ストライキには賃金カットで対応していい?
自社でストライキが発生してしまった場合、給与の支払いをどうすればよいか迷う経営者もいるだろう。結論から言うと、社員がストライキに参加して通常の勤務時間に就労していない時間があれば、その分の給与を支払う必要はない。
ノーワーク・ノーペイの原則とは
ストライキは、本来労働者が果たすべき労務の提供を拒否する行為である。そのため、原則として使用者側は、スト期間中の賃金を労務対価として支払わなくともよい。働かずに争議行為を行っている社員に給与を支払えば、会社側が不当労働行為を行ったとして罪に問われる恐れもある。
このルールを「ノーワーク・ノーペイの原則」と呼ぶ。ただし、完全月給制であれば賃金を部分的にはカットできない。
賃金のカットはどこまで認められるのか
ノーワーク・ノーペイの原則に基づくと、例えばストライキを3日間行ったとすれば、給与月額から3日分を差し引いても良いことになる。しかし、差し引く賃金項目については明確な取り決めがない。
過去のストライキに関する判例では、賃金カットに家族手当まで含めた事例が認められた。
賃金カットの判断は、労使間協議で締結する労働協約や、労働慣行にもとづくこともある。スト時の賃金支給ルールは事前に取り決めた方がよいだろう。
ストライキの発生状況
民間企業で発生した労働争議の状況は、厚生労働省の「労働争議統計調査」によって確認できる。2008年以降に発生した労働争議の件数は以下の通りだ。
「争議行為を伴う争議」のほとんどがストライキの発生であり、2009年以降に減少しているとわかる。
なお、2023年に発生した労働争議270件の主要要求事項の内訳は以下の通りだ。
1位 139件:賃金(基本給や一時金など)
2位 103件:労働協約や組合保障
3位 98件:経営・雇用・人事(解雇や出向、人事考課など)
4位 38件:賃金以外の労働条件(残業や休日出勤など)
5位 7件:その他
ストライキは賃金を含む労働条件や雇用、人事に関する団体交渉が労使でまとまらない場合に発生しやすく、リーマンショックの影響を受けた2009年は争議行為も最多となっている。ただし、ストライキは減少しているもののなくなったわけではない。
ストライキ以外で知られる争議行為の種類5つ
ストライキ以外で知られる争議行為の種類を5つ紹介する。
種類1.怠業
怠業は、ストライキと違って労務を提供するが、質や量の面から不完全な状態で労務を提供する対処をさす。細かく分けると以下のような種類がある。
スローダウン:労働能率を低下させる消極的怠業
サボタージュ:故意に販売不能な製品を製造したり、設備に損害を与えたりする積極的怠業
種類2.生産管理
生産管理は、労働組合が企業の事業継続に必要な施設や器材の一部または全部を支配し、使用者に管理、運営させない行為である。
種類3.職場占拠
職場占拠は、労働者側がストライキ実行時に労務の提供を拒否するだけでなく、企業の施設や職場で座り込むなどして占拠する行為をさす。
種類4.ピケッティング
ピケッティングは、使用者側にストライキを破られないように、組合員がスト実施事業場の見張りを行い、労働者の立ち入りを拒絶する行為だ。
種類5.ロック・アウト(作業所閉鎖)
ロック・アウトは、争議行為の中で唯一使用者が労働者に対抗して行う対処をさす。使用者が、職場や作業所を閉鎖して労働者の立ち入りを禁じ、労務提供の受け入れを拒否する。