本記事は、佐藤玲子氏の著書『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています

入りやすい店4つの条件

ドアマット
(画像=Andy Dean/PIXTA)

人は、初めての場所では、本能的に身の安全を考えて警戒心を持ちます。新規のお客様が、お店の前で「入ろうか、やめようか」とためらう気持ちも同じです。

この警戒心を解くには、以下の4つの方法があります。

●開放感

入店前に、ウインドウからお店の中まで見えると、店内の様子がわかり安心できます。ドアが開いているのも、「どうぞお入りください」と歓迎されているように感じます。

また、入店までの動きをさまたげないよう、入口まわりに障害物を置かないことも効果があります。ドアの横の傘立てやA型看板などが、お客様の出入りを邪魔していないかをチェックしましょう。

●照明

人は、暗い場所よりも明るい場所のほうが安心して入っていくことができます。お店の中でも、とくに奥の壁を照らすと、全体が明るく感じられるようになります。簡易な照明をひとつ増やすだけで、新規のお客様への印象がアップします。

●統一感

人は、規則性があるものに安心し、好感を持ちます。外から見えるお店の中も、統一感があると目を引き、興味を持たれやすくなります。そのためには、什器を揃えたり、商品を整列させることが重要です。また、同じ形式のPOPを、同じ高さに掲示するのも、お店の中を統一して見せます。

●動き

店内に人の動きがあると、それに誘われて入店しやすくなります。また、スタッフが作業に動き回っていると、注目されにくいと感じて、安心して入店することができます。「入りやすさ」は、お店の工夫でも演出することができるのです。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

ドアマットどうする問題

お店の入口によく置かれているドアマットは、ドアの外側と内側、どちらに置いたらよいのでしょう。たくさんのお店を訪問していると、ときどき置き方に迷っているお店があり、適切に置かれていないマットも目につきます。

ドアマットの置き方に、正解はあるのでしょうか。

●外側が適している場合

マットの主な役割は、出入りするときに靴底の汚れを、店内に持ち込まないようにするためですから、ドアの内外、どちらにあってもよいわけです。

しかし、外に置くべきお店があります。それは全面ガラス張りなどで、一見して出入口がわかりにくいお店です。マットが置かれることで、そこが出入口だとはっきりとわかります(下図参照)。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

テナント店舗で、お店の前面が広く開放されている場合も同じです。入口部分にマットを置くことで、お客様の出入りをそちらへ誘導することができます。

引き違い戸の片側だけを出入口に使いたい場合にも、マットが「こちらから入ってね」というサインになります。

●内側が適している場合

マットが内側にあるほうがよいのは、出入口まわりに段差がある場合です。マットのほうに目が行ってしまって、段差を見落とす心配があります。高齢のお客様がつまずかないための配慮も、今後よりいっそう重要になってきます。

マットを外に置くと雨が当たって濡れてしまう場合も、かえって不快な印象になってしまいます。

また、マットによって間口が狭く見えてしまうと、新規のお客様には入りにくく感じます。

もし、どちらが適しているか迷うときは、一度「お客様はどうだろう?」と考えてみてください。

これは、ドアマットに限ったことではありません。いつも、答えはお客様が教えてくれるのです。

事例 カフェE店の話

カフェE店から、集客の相談があったときの話です。E店は、お店の前面に駐車場があり、通行車両から見えにくい位置にありました。また、窓ガラスが反射して店内の様子が見えず、営業しているかどうかの判断がしにくい状態でした。

路面看板やメニュー紹介の懸垂幕など、改善点はいくつかありましたが、なかでも効果的だったのは、店頭のテーブルと椅子の改善でした。

もともとは、ガーデン用の丸テーブルセットが置かれていました。オープンカフェの開放感を連想させるよいアイテムです。

しかし、設置するときは椅子の向きがポイントになります。テーブルに向き合う椅子は「ゆったりと親密な場」を連想させます。一方、テーブルに横並びの椅子は「オープンに受け入れる」印象になって、気軽に入りやすく感じられます(下の写真参照)。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

そこでE店でも、椅子の向きを道路側に向けるように変更しました。

さらに、椅子が黒色で目立たなかったので、店内からピンクとグリーンの椅子を持ち出して交換しました。

この椅子が、遠目からも目立つ色で、営業中の目印になり、入りやすさがアップしました。

その後、「椅子の店」と認識されて、新規のお客様からも、「バスの中から見て気になっていた」との声が聞かれるようになりました。

店頭の椅子の向きや色でも、入りやすさを演出することができます。

あなたのお店でも、店頭に椅子やベンチを置いて、お客様にウェルカム・メッセージを伝えてみませんか。

入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則
佐藤玲子(さとう・れいこ)
オフィスアールエス代表。店舗の見せ方アドバイザー国立岐阜高等専門学校建築学科卒。建築設計事務所勤務の後、専業主婦のときに、趣味の手芸品を販売する中で、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を知り、売場塾®へ入塾。建築設計とVMDの親和性を強く感じ、2010年11月、オフィスアールエスを開業。VMDのフレームワークをもとに、脳の働きや身体の動き、購買心理、色の仕組みなどを多角的にとらえた独自の見せ方「ミセヂカラ®理論」で、さまざまな業種の店舗、催事売場・展示会ブースを提案。各地の商工会・商工会議所の経営支援の専門家としても、相談や提案を行なう。再現性を重視した社員研修・商工会セミナーは、「わかりやすい、すぐに実行できる」と好評。二級建築士、VMDインストラクター。

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