本記事は、江口克彦氏の著書『こんな時代だからこそ学びたい 松下幸之助の神言葉50』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています

とにかく訴える

働き方改革関連法,経営力アップ,中小企業経営者
(画像=PIXTA)

経営者は、どうやって自分の考え方を社員に浸透させていくのか、ということか? そやな、そのとき、経営者にとって大事なことは、訴えることやな。

社員の人たちに経営者自身が考えていること、思っていること、そういうことを話し、説明せんといかん。自分たちの大将がいま、どんなことを考えているか、社員のみんなに知らせる、そういう努力を責任者はやらんといかんということやな。

そのとき、よう心がけておかんといかんことは、その訴える内容について責任者がどれほどの思いを込めておるかということやね。

まあ、重要なことだから、一応みんなに話しておこうか、という程度ではだめやな。そんな気持ちであれば部下の人たちに伝わるとしてもその真意の1割も伝わらんやろう。うん、重要やと。相当心を入れて話すと。

かりに100パーセント伝えるために、100パーセントの思いを込めて話をすると。しかし、その程度の思いでもあかんのやな、思いがまだ足りんわけや。部下に伝わっていくうちに、しまいには10パーセントほどになってしまう。

100パーセントを部下の人たちに伝えようとするならば、そのことに責任者は1000パーセントの思いを込めんといかん。もう溢れるばかりの思い、まあ、祈りにも似た熱情が込められた内容でないといかん。

そして燃えるような思いで訴えんといかん。そういう姿でないと、責任者の真意は伝わらんものや。

それはけしからんというても、それが実際の姿やな。それよりも、責任者がそれほどの思いを掛けておらんということのほうが問題やな。

社員が自分の話を十分に理解せんと言う経営者がおるけど、経営者自身が十分な熱意、思いを、そや、1000パーセントの思いやね、それを込めて社員の人たちに訴えておるかどうかということを、よう反省せんといかんわね。

思い付きで考えたこと、ちょっと考えてええと思ったこと、人に聞いて感心したこと、そんなことぐらいで社員や部下の人たちに話しておったら、みんなえらい迷惑やで。きみ、そう思えへんか。経営で大概悪いのは、経営者のほうやで。

それからね、繰り返し話をする、繰り返し訴えていくということも大事やね。うん、繰り返すということやな。それが経営者の考えを浸透させることになるな。

年1回、十分に話したから大丈夫や、あるいは書類を回しておいたから、理解してるはずだとか、そう考える責任者はいないかもしれんが、そういう程度で社員の人たちに周知徹底することは不可能やわね。

いや、自分は3回も4回も話をしました、それでもうちの社員はあきませんという経営者の人もおるやろうけど、それであかんかったら10回も20回も繰り返したらええんや。

わしは若いころ、3年近く、毎日のように朝会でわしの考えを話したことがあるんや。10分か15分ほどやけど、繰り返し繰り返し自分の考えを訴えた。

うん、もちろん同じ話はせえへんで。いろいろな話をする。自分の経験したこと、きのう考えたこと、まあ、いろいろ話をするけれど、しかし、究極言わんとすることは同じや。究極同じことを言うておるんやけど、話はいろいろな話をする。これが毎日や。結構苦労したで。きょうはどんな話をしようかと。

けど、ここが大事やな。よう社員には勉強せえ、考えろと言うけど、それならば経営者も勉強し考えんといかん。自分はそういうことはせんといて、部下には勉強せよ、考えろと言う人がおるけど、こっけいな経営者やな、そういう人は。

とにかく、わしは毎日、話をした。そうすると、社員諸君ははじめはただ、へえ、そうですか、ということやな。

けど、だんだんと、繰り返し話をしておると、なるほどそうかと。そりゃ自分たちもやらんといかんですな、ということになる。やがてしばらくすると、社員のほうが一所懸命になって、大将、何言うてまんねん、そんななまぬるいことではあきません。わたしらについてきなさい。

ほんまにそやで。繰り返し話をすることによって、自分たちの大将がいま何を考えておるのか、いま一番関心をもっておるのは何か、何に取り組まんといかんか、どういう方向で努力をしていったらええのか、よう分かってくるわけや。

経営者の真意が十分に伝わるということになる。こういう繰り返しをせえへんかったら、経営者の真意は社員には伝わらんわな。

なかなか自分の考えが社員に伝わらんというなら、これほどの努力をしておるかどうか考えてみんといかんな。社員は大将の考えが理解できたら、よう働くもんやで。

こんな時代だからこそ学びたい 松下幸之助の神言葉50
江口克彦(えぐちかつひこ)
一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問等。1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。旭日中綬章、文化庁長官表彰、台湾・紫色大綬景星勲章、台湾・国際報道文化賞等。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書に、『最後の弟子が松下幸之助から学んだ経営の鉄則』(フォレスト出版)、『凡々たる非凡―松下幸之助とは何か』(H&I出版社)、『松下幸之助はなぜ成功したのか』『ひとことの力―松下幸之助の言葉』『部下論』『上司力20』(以上、東洋経済新報社)、『地域主権型道州制の総合研究』(中央大学出版部)、『こうすれば日本は良くなる』(自由国民社)など多数。【編集部記】

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