本記事は、川崎晴一郎氏の著書『秒速決算~スピーディに人を動かす管理会計で最高の利益体質をつくる!~』(技術評論社)の中から一部を抜粋・編集しています
数値の更新頻度と管理者のレビュー体制
理想的な数値更新の頻度
「秒速決算」では、タイムリーに業績を把握できるように、担当する社員が各数値を見込みベースでどんどん更新していきます。
理想的な更新頻度は「日々」です。
売上が決まったり、広告費をかけることが決まったりした都度更新します。社員の方々は日々業務を行っています。その業務を行った結果、将来数値に影響を与える場合があります。それを記録していくのです。
今日獲得した月末の受注や、来月発注予定と決めた外注費、新人の採用決定など、未来の数字は日々の活動で、どんどん更新されるはずです。
日々数値を更新するのが難しい場合は、1週間に1回程度は更新してもらいたいところです。
日報や週報を作成する感覚で、日々あるいは週ごとの活動を振り返り、数値に関する成果を更新します。各担当者はその作業の際に目標との距離を確認しつつ、未来の数値をどう改善していくべきかを考えるのです。
未来の数値を改善するためには、行動を改善させていくほかありません。各社員が各々の目標数値を達成する意識を持ち、自らの行動を改善する努力を日頃からできるようになれば、必然的に会社全体としての利益体質が強化されていくはずです。
責任者のレビュー体制を作る
数値管理は、担当レベルの現場社員任せにしてはいけません。営業利益を獲得する各活動単位には責任者をつけますので、その責任者が数値をレビューするべきです。また、その活動単位の上位階層がある場合、その上位階層の責任者もレビューするなどレビュー体制は階段式となり、最終的に社長が全体をレビューし把握する構図が望ましいです。
通常、責任者と現場社員は上司と部下の関係になりますが、上司が部下の数値をレビューすることにより次の効果が期待できます。
・部下が数値改善のために自ら動き出す ・部下へのタイムリーな行動改善のアドバイスが可能となる ・数値更新に関するミス、漏れを防げる
部下が数値改善のために自ら動き出す
各現場社員は、数値を責任者(上司)に見られることにより、さらなる力を発揮します。上司に見られることによって、数値をよくしたいというインセンティブが働きます。数値レビューの体制は部下を動かすのです。
人間誰しも自分の成果を褒められたいはずです。仕事に対する成果は数値に表れますので、その数値(つまり成果)が見られているという意識がおのずと行動の変化をもたらします。
部下へのタイムリーな行動改善のアドバイスが可能となる
部下の成果が目標数値に対して未達である場合、部下の行動を改善できなければ上司の数値も未達になり、さらなる上司にとっても数値未達になり、ひいては会社全体の数値が未達になるかもしれません。
これを防ぐために、上司がタイムリーに部下へ行動改善のアドバイスを行えるような体制が重要です。部下が真実の数値をタイムリーに更新していれば数値未達である状況もタイムリーに把握でき、結果としてアドバイスもタイムリーにできるようになります。
数値未達の責任を部下に押しつけるのは論外ですから、上司にとっては自分の業績達成のためにも数値のレビュー体制が重要になります。
数値更新に関するミス、漏れを防げる
社員の中にはずさんな性格の人も紛れ、大雑把な見込数値の更新をするかもしれません。また、きちんとした人が対応したとしても、人間の作業なのでミスや漏れが生じる場合があります。
そのような場合であっても、上司がレビューを行う体制であれば、「あれ? この前聞いていた話と更新数値が整合しないな」とか「この前報告を受けた数値が漏れていないか」ということに気づけるようになります。
重要な数値誤りに気づかないままでは経営判断のミスにつながります。たとえば、実態と全く異なる多額の見込(架空)売上が入っているような場合、行動改善をしなければならない場面であるにもかかわらず、行動改善は不要という誤った判断をもたらしてしまうかもしれません。
数値の真実性や正確性が損なわれている状況では、数値管理の目的は達成できません。
ミス、漏れ、過大報告(叱責されないようその場しのぎの取り繕い)といった数値集計を誤らせる要因はいくつかありますが、これを防止するためにも、責任者(上司)によるレビュー体制は重要なのです。
もちろん責任者がレビューしたところでミスや漏れが防げない可能性もありますが、最終的には経営者が判断を誤るような大きなミスや漏れがなければよいので、そのレベルの重大な数値誤りは、より上位階層の責任者のレビューによってアンテナに引っかかることになるでしょう。
「部下が更新する数値は間違えているかもしれない」
責任者の方は、自分の活動単位の数値(営業利益)に責任を持ちますので、この感覚を持って数値レビューに臨むとよいでしょう。
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