東証一部と言えば、誰もが知る大企業が名を連ねている市場だ。しかし、2022年の市場再編をきっかけに、東証一部を取り巻く環境は大きく変化すると考えられる。本記事では東証一部上場に関する基礎知識や、市場再編によって変わる主なポイントを解説する。
目次
東証一部上場とは?
東証一部上場とは、東京証券取引所が運営する「東証一部」に株式を上場することである。東京証券取引所内には、ほかにも「東証二部・マザーズ・JASDAQ」の3つの市場があるが、その中でも東証一部は特に厳しい要件が設けられている。
また、国内外問わず多くの投資家から注目されている点も、東証一部の大きな特徴である。そのため、東証一部への上場を果たすと大きな資金調達のほか、知名度アップやブランドの形成にもつながる。
東証一部上場の企業数
2021年10月現在、東証一部には2,184社が上場している。国内の上場企業は約4,000社弱であるため、東証一部だけで上場企業全体の約50%を占めている計算になる。
また、同じ東京証券取引所内の市場と比べても、東証一部の上場企業数は圧倒的に多い。
東証一部上場企業の数は1990年以降増え続けており、直近10年間(2011~2021年)では500社ほど増加した。
上場している企業の傾向
東証一部は、国内でもトップクラスの企業が上場する市場である。実際にどのような企業が上場しているのか、売上高の上位・下位を5社ずつ紹介しよう(※2021年時点でのデータ)。
上記を見ると、同じ東証一部でも規模や業績には差があることが分かる。ちなみに、2015年5月時点でのデータを参照すると、東証一部の1社あたりの平均売上高は1,085億円であった。
ただし、売上高下位の企業に関しても、東証一部の新規上場基準もしくは上場廃止基準を上回っているため、各業界のトップクラスの企業であることに違いはない。
東証一部上場の条件は厳しい?ほかの市場との違い
日本国内の市場の中でも、東証一部の上場要件は特に厳しい傾向がある。具体的にどれくらい基準が異なるのか、ここからは東証一部とほかの市場の違いを解説していく。
東証二部との違い
東京証券取引所が運営する東証二部は、東証一部と同じく「本則市場(メインとなる市場)」に含まれる市場である。ただし、上場企業の傾向を見てみると、国内トップクラスではなく中堅レベルの企業を中心に構成されている。
また、東証一部に比べて上場要件がやや緩めに設定されている点も、東証二部の大きな特徴である。
なお、東証二部は東証一部のステップアップ市場としてよく活用されるが、要件さえ満たせば最初から東証一部に上場することも可能である。
マザーズとの違い
同じく東京証券取引所内にあるマザーズは、東証一部・東証二部上場のステップ市場として機能している市場である。マザーズは主に新興企業・成長企業向けの市場であるため、時価総額や純資産額、利益額などに関する一部の要件が設けられていない。
また、マザーズには「10年ルール」と呼ばれる規則があり、新規上場から10年が経過すると東証二部の上場廃止基準が適用される。
JASDAQとの違い
次に紹介するJASDAQ(ジャスダック)も、マザーズと同じく新興企業・成長企業を対象とした市場だ。JASDAQには以下の2つの市場があり、それぞれが異なる役割を担っている。
・JASDAQ(スタンダード)…一定の実績や事業規模をもつ企業を対象とした市場。
・JASDAQ(グロース)…成長可能性のある企業を対象とした市場。
いずれの市場も東証一部より上場要件が緩く、特にJASDAQ(グロース)に関しては赤字経営でも上場することが認められている。
東京証券取引所外の市場との違い
東証一部をはじめとする東京証券取引所内の市場は、日本全国から企業を受け入れている。一方で、名古屋・札幌・福岡の3つの証券取引所は、以下のように特定のエリアで重要な役割を担っている。
なお、東証一部と名証一部の要件は全体的に似ているものの、知名度や注目度、株式の流動性などに関しては東証一部のほうが圧倒的に高い。