、楽しい」と仰っています。
居酒屋は心をオープンにする場所です。
それをサポートするのが、美味しい料理、お酒、そして店員の気配りです。
焼きたてのモツを提供すると、それまで会話を楽しんでいたお客様が、急に黙り込んで目をつぶり、「これ、美味しいね~」と味に舌鼓を打ってくださることがあります。
その後、お客様の表情が柔和になり、さらに打ち解けてお話しされるようになる、という光景を何度も目にしてきました。
また、お酒が入ると緊張がほぐれて笑顔になり、話しかけてくれるようになったり、お代わりのペースが速くなったりする人がいます。
さらには、盛り上がってくると「ユカちゃん」と名前で呼ぶようになることもあります。
お客様は、距離を縮めながら会話をしたいのです。そのために、わざわざ居酒屋に足を運ぶのです。
私はときに、スナックのママのように、お客様の悩みを聞いたり、新規のお客様を常連さんの輪に紹介したりすることがあります。
デジタルでは得られないさまざまな触れ合いが、アナログの酒場にはあるのです。
「居酒屋文化」は日本の文化です。
リモート飲み会の登場で、逆にリアル飲み会の良さが浮き彫りになったのです。居酒屋で心の距離を縮めることで心も体も元気になれるでしょう。そうなれば、免疫力もアップして、コロナ対策にもなるかもしれませんね。
短大時代、モデル・歌手の道を目指し、20代の頃、クラウンレコードからジャズシンガーとしてデビューし、アルバム2枚をリリース。モデル、歌手、ホステス、エステスクール講師、エステ店経営者を経て結婚、夫が経営していた串焼屋の女将となる。
「居酒屋文化の推進」をライフワークとし、多方面にて活動中。YouTubeチャンネル「やきとんユカちゃんねる」を運営。コロナ禍による営業自粛要請と戦う「新橋一揆」や権力に対する歯に衣着せぬ発言で注目を集め、これまで100を超えるメディアから取材を受けている。
Twitter https://twitter.com/yakitonyukachan
Instagram https://www.instagram.com/yakiton_yuka_chan
Youtube https://youtu.be/UuGykaQ87D8
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