本記事は、川崎晴一郎氏の著書『秒速決算~スピーディに人を動かす管理会計で最高の利益体質をつくる!~』(技術評論社)の中から一部を抜粋・編集しています
「秒速決算」とは
●「秒速決算」では集計数値のポイントを絞る
本書で示す「秒速決算」は、秒速で決算を行うという概念自体と、そのために会社に作る仕組みや体制を総称しています。「秒速決算を取り入れる」ということは、秒速で決算が行えるような体制を社内に作ることだとご理解ください。
最初に結論から述べますが、月次決算や年次決算で登場するような、貸借対照表や損益計算書の作成を締日(月次決算なら月末、年次決算なら年度末)後に秒速で完了できるようにはなりません。もしかしたら多大な努力と工夫によりできるようになるかもしれませんが、おそらく費用対効果が合わず無意味ですので、そこは目指しません。できるだけ手間をかけずに、経営管理の目的を果たす数値のみを決算対象の項目として集計します。
「え、そんなの決算でも何でもないじゃん」
そんな声が聞こえてきそうですが、貸借対照表と損益計算書を決算による成果物として提出しなければならないのは、年度末などの限られたタイミングのみであり、そもそも、それ以外のタイミングで何をもって決算内容として社内で共有するかは各社自由なのです。重要なのはタイムリー(日常的)に業績数値(活動成果)がどうなっているのかを把握し、会社をより儲かる活動へとスピーディにシフトチェンジさせることです。それを目的として、決算の項目が貸借対照表と損益計算書のセットでなければならない、などという固定観念はいったん取っ払って楽になりましょう。
経営管理目的で経営者と社員がタイムリーにフォーカスすべき数値は営業利益です。つまり、年次以外の日常の決算の重要な目的は、言ってしまえば営業利益(厳密にはその元となっている売上高・売上原価・販管費の各項目)の把握にほかなりません。
●「秒速決算」では締日時点で数値集計が完了している状態を目指す
「秒速決算」は読んで字のごとく秒速で決算を締めるようなイメージであり、日常に把握すべき営業利益をターゲットにして、その数値をタイムリーに集計することを意味します。「遅くとも」締日の翌営業日程度に、締日までの営業利益の概要を把握できる体制を目指します。
なお、締日は数値管理の実務を勘案し、毎月の末日とします。ただし、締日後に数値集計作業を開始したのでは「秒速決算」は実現しない上、毎月末日後のタイミングでしか数値を把握できない状態ではタイムリーとは言えませんので、「秒速決算」では、締日を待たずに数値集計を見込みベースで更新していきます(図2-1)。
●「秒速決算」では数値集計は現場の社員が行う
数値の集計担当者は経理部門の担当者でなく、各事業部に所属する現場の社員です。
現場社員は関連する数値に最も詳しいので、早ければ月初には今月の着地見込みの集計を完了できるかもしれません。たとえば対企業向け(B2B)の取引をしている場合、今月受注して、すぐ今月の売上になるようなものはほとんどないので、先月中にも今月の売上高の着地見込みがわかります。費用についても、今月どれくらいの費用が発生するかの予測は月の早い段階で集計可能なものが少なくありません。
飲食店などの対消費者向け(B2C)ビジネスの場合は、毎日の売上が読めなかったりするので、月末ギリギリまで売上高および売上原価がわからないかもしれませんが、それでも月末最終日の売上が固まったタイミングで、すぐに営業利益に至る売上高と費用の全容がつかめるようになります。
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