「臨時休業」の貼紙
(ひろこ / PIXTA(ピクスタ))

1億円あまりの借金を抱える中小企業

「どうにかコロナ禍で生き残ることができてホッとしているが、これから先のことを考えると憂鬱で……」

東京都内で中小企業を営む60代の男性はこのようにつぶやいた。この男性の会社は、従業員15人程度。新型コロナウイルスの蔓延によって業績が落ち込み、持続化給付金や雇用調整助成金などありとあらゆる支援策に申し込み、急場をしのいできた。

だが感染拡大は一向に収まらず、支援策だけでは到底間に合わない。そこで日本政策金融公庫やメインバンクとしている信用金庫などから実質無利子・無担保融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」を受けたほか、低利子の融資も限度まで借りざるを得なくなった。

その結果、どうにか社員の首を切ることなく、会社を維持できているものの、負債は1億円を突破してしまう。男性は「コロナ禍において返済のことなど考えている暇はなく、その日を乗り切ることで精一杯だった。だが、いくらゼロゼロ融資や低金利の融資だといっても借金が1億円を超えてさすがに不安になってきた」と明かす。

倒産件数は少ないが……

帝国データバンクが負債1,000万円以上の倒産(法的整理)について集計したところによれば、2021年度上半期(4〜9月)の倒産件数は2,938件と、1966年度以来55年ぶりの3,000件割れとなった。負債総額も5,784億7,000万円と、上半期としては2年ぶりの前年同期比減少となっている。また法人、個人事業主を含めた累積の「新型コロナウイルス関連倒産」で見ても、12月7日現在で2487件と決して多くない。

これはコロナ禍において、政府系金融機関を始め、国からの後押しを受けた民間の金融機関もさまざまな支援策を実施した影響が大きい。ある地方銀行の幹部は「政府の後押しに加えて、金融機関的にも損をしない仕組みで(融資残高を伸ばせるという)メリットが大きいこともあって、とにかくゼロゼロ融資の残高を伸ばせの大号令がかかり残高を積み上げていった。それだけでなく、コロナ前の融資に関しても返済期限を猶予したり、条件を緩和したりするなど、さまざまな方策を取った結果だろう」と語る。

ただ、倒産の中身を詳細に見ていくと、こうした状況にも濃淡がある。