自社株の処理方法によっても影響は変わる

自社株買いによって買い戻した株式は、社内に「金庫株」として保管される。この金庫株はなかったものとして扱われるが、保管しておけば自動的に消却されるわけではない。

金庫株には2つの処理方法があるため、それぞれどのような違いがあるのか解説していこう。

自社株の消却

消却とは、買い戻した自社株を社内で消滅させる方法のこと。発行済株式総数を減らすことで1株あたりの価値が上昇するため、消却には既存株主を安心させる効果がある。

つまり、消却は株価上昇の要因になるが、本来であれば株式は資金調達に活用するものだ。自社株を消却するほど会社の資産は減少し、最終的にはバランスシートを圧縮してしまうので、消却する株式数は慎重に判断する必要がある。

自社株の処分

一方で自社株の処分とは、金庫株を再び市場に流通させることを意味する。増資と同じような仕組みなので、自社株をうまく処分すれば多額の資金を調達できるだろう。

ただし、処分をする自社株が多いほど、市場における1株あたりの価値は下落していく。仮に暴落を引き起こせば、既存株主から反感を買う恐れがあるので、処分についても対象となる株式数は慎重に判断しなければならない。

事例から学ぶ自社株買いの効果

リスクを抑えた形で自社株買いを行うには、事前に周りへの影響を予測することが必要だ。具体的にどのような効果が表れやすいのか、国内の有名な事例を通してチェックしていこう。

【事例1】ソフトバンクグループによる自社株買い

通信事業や携帯電話事業などを手がける『ソフトバンクグループ』は、2019年2月に6,000億円を上限とした自社株買いを公表した。目的は明らかにされていないが、2018年12月の株価が公開価格を下回っていたために、自社株買いに踏み切ったと考えられている。

実際に同社の株価は2019年2月から上昇しており、その上昇は同年5月頃まで続いた。また、子会社にあたる『ソフトバンク』なども、同時期に株価を上昇させている。

なお、買い戻した株式に関しては、株価や発行済株式総数を適正化するために「全て消却すること」が明言されていた。この自社株買いによる影響かどうかは不明だが、ソフトバンクグループの株価は2021年に入っても好調な状態が続いている。

【事例2】日本電産による自社株買い

次は、もう少し最近の事例を紹介しよう。大手電機メーカーである『日本電産』は、2021年1月から約1年間の自社株買いを公表している。

この自社株買いは2021年10月現在でも実施されており、同年5月には404,800株の買い付けが実施された。取得株式の上限数は400万株(500億円)なので、この自社株買いは今後も続いていく可能性がある。

しかし、ソフトバンクの例とは違い、日本電産の株価はそれほど上昇していない。2021年2月中旬までは上昇傾向にあったが、それ以降は期待通りに上昇しない状態が続いている。

このように、自社株買いによる株価上昇が一時的になるケースは珍しくない。実際に生じる効果は各企業の状況によって異なるので、周囲に及ぼす影響はしっかりと分析する必要がある。