本記事は、マスクド・アナライズの著書『データ分析の大学』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=PIXTA)

IT業界 VS 流行が読めない大人たち

テーマ:IT業界では定期的に流行(トレンド・ブーム)が起きるが、業務改善につながるとは限らない。

ブームはデータサイエンティストだけなのか

企業において、昔から仕事のやり方は変わらないでしょうか?2021年時点において、ビジネス界隈で「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という単語が注目されています。これは「バズワード」と呼ばれる“言葉の意味はわからないがとにかくスゴそうな”用語の一種であり、定期的に登場しては技術や製品や事例がアピールされます。そして期待を胸に秘めた企業がお金と時間をかけて導入するものの役に立たず、ITへの不信感が募るという失敗を繰り返してきました。こうした背景には社内IT部門の開発や管理をずっと外注のIT企業に一任し続けた結果、自社が本当に必要なものを見極められないといった問題があります。

目前に迫る崖

同様にデータサイエンティストブームにおける失敗の裏には、本来はデータ分析を業務とするデータサイエンティストに対して、技術以外の問題まで一任した点が挙げられます。データ分析の活用が進まない背景として、変われない組織体制や社内文化という壁があります。他にもデータ分析ツールなどを使いこなすスキルの不足や分析対象となるデータが整備されていないなどの問題も出てきます。そのためデータ分析やデータサイエンティストが活躍できない要因がありました。このような問題が企業において山積しており、経済産業省が「2025年の崖」というレポートで企業におけるIT活用の諸問題について警鐘を鳴らすほどです。

それでも読者自身がデータ分析を推進するのであれば、まずは自分から課題を探して解決しましょう。なぜなら会社や現場によって、課題も答えも異なるからです。最初は正解どころか問題さえもわからない状況でしょう。しかも同じ状況がない以上、前例も解決策も存在しませんが、そのために会社と現場に一番詳しいあなたが取り組むしかありません。本書も個別の読者に合わせた最適解までは提示できません。

本書が手助けできるのは、第三者が並べ立てる意識だけ高い単語や期待させるだけの技術に惑わされず、自分で課題を探して解決する手がかりを見つけてプロジェクトを進めていくことです。それが本書における目標であり述べていくテーマとなっています。

データ分析の大学 図1
(画像=データ分析の大学 図1)

まとめ:ITに対する失望を繰り返さないために、自分の会社で活用できるデータ分析を模索する。

紙と神

テーマ:Excelがデータ分析を阻む壁となっている。

Excelは資料作成ソフトではない

Excelは「表計算ソフト」です。そして一覧表の形で様々なデータの計算や分析を行う「データ分析ソフト」でもあります。しかし、多くの場面ではExcelが表計算や分析ではなく、紙書類のレイアウトをそのまま再現するための「資料作成ソフト」として使われています。こうした印刷を前提したレイアウトでは、セル結合や罫線が多用されており「Excel方眼紙」「神Excel」と揶揄されます。

このような元々存在した紙資料を再現するのは、作成に時間がかかり、データが入力しにくく、集計ができず、ファイルを再利用しにくいなどの問題があります。そもそもExcelというデジタルツールで、紙書類というアナログな業務を行うことが無意味です(Excelの自由度が高い反面、Wordの使い勝手に難がある故の弊害ですが)。Excel方眼紙と神Excelは、集計や分析を行う上では非効率を通り越して苦行となります。

Walls of Merge Cells(セル結合の壁)

まず対策として、集計や分析対象となるデータにおいて、Excelで紙資料をそのまま再現したり、印刷を考慮することをやめましょう。Excelで既存資料のレイアウトを再現せずに、Wordの表機能などで必要事項を入力して集計することは可能です。また、アンケートなどの集計であれば、GoogleフォームなどのExcel以外のツールもあります。そもそもExcel方眼紙や神Excelは、紙資料で行っていた業務をExcelで置き換えただけに過ぎません。これではアナログからデジタルに変換しただけの「デジタル化」であり、分析のために必要な「データ化」とは異なります。昨今では紙の書類をデジタル化した「DX(デジタル・トランスフォーメーション)事例」もありますが、取り組みとしては道半ばと言えます。

特にExcelの機能である「セル結合」はデータ分析における大敵です。本来は1セルに対して1データずつ登録する前提のExcelにおいて、その不文律を乱すのは神をも恐れぬ行為です。そして神Excelにおけるセル結合をバラバラにする作業は、来たるべきデータ分析への備えを怠った愚かな人類への天罰です。社内におけるデータ分析リテラシー向上のため、まずはExcelによる資料作成からの救済を目指しましょう。

データ分析の大学 図3
(画像=イラスト:米村知倫)

まとめ:Excel方眼紙と紙Excelはデータ分析における大敵である

データ分析の大学
データ分析の大学
Twitterで現場目線による辛辣かつ鋭い語り口で情報発信を行い、業界内で注目を集める謎のマスクマン。企業や大学におけるDX・AI・データサイエンス導入活用の支援、人材育成、イベント登壇、書籍や論文の執筆などを手掛けている。執筆・寄稿歴は「ITmedia」「ASCII.jp」「Business Insider Japan」「IT人材ラボ」(現「HRzine」)など多数。著書に『未来IT図解これからのデータサイエンスビジネス』(MdN刊・共著)、『AI・データ分析プロジェクトのすべて[ビジネス力×技術力=価値創出]』(技術評論社刊・共著)がある。

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