経営戦略の代表的な種類
まずは、経営戦略のなかでも代表的な差別化戦略や多角化戦略、集中戦略、ブルーオーシャン戦略について、それぞれの特徴を解説する。
差別化戦略
差別化戦略とは、自社と他社の差異を明確化することで、競争的に優位なポジションを確立する戦略を指す。この差別化戦略は、マイケル・ポーター(※オーストリアの経営学者)が提唱した3つの基本戦略のうちの1つだ。
単に他社とは異なる商品を販売するのではなく、価格が高くても購入してもらえる魅力を付与することがその本質である。差別化を図るためには、デザインや品質、汎用性などいった商品を構成する要素を他の商品よりも一段と引き上げたり、特徴的なものにしたりすることが必要になる。
多角化戦略
多角化戦略は、従来注力してきた主力の市場とは別の市場において、新製品や新規事業を立ち上げることで一層の成長を狙う戦略である。綿密な下準備は必要になるが、現在の主力事業を拡大していくよりも収益性が高く、さらなる成長を志向するための戦略として位置付けられている。
また、経営を多角化することで、リスクを分散したり事業間のシナジー効果が生じたりする点も大きな魅力だ。しかし、多くのコストがかかる点や非効率な経営になりやすい点など、多角化戦略には注意すべきデメリットも潜んでいる。
集中戦略
集中戦略は、ターゲットとなる顧客層や地域を絞り込むことで、他社との差別化を図る戦略である。これもマイケル・ポーターが提唱した基本戦略の1つであり、実際にはコストの削減や商品の付加価値化を通して差別化を図ることが多い。
仮に規模が小さい企業でも、経営資源を集中させれば特定分野における圧倒的な地位を築くことが可能なので、集中戦略は大企業に対抗する戦略としても注目されている。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略は、W・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱された戦略である。これまでになかった市場を新たに生み出すことで、価格競争に巻き込まれない高い収益を備えた事業を展開できる。
一般的に、競合がひしめく市場(レッドオーシャン)においては、業績を安定的に上昇させることは難しい。その点、ブルーオーシャン戦略では新しい価値を顧客に提供することで、コストを抑えながら高い付加価値を提供できる。
差別化戦略を成功させた事例
ここからは、実際に差別化戦略を成功させた事例を紹介していく。自社のケースと比較しながら、どのようなポイントをとり入れるべきか考えていこう。
【事例1】スターバックスコーヒー
『スターバックスコーヒー』は商品や店内に高級感を演出することで、「おしゃれな雰囲気を楽しみながらおいしいコーヒーを味わえる」という差別化戦略を取っている。また、コーヒーの香りを充満させるために全席禁煙にしていたり、バリスタを配置したりしている点も同社の工夫が見られるポイントである。
【事例2】モスバーガー
ファーストフード大手の『モスバーガー』は、最大のライバルであるマクドナルドとは逆の道を進んでいる。代表的な差別化戦略としては、販売価格を多少高くしてでも本格的なハンバーガーを提供している点が挙げられるだろう。
また、店内に観葉植物を置くなど、長時間滞在できるような居心地の良さも売りにしている。
【事例3】今治タオル
愛媛県の企業である『今治タオル』は、今までのタオルにはない高品質なタオル製品で差別化を図っている。具体的には、吸水性や肌触りといった高い品質を持つにふさわしいストーリーを顧客に打ち出していくことで、今では高級タオルとしてギフトでも重宝される存在になっていった。