本記事は、安藤祐貴氏の著書『小さな会社のムダをなくしてお金を残す!』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
納付時期を遅らせて資金繰りに余裕をもつ
節税策には、大きく分けて「納付時期を遅らせる節税策」と「税額そのものを減らせる節税策」の2種類あります。
「納付時期を遅らせる節税策は、いつかは払わなければいけないから意味がないのでは?」
そう考える人もいるでしょう。たしかに通年で考えた場合の納税額は変わりませんが、直近に支払う税額を減らすことができるということは、減らした税額の納税を1年間猶予させることができることとなります。
法人税等は決算日から2カ月以内に納付することが原則となりますが、例えば左の例のように、賞与を前倒しで支給することで、2カ月後に支払うべき税金を半減させることができます。
半減させた税金は1年後に支払う必要があるものの、納付を猶予された1年間で、半減させた納税額相当のお金を別の投資に回すことができます。
税金は支払った瞬間に「取り戻すことのできない支出」となりますが、猶予された1年間で別の投資に回すことによって、会社の成長速度を向上させる効果が期待できるのです。
ただし、経費の前倒しや売上の計上基準の変更などは、適正なルールにもとづいて実施しないと、税務調査で指摘されて追加納税を余儀なくされてしまう可能性があります。
税務調査官は効率的に「指摘事項」を探そうとします。不当に納税を遅らせている可能性が高い決算日直前の取引を確認することが、税務調査官にとって手っ取り早い「指摘事項」の確認方法です。
もちろんルール通りに計上されている場合は問題ないのですが、ルールを逸脱して納税時期を遅らせている場合は即刻指摘対象となりますので、注意しましょう。
税制を活用して税額そのものを減らす
2つ目の節税策は、今より低い税率の適用を受けたり、人材投資や設備投資に係る税額控除を受けたりすることで、税金そのものを減らす方法です。
もちろん適用要件に合致させるためには、規定の整備などの手続きが必要なものもありますが、適用要件に合致し、税金そのものを減らすことができれば、減った税金相当は即刻他の投資に回すことができます。要件に合致すれば必ず実施したほうがよいです。
導入するかしないかで、納税して資金を流出させるだけなのか、別の投資に回して会社を成長させるのか、今後の明暗が分かれるはずです。
決算期を変更し納税の時期を遅らせる
所定の手続きを経ることで、決算期はいつでも、自由に変更することができます。そのため、期末に突発的な利益が生じる見込みがある場合、決算期を変更することで、突発的な利益に対する税金の納付を先送りさせることを検討しましょう。
例えば、12月決算の会社が、12月に多額の利益が発生する見込みの場合、11月決算に変更することで、12月に見込まれる利益に対する税金の納税を、1年後に遅らせることができます。
決算期をコロコロ変えてしまうと税務署や金融機関からの印象が悪くなるという噂もありますが、決算期変更が税務署や金融機関の印象悪化に直結することはありません。税務署はルールに則って納税をしていれば怖くないですし、また、金融機関からも計画通りに返済さえしていれば余計な疑いをかけられることはないでしょう。
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