本記事は、佐藤玲子氏の著書『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています

その「こだわり」は伝わらない

看板
(画像=カツ/PIXTA)

私がよく通る幹線道路沿いに、読めない看板があります。なぜ読めないのかというと、とても凝った飾り文字なので、車で通りかかる一瞬では読み取れないのです。きっと、こだわりのある文字なのでしょうが、読みにくくては伝わりません。特に、運転者向けの看板ならば、文字の読みやすさにも気配りが必要です。

その看板の前を通るたび、まわりの車の人はちゃんと読めているのかなと気になっています。そういった意味では、たしかに目立つ看板なのかもしれませんね。

読めない看板というと、私自身の苦い経験があります。それはまだ起業する前の7~8年間、自分で作った手芸品をマルシェで売っていたときのことです。

当時の屋号は「Petitfleur」、フランス語で「小さな花」という意味です。もちろんフランス語なんて知りませんから、検索で調べて名付けました。小さな看板も手作りしてブースの隅に掛けました。

ところがなぜか、いつになっても誰も屋号では呼んでくれません。他の人達は屋号で親しく呼び合っているのに、私だけいつも「佐藤さん」です。せっかくおしゃれな屋号を付けたのにと、さびしい思いをしていました。そうなのです。まわりの人も私と同じで、フランス語を読めなかったのでした。名前を呼べないなんて、親しみも半減です。常連客からのクチコミにもならなかったわけです。後々になってから、ようやく気づいて悔やんだものです。

屋号を新しく付けるとき、他にはない珍しい字体や変わった名前を付けたくなる気持ちもよくわかります。もし、外国語や難しい漢字を使うならば、脇に読み仮名を添えると、お客様には親切です。こだわり過ぎて読めない看板にならないようにしてください。

読めない看板は、親しみも生まれないばかりか、逆に「何て読むのかなぁ」と、お客様のストレスになってしまいます。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

事例 美容院A店の話

もう何年も前に相談を受けた、美容院A店さんのことです。当時、改装オープンから3年目で、以前の店からの既存客は、時間とともに減少傾向なうえ、新規客がなかなか増えなくなっていました。たまに、カフェと間違えて入って来る人がいる。そんな悩みでした。

実際にお店にうかがってみると、この悩みの原因は、お店の外観と看板にありました。

広い通り沿いのその店は、アイアンのフェンスと手入れの行き届いた植栽に囲まれた、古い洋館のような建物です。小ぶりの木目の看板には、白いペンキで流れるような美しい筆記体の店名が書かれています。これは、オーナーの大好きなイタリア語だそうです。このおしゃれな建物と店名だけでは、誰もがカフェと勘違いするのも無理はありません。

そこで私は、駐車場の歩道寄りの位置にメニュー看板を設置するようにお勧めしました。「カット」とか「パーマ」とかの文字があれば、そこが喫茶店ではなく、美容院だと判断できますからね。イタリア語のメイン看板には、小さくカタカナを添えることも併せて提案しました。

オーナーは、私の提案を渋々最後まで聞いてくれたものの、残念ながら実行には至りませんでした。理由は、「カッコ悪いから」というものでした。

メニュー看板は店の雰囲気を壊すし、美しい横文字の看板にカタカナは入れたくないから、ということでした。

たしかに、せっかく作り上げたお店ですから、こだわる気持ちはよくわかります。私自身もそうでしたから。

でも、こだわりだけでは新規のお客様には伝わりません。これからも、カフェと間違われ続けるでしょうし、「あそこのお店ね」とクチコミの時に、大事な屋号を正しく呼んで覚えてもらえるかどうかも心配です。

お店のこだわりよりも、お客様のためにわかりやすい看板を設置してください。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

看板で、来てほしいお客様を呼ぶ

笑顔で応対すると、相手も自然に笑顔になります。これは脳科学で、「ミラーニューロンの法則」と呼ばれる現象です。脳には、他人の行動から感情を読み取る機能があって、無意識に鏡(ミラー)のように、相手に合わせたふるまいをしてしまうそうです。

お店でも、見せ方で来てほしいお客様を引き寄せることができます。特に、新規のお客様が最初に見る看板は、まさにミラーニューロンの法則が当てはまります。

看板は、形や色、文字、写真・イラストなどで構成されています。これらの表現でお客様が受け取る印象を演出できます。

まず、形でいうと四角よりも丸が柔らかく見えます。たとえば、整体院さんでも、ゴリゴリしない、痛くない施術タイプならば、四角いだけの看板よりも、大きな丸や柔らかな雲形を取り入れた看板がふさわしいでしょう。

色には、メッセージが含まれています。赤なら、情熱や元気、それとは逆に、値引き、損失、血といったメッセージが読み取れます。赤い看板は多くの場合、遠くからも目を引いて好ましいものです。でも、もし歯科医院であれば、血を思い起こす赤よりも、優しくて健康的な緑や水色のほうがふさわしいでしょう。

文字の形も、かっちりしたゴシック体、落ち着きのある明朝体、太い文字は自信の表われ、細い文字なら上品でおしゃれな印象を与えます。和風の筆文字も書体によって、風格を出したり、温かみを出すことができます。高級和食屋なら、しっとり細筆の文字、ラーメン屋ならば、荒々しく勢いのある太文字が似合いますよね。

看板に写真やイラストがあると、文字だけよりも目を引く効果があります。イラストはソフトな印象で想像がふくらむし、写真を使った看板なら、シャープで直接的に訴える力強さがあります。

このように看板は、お店のイメージを自在に表現できます。あなたのお店は、看板でどんな表現をして、どんなお客様を引き寄せますか。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)
入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則
佐藤玲子(さとう・れいこ)
オフィスアールエス代表。店舗の見せ方アドバイザー国立岐阜高等専門学校建築学科卒。建築設計事務所勤務の後、専業主婦のときに、趣味の手芸品を販売する中で、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を知り、売場塾®へ入塾。建築設計とVMDの親和性を強く感じ、2010年11月、オフィスアールエスを開業。VMDのフレームワークをもとに、脳の働きや身体の動き、購買心理、色の仕組みなどを多角的にとらえた独自の見せ方「ミセヂカラ®理論」で、さまざまな業種の店舗、催事売場・展示会ブースを提案。各地の商工会・商工会議所の経営支援の専門家としても、相談や提案を行なう。再現性を重視した社員研修・商工会セミナーは、「わかりやすい、すぐに実行できる」と好評。二級建築士、VMDインストラクター。

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