本記事は、佐藤玲子氏の著書『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています
直感に訴える看板
パッと見てわかりやすい表現が好まれているというお話をしました。
看板も写真を使うと、一瞬のうちに直感で受け取れます。とくに飲食物では、おいしそうな大きな写真があると、ストレートに伝わります。路上でメニュー紹介する黒板でも、ラミネートした写真を一緒に貼るとわかりやすいものです。
パンのイラストがあるだけで、そこがパン屋だと伝わるように、イラストも写真同様の効果があります。ピクトグラムのような、単純化されたイラストほど目立って伝わりやすいと言えます。(下図参照)
同じイラストでも、デッサン風の細やかなタッチのものは、遠目からはぼやけてしまいます。この場合はイメージの演出役として、使い分けるとよいでしょう。また、駐車場を示す「P」や、トイレのマークのようなピクトグラムも、直感に訴える便利な記号です。
看板の中でも、のぼりは直感に訴えかけてくる存在です。人の目は動くものに反応するので、のぼりが風にはためいていると、とても注目されます。
路面店で、通行する車にのぼりを見せる場合は、必ず3本以上同じデザインのものを車道際に並べて設置しましょう。すると、のぼりが遠方から見て大きな色のかたまりに見えます。小さいものより大きいもののほうが、気づかれやすいものです。近寄って来たときに同じものが並んでいれば、文字も読み取りやすいでしょう。
もし、のぼりを徒歩で通行する人に向けるのであれば、お店の入口脇に設置します。お客様が気づいてすぐ入店できるよう、入口を知らせる役割をしてくれます。お店の前が駐車場の場合、道路際に3本と入口脇に1本、このセットで置くと、車を止めてから入店まで、スムーズに案内できます。
あなたのお店でも、直感に訴えて伝える看板を、集客ツールとして上手に使いましょう。
その看板、お客様に見えていますか?
街を歩きながら看板をながめていると、近くの看板の文字が読み取れなかったり、遠くの看板なのに目立ってよく見えたりすることがあります。あなたのお店の看板は、お客様からどのように見えているでしょうか。
看板の文字の読みやすさは、大きさやフォント、色使いが関係します。
文字は、大きいほど遠くから見えますが、どれくらいが適当なのかの指標があります。国土交通省の「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」です。駅の案内表示板などの文字の大きさを決めたもので、両眼で見て、視力0・5の人が一定距離離れた場所からでも看板の文字を視認できるよう、必要な文字の大きさを定義しています(下の表)。看板の文字でも、これを最低限の大きさとして参考にできるでしょう。
一般に、視認性の高いフォントは、ゴシック体系列だと言われています。高速道路の標識にも使われていますから、幹線道路沿いの案内看板にも向いています。しかし、同じゴシック体系列の文字でも、字体が太すぎたり、字間が狭すぎたりすると、判読しにくくなります。明朝体系列のフォントは、上品で高級感のある印象ですが、字体が細いので視認性の面ではやや劣ります。使用する場面によって使い分けるとよいでしょう。
色使いでも、看板の地の色と文字の色のコントラストが近いと判読しにくくなります。たとえば、薄い水色の地に薄いピンク色の文字では、全体が弱くてぼやけてしまいます。濃い緑の地に真っ赤な文字の組み合わせのときは、コントラストが強すぎてハレーションを起こします。このようなときは、文字に白や黒の縁取りをすると改善できます。また、写真の上に文字を重ねるときも、文字に縁取りすると読みやすくなります。
ユニバーサルデザイン(健常者・弱視者とも使いやすい)では、フォントのUD書体があります。色使いについては、カラーユニバーサルガイドがあります。見えやすさの点で、参考にされるとよいでしょう(下図参照)。
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