本記事は、江口克彦氏の著書『こんな時代だからこそ学びたい 松下幸之助の神言葉50』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています
ガラス張りの経営をする
次に考えられるのは、会社の中に派閥を作らんかったということやろうな。
とにかく、学閥とか、あるいは、ようあるやろ、社長派とか専務派とか、そういうものも作らんかったし、作らせんかった。
そういうものは社内に対立を生み出すばかりではなく、会社全体の力を分散させることになるわね。全員で打って一丸というところを、派閥があればそれができん。知恵を集めて仕事を成功させようとしても、派閥があればその知恵も十分に集められんということになる。
そんなことでは激しい競争に勝てるわけがないやろ。うちの会社が成功したとすれば、派閥を作らず、みんなで力を合わせたからや。
おっ、コーヒーがきたよ。飲みながら話そうか。
それから、ガラス張りで経営をやったというのもよかったかもしれんね。
わしはな、会社の社員が十数人の、まあ、個人経営のときから、毎月の決算を社員に公開してきた。今月はこれだけ売れた。これだけ儲かったということを、従業員諸君に知らせてきた。
個人経営やから、そんなことをする必要もなかったけど、社員が力を合わせてあげた成果や。はっきりと知らせなければ、あいすまんと思った。
それで、みんなで努力した成果はこういうことですよと、知らせてきたんやけど、それが社員諸君に非常な励みになった。みんながさらに一所懸命働くことになったんや。
そこまでわしは考えてへんかった。そういうことで経営の成果を公開すると、社員が、それはよかった、来月もがんばりますというようになった。
まあ、社員諸君は、自分も経営の成果を把握しておると、そういう気分になるんやな。そうすると、この会社は自分の会社だ、自分たちの会社であるという気持ちになる。
自分たちが働いたことで、成果があがったということがはっきりと分かる。そこに、喜び、生き甲斐というものも生まれ、一所懸命やるぞという熱意も生まれてきたんや。
またガラス張りの経営をするということは、経営者がいかなる不正も行い得ないということにもなるわな。経営者自身の自己規制にもなる。ガラス張りの経営はいろいろな、思わん効果をもたらしたと言える。
そやな、全員で経営をしてきたのも、よかったかもしれんなあ。
わし一人で経営をやるということではなく、社員みんなで経営をやろうということを心がけてきたな。いま言ったガラス張りで経営をしてきたのも、社員諸君の知恵を集めてきたのも、すべてこれ、全員で経営をしようとしてきたということやね。
事業部制にしても、そや。きみ、これを担当してやってくれ、そして一切の経営はきみがやってくれ。まあ、こういう主義やな。
一人一人が経営をわがこととして考える、一人一業、わしのいつも言ってる、社員稼業やね、そういう考え方で取り組む。そういう環境をつくってきた。
そやから、ワンマン経営ではないわけや、早い話が。時折あんたはワンマンではないですかと言う人もおるけれど、そういう人は実態を知らんわけやな。とにかく常に社員一人一人を主人公にするようにして仕事をしてきたんや。
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