代表取締役の役割3つ
代表取締役は、会社の代表として責任を持った行動が求められる。ここでは、代表取締役が会社で果たす大きな3つの役割について解説する。
1.株式会社の業務執行
代表取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。(会社法第363条)
なお、代表取締役以外にも、業務を執行する役員として選定された取締役や、会社の運用で選定された執行役員が業務執行を担う体制にすることも可能である。
2.株式会社の代表
代表取締役は、株式会社で行われる業務に関して、全ての裁判上または裁判外の行為ができる権限をもつ。(会社法第349条)
これは、対外的に会社の代表になるという意味だ。なお、代表取締役を選定しない株式会社では、取締役である各自がそれぞれ代表となる。(会社法第348条・349条)
3.取締役会を組織する一員
代表取締役もまた取締役の1人であり、取締役会を組織する一員である。したがって、他の取締役とともに、取締役会の職務にも加わることとなる。
【参考:取締役会の職務】
・取締役会設置会社の業務執行の決定
・取締役の職務の執行の監督
・代表取締役の選定及び解職
代表取締役に関する会社法上のその他のルール
会社において代表取締役を据える場合、会社法上で定められたルールがある。
登記事項について
代表取締役については、氏名及び住所(取締役は氏名)を登記する義務がある。(会社法第911条第3項14号)
賠償責任について
株式会社は、代表取締役やその他の代表者が、職務上で第三者に損害を加えてしまった場合、損害に対する賠償する責任を負う。(会社法第350条)
なお、代表取締役でない取締役が、株式会社の代表であるかのような誤解を第三者に与えて契約をした場合、第三者側が保護され、株式会社がその責任を負うこととなる(会社法354条)。
任務懈怠による賠償責任の一部免除の範囲
役員等が任務懈怠(けたい)によって会社に損害を与えたときは、その賠償責任を負う(会社法第423条)。
ここでの「役員等」とは、「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人」を指す。もちろん、代表取締役は取締役であるため「役員等」に含まれる。
この賠償責任は、総株主の同意がある場合に限り、全額を免除できるルールがある。さらに、総株主から同意が得られなくとも、株主総会の決議によって賠償責任の一部を免除できるルールがある。(会社法第424条・425条)
一部免除の対象になるのは、善意(故意に損害を引き起こしたわけではない場合)であり、かつ、重大な過失がない役員等に限られる。
ただし、代表取締役がこの一部免除の対象になる場合、他の役員等よりも免除できる限度額が低くなるよう設定されている。(会社法第425条)