本記事は、佐藤玲子氏の著書『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』(同文舘出版)の中から一部を抜粋・編集しています

見た目で売れる

映え,フルーツサンド
(画像=ゴスペル/PIXTA)

2017年の流行語大賞に、「インスタ映え」が選ばれて以来、「映える」という言葉が普通に使われるようになりました。SNSに投稿する写真が見映えする、おしゃれに見えることが、重要視される時代です。

みなさんもご存じのタピオカミルクティをはじめ、クリームソーダやフルーツ山盛りのパフェやサンドウィッチなどが「映える」と、SNSに写真がたくさん投稿されています。

しかし一方で、「よいものなのに売れていない」という事例を、私もこれまでいくつも見てきました。その原因の多くは、見た目にあります。売れるものとは、「よい物」であるだけでなく、「よい物で映えるもの」なのです。

私の友人の店は、地域物産品を仕入販売するかたわら、オリジナル商品を開発して販売しています。あるとき、ひとつの商品のパッケージを「映える」デザインに変えたところ、以前の8倍も売れるようになっています。もともと、中身の味や機能はたしかなものです。

しかし、小さなお店のオリジナル商品ですから、自店でのみ細々と販売していました。それが、見た目を変えたことで、お客様が興味を持ってくれる機会が増えたのです。お客様の反応の変化が、初めての販路開拓の自信につながったそうです。彼女の営業努力が実り、その商品は東京のカフェや有名観光地などでも取り扱われるようになりました。見た目で自信を得て、行動につながって売れるようになったのです。

この話を聞いてから私は、見た目や見せ方にいっそうの興味を持つようになりました。

あなたのまわりには、よいものなのに売れていないものはありませんか。あるいは、似たものなのに片方は売れて片方は売れていないといったことはないでしょうか。

それはもしかしたら、見た目の違いかもしれません。

同じ商品でも見せ方の違いで、伝わり方が変わります。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

視覚で誘導するVMDの仕組み

見せ方には基本の型があります。それが、VMD(ビジュアルマーチャンダイジングVisual Merchandising)です。

この言葉は、主にデパートやアパレルで使われてきたので、なじみのない方もいらっしゃるかと思います。VMDとは、お客様が商品を理解し選択して購入するという、一連の流れを想定して売場をつくる技術のことです。

私が、研修でよくたとえに出すのは、ユニクロの売場です。みなさんも下の図を見ながら、少し思い出してみてください。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

ユニクロの店舗入口付近には、複数のマネキンが並んでいます。これは、広告とも連動した、今一番売り出したい季節商品で、自然とお客様の目を引くようになっています。店内全体を眺めてみると、壁面や柱の高い位置にもマネキンやハンガーに掛けられた見本の服が見えます。これで店内が、男性用・女性用・キッズ用の3つの売場に分かれていることがわかります。

それぞれの棚にも、商品紹介のマネキンがあり、上着・シャツ・パンツといったアイテムごとに陳列されています。よく見ると、色違い・型違いの商品が隣り合っているので見比べやすくなっています。商品を取り出してみると、個々にサイズ表示がついています。

この仕組みがあることで、ユニクロではお客様がほしい商品を、自分で見つけて選んでレジへ持って行くことができます。

しかし、この仕組みは特別なものではありません。マネキンの代わりに、同じ役割をするものがあればよいのです。たとえば路面店であれば、気づいてもらう役割は看板です。入口に商品を積み上げて、大きなかたまりに見せて、目立たせることもできます。

あなたのお店の商品やサービスでも、お客様の動きに合わせ、何をどこでどのように見せるかを工夫することで、VMDを実現できます。

購買心理とVMD

実はVMDの型は、買い物をするお客様の気持ちと行動にぴったりと重なります。

購買心理の動きを明らかにしたのは、アメリカの広告研究者セント・エルモ・ルイス氏で、1898年のことです。ルイス氏は、お客様が何か商品・サービスを買おうとするときの気持ちの動きを、

・Attention(商品に気づく)
・Interest(商品の訴求に興味を持つ)
・Desire(商品への欲求を感じる)
・Action(行動を起こす)

この4つに切り分けました。それぞれの頭文字を取って、「AIDAの法則」と呼ばれています。その後に、さまざまな研究や時代の流れがあって、Memory(記憶する)を加えたAIDMAや、Search(検索する)とShare(拡散する)を加えたAISASなどへ派生しましたが、100年以上たっても、基本の型に違いはありません。

このAIDAの法則に、前章のVMDの図を重ね合わせてみましょう。下の図のように、それぞれの役割が重なります。あなたのお店でも、

・どこでお店に気づいてもらうのか
・どうしたら、入店しやすくなるのか
・どのように、店内をまわってもらうのか
・どのように、商品を見比べて選びやすくするのか

を、この購買心理に沿って整えていきましょう。

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(画像=『入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則』より)

お客様をスムーズに引き込むためには、その逆側から整えていくことが重要です。上の図の両端の矢印の向きを、よくご覧ください。

VMDは、商品の見せ方に、買物の心理や、身体や目の動きに沿った流れを味付けする技術です。どんな業種であっても、お客様にとって入りやすい、選びやすい、買いやすいお店にすることができます。

入りやすい 選びやすい 買いやすい 売場づくりの法則
佐藤玲子(さとう・れいこ)
オフィスアールエス代表。店舗の見せ方アドバイザー国立岐阜高等専門学校建築学科卒。建築設計事務所勤務の後、専業主婦のときに、趣味の手芸品を販売する中で、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を知り、売場塾®へ入塾。建築設計とVMDの親和性を強く感じ、2010年11月、オフィスアールエスを開業。VMDのフレームワークをもとに、脳の働きや身体の動き、購買心理、色の仕組みなどを多角的にとらえた独自の見せ方「ミセヂカラ®理論」で、さまざまな業種の店舗、催事売場・展示会ブースを提案。各地の商工会・商工会議所の経営支援の専門家としても、相談や提案を行なう。再現性を重視した社員研修・商工会セミナーは、「わかりやすい、すぐに実行できる」と好評。二級建築士、VMDインストラクター。

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