M&Aの売却益手取り額は交渉と節税で最大化しよう

M&Aにはさまざまな税金や手数料がかかり、それによって手取り額も変わる。M&Aを進めるにあたり、税金や手数料への理解を深めることは不可欠だ。

また、売り手の工夫次第で売却益の手取り額を増やすことも可能だ。M&A仲介会社も活用しながら、価格交渉や節税によって、適正な手取り額を確保するようにしたい。

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M&Aにかかる税金・手数料に関するQ&A

Q. M&Aで売り手にかかってくる税金にはどんなものがある?

A.売り手にかかってくる税金は、主に以下のようなものだ。

例えば売り手が個人である場合、株式の売却益に対して所得税や住民税がかかる。ただし、売却益に直接税金が課されるのではない点は押さえておきたい。売却益から株式の取得費や委託手数料などを差し引いた「譲渡所得」に対して20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)の税率を乗じて税額を計算する。

相続で株式を引き継いだ場合、株式の取得費は被相続人(亡くなった人)がその株式を取得する際に要した金額がそのまま適用される仕組みだ。売り手本人が創業者の場合は、出資金が取得費となる。なお、取得費についての疎明資料がない場合は売却価格の5%相当額を取得費として計上することが可能だ。また、売り手が法人である場合は、売却益が売上に上乗せされるため、法人税が増える可能性がある。

Q. M&Aで売り手が負担する手数料とは何?

A. 売り手側に発生する手数料としては、M&A仲介手数料や弁護士・税理士などの専門家に支払う費用がある。M&A仲介手数料は、株式の売却価格に一定の手数料率を乗じる「レーマン式」を採用しているM&A仲介業者が多い。

レーマン式とは、売却価格の階層ごとに手数料率を設定したもののこと。売却価格のうち5億円以下の部分に対する手数料率は5%、5億円超10億円以下の部分に対する手数料率は4%などとなっている。例えば売却価格が7億円なら仲介手数料は「5億円×5%+2億円×4%=3,300万円」だ。

なお、M&Aの仲介手数料は着手金や中間金、成功報酬など複数回に分けて支払うのが一般的である。なかには、成功報酬のみを打ち出す仲介会社もあるが、M&Aの成立を強引に進めようとすることがあるため、注意が必要だ。

Q. M&Aで売り手の手取りをできるだけ多くする方法は?

A. M&Aの売り手ができるだけ多くの売却益を手にするには、次の2つの方法を検討しよう。

1 売却価格を上げる
売却価格には、さまざまな算出方法があるがどれも売却価格の決定において絶対的なものではない。なぜなら、売買価格は最終的に売り手と買い手の交渉によって決まるからだ。売却価格を上げるには、M&Aによる買収メリットを買い手に感じてもらえるようにアピールする必要がある。

例えば、すぐれた技術力や特許、ノウハウを持っていたり、優良顧客を多く抱えていたりする会社は、買い手にとって自社の事業拡大に貢献してくれる存在と感じられるだろう。

2 役員退職金を活用する
できるだけ多くの売却益を得るもう一つの方法は、M&Aによって手にする利益に課せられる税金を節税することだ。

退職所得に課せられる所得税は、他の所得に比べて税額が軽減されるような計算方法になっている。M&Aを実施する前に会社から役員退職金をもらい、M&A後に売却益を得るようにすることで、M&Aによる売却益としてのみでお金を受け取るよりも節税につながる。

Q.企業の売却額はどのように計算される?

A. 売却価格(企業価値)の算出には、さまざまな方法があるが、中小企業のM&Aでは「年買法」がよく使われる。年買法は、時価純資産にプラスアルファの価値を加えたものを企業価値とするものだ。

プラスアルファの価値とは、将来利益を生み出すもととなる資産のことであり、特許やノウハウ、ブランド力などを指す。一般的な目安として、営業利益や経常利益などに約2~5年の評価倍率を乗じて「将来の利益を生み出す資産の金額」とすることが多い。

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文・THE OWNER編集部

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