「東証一部上場」は2022年になくなる?
東京証券取引所は2022年に市場の再編を予定しており、全市場を以下の3つに統合することがすでに決まっている。
つまり、投資家や経営者にとって馴染み深い「東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQ」などの名称は、2022年4月以降からは使用されなくなる。
東京証券取引所がこのような再編を行う理由は、世界的な存在感や注目度を高めるためだ。日本の証券市場の規模はそれほど小さくないが、アメリカや中国、香港などの市場と比べると、直近10年の取引量が伸び悩んでいる。
そこで、東京証券取引所は海外の投資家を呼び込むために、大規模な市場の再編に踏み切った。上記の「プライム市場」のコンセプトを見ると、海外の投資家や投資資金を強く意識していることが分かる。
東京証券取引所の再編によって変わること
2022年の市場再編が実施されると、実は各市場の名称以外にもさまざまな点が変更される。そこで以下では、経営者が特に押さえておきたい変更点を解説していく。
1.市場区分
2021年現在、東京証券取引所内には5つの上場市場があるが、市場再編が実施されると次のように区分が変更される。
つまり、トップクラスの企業はプライム市場、中堅企業はスタンダード市場、新興企業・成長企業はグロース市場がそれぞれ受け入れることになる。
ちなみに上記の区分はあくまで目安であり、現在の東証一部上場企業が引き続きプライム市場に上場できるとは限らない。企業の業績や経営環境によっては、東証一部からスタンダード市場への変更を余儀なくされる可能性もある。
2.上場基準
市場再編に伴って上場基準が変更される点も、経営者が押さえておきたいポイントだ。例えば、現行の東証一部と新設されるプライム市場を比較すると、形式要件には次のような違いが見られる。
内容が変わらなかったり緩和されたりする要件も一部あるが、形式要件全体としてはプライム市場のほうが厳しい。また、コーポレートガバナンスや内部管理体制などの実質要件に関しても、プライム市場のほうが厳しくなると予想されている。
3.株主の立場
東証一部をはじめとした現行の市場と比べると、プライム市場は「流通株式比率」が重視される傾向にある。そのため、市場再編の実施後には安定株主の割合が下がり、いわゆる「物言わぬ株主」の数も減少する可能性が高い。
物言わぬ株主の数が減ると、その一方で積極的に意見をする株主が増えることになる。つまり、より多くの株主の意見をとり入れる必要があるので、再編後の上場企業には「投資家との緊密なコミュニケーション」が求められるだろう。
特に近年はSDGsやESG投資の影響で、一般投資家の考え方や方針が変わりつつある。この変化にうまく対応しないと、今後は高い評価を受けることが難しくなるので、上場を目指す企業は株主・投資家との関わり方を見直しておきたい。