2021年12月9日、スポーツ用品メーカーのヨネックス <7906> の株価が一時1,113円まで買われ、年初来高値を更新した。ヨネックス株が1,100円台を超えるのは2017年8月以来、4年4カ月ぶりのことだ。今年5月13日に記録した年初来安値554円からは、7カ月で約2倍に上昇した計算である。
後段で述べる通り、ヨネックスは業績の好調やタイのテニスボール事業会社の子会社化などを手掛かりに人気化しているようだ。ちなみに、海外では中国のバドミントン事業や北米のテニス事業のさらなる成長が見込まれており、2022年3月期の純利益は前期比3.9倍に急増する見通しである。
今回はヨネックスの話題をお届けしよう。
ヨネックス、今期の純利益は3.9倍の43億円に
11月9日、ヨネックスは2022年3月期第2四半期累計(4〜9月)決算を発表した。売上高は前年同期比57.5%増の348億円、本業の利益を示す営業利益は42億円の黒字(前年同期は2億円の赤字)に転換した。第2四半期累計としては売上高、営業利益とも過去最高である。全体の58.6%を占める海外売上高が前年同期比63.7%増の204億円に拡大したことが寄与した。
ヨネックスは2022年3月期(通期)について、売上高を前期比37.7%増の710億円、営業利益は5.3倍の55億円、純利益は3.9倍の43億円となる見通しを示している。セグメント別では、中国の好調を背景にアジアのバドミントン事業の売上高が66.7%増の133億円、北米のテニス事業が57.2%増の15億円と好調に推移し、業績を牽引する見通しだ。ちなみに、純利益はアナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサスの30億4,000万円を41.4%上回った。
決算発表翌日の11月10日のヨネックス株は前日比で一時18.0%高の910円と急伸、人気のバロメーターである出来高は87万2,700株と前営業日(11月9日、7万1,900株)の12.1倍に膨らんだ。
さらに12月6日にヨネックスは、ブリヂストンスポーツの子会社であるタイのテニスボール事業会社の株式を取得し、子会社化することを明らかにした。ヨネックスは今回の子会社化について、自社工場のラケット、ストリング、ストリンギングマシン、テニスボールの生産体制を強化し、グローバルなテニス事業の成長に結び付ける意向を示している。
株式市場はヨネックスによるタイのテニスボール事業会社の子会社化を歓迎、12月9日には一時1,113円まで買われ、連日の年初来高値を更新した。今年5月13日に記録した年初来安値554円からは、7カ月で約2倍に上昇した計算である。
東京五輪も後押し? 中国で盛り上がりみせるバドミントン
ヨネックスの源流は、1946年に新潟県で創業した「米山木工所」にまでさかのぼる。当初は漁業用の木製浮きを製造していたが、経営が思わしくなくなり、1957年にはバドミントンラケットの製造を開始する。その後、テニス用品やゴルフ用品にも参入、1982年には社名を現在のヨネックスに改称している。
ヨネックスがバドミントン用品を手掛けるようになってから、実に64年である。現在もバドミントン用品はヨネックスの主力商品だ。ちなみに、2022年3月期第2四半期累計決算の売上構成比を見ると、バドミントン用品が55.5%、テニス用品が16.5%、ゴルフ用品が2.2%となっている。同期のバドミントン用品の売上高は193億円であるが、このうち海外が150億円で77.7%を占める。
海外のバドミントン事業で注目されるのが中国だ。ヨネックスが公表した中間株主通信『YONEX BUSINESS REPORT 2021』によると、中国では国民の健康志向の高まりに加え、中国代表選手の活躍も相まって「バドミントンが盛り上がりをみせている」という。ヨネックスは中国代表チームと用具使用契約を締結しているが、今年7月の東京オリンピックで中国は金2、銀4の計6つのメダルを獲得、今年9月にフィンランドで開催された「第17回 スディルマンカップ」でも中国が決勝トーナメントを制するなど大活躍をみせたこともブームを後押ししているようだ。
前述の通り、2022年3月期(通期)におけるアジアのバドミントン事業の売上高は、中国の好調を後ろ盾に前期比66.7%増の133億円となる見通しだ。