ストライキの発生時に経営者が行うべき対処法4つ

ストライキの原因は賃金や雇用に関わるものが多く、不況に左右される場合もある。ストライキの発生時に経営者が行うべき対処法を4つ確認しておこう。

対処法1.団体交渉で問題解決を図る

ストライキが行われている場合でも、団体交渉は継続される。労働組合側としても、いきなり無期限ストなどの争議行為を行うケースは稀だ。

ストライキの長期化を避けるためにも、団体交渉で解決の糸口を探ることが重要である。

また、使用者側はストライキが適法で行われているかチェックする必要もある。予告期間の遵守、労働協約の有無、法律で定められた手続きの適正な実施などの条件が満たされているかを確認しよう。

スト実施の暴力行為は労組法第1条2項に違反する行為であるため、使用者側と労働者側の双方への周知が必要だ。

対処法2.ストライキ中は賃金の支払いを停止する

ストライキ期間中は、従業員は業務に従事していないため、ノーワーク・ノーペイの原則に従って、賃金の支払い停止処置を行う。労使協議によって定めた労働協約などのルールや労働慣行にしたがって、賃金の支払い停止を行おう。

労働協約に定めがない場合は、ストライキの実施期間から非就労時間を割り出して、月額賃金から差し引いて支給を行おう。

対処法3.解決が難しいなら第三者機関を活用する

労使間の交渉で解決が難しい場合、第三者機関による労働争議の解決支援を活用して欲しい。たとえば、労働委員会によるあっせんや調停、仲裁、労働行政機関への相談などだ。

対処法4.不当労働行為を行わない

ストライキの実行を理由として、労働者を懲戒解雇したり強制的に争議行為を中止させたりすると、使用者側に刑事罰が適用されることもある。不当労働行為は行ってはならない。

使用者側が不当労働行為に該当しないと判断しても、訴訟に発展することもある。事前に労働協約で争議行為のルールについて言及しておくなど、リスクマネジメントが重要だ。

ストライキに関する裁判事例3つ

ストライキに関しては、過去にさまざまな裁判が行われている。ここでは、賃金請求権に焦点を当てた判例を3つ紹介する。

事例1.ノースウエスト航空事件:使用者側勝訴

雇用に関わるストライキの影響により、使用者は航空業務の一部を停止し、停止業務に関連する労働組合に所属していない従業員に休業を指示した。使用者が休業期間内の補償を行わなかったため、労働者側が提訴した。

スト実施によるやむを得ない状況であるため、労働基準法第26条で定められた「使用者の責に帰すべき事由」には該当しないとされ、休業手当の請求権は認められず賃金請求権についても否認された。

事例2.全農林警職法事件: 使用者側一部敗訴

公務員が起こしたストライキに関する非常に有名な判例である。「警察官職務執行法」に反対していた全農林の労働組合が改正案を国会に提出し、法案職員に対してデモへの参加を促した事件である。

国家公務員法第98条では、公務員の争議行為は禁止されており、同法律違反として全農林側が起訴された。判決としては、公務員に対しても「日本国憲法第28条」に定められた「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の労働三権が認められるとされ、訴えは棄却された。

ただし、公務員の争議行為は民間への影響が大きく、国家公務員法での取り決め自体は憲法違反ではないとされている。

事例3.書泉事件:使用者側一部敗訴

書泉事件は、約2年間の無期限ストを実施後に、使用者側が一方的に組合員の就労申し入れを約6年間拒否したことで発生した。

就労申し入れの拒否には合理性が認められないとして、賃金請求権が一部認められた。