シンカー:おはよう寺ちゃんの会田の経済分析(加筆修正済み)
【アーカイブ放送のYoutubeリンク】 https://youtu.be/VjM1CGuHX4s (12月31日放送分)
問:今年最後の取引となる大納会を迎えたきのう、日経平均株価の終値は前の日に比べて115円17銭安の2万8791円71銭となりました。
※今年は新型コロナウイルスワクチン普及やアメリカの大型経済対策への期待を背景に、2月には3万円の大台を回復した
※その後、コロナ変異株への懸念などから一進一退が続いたが、年末としてはバブル経済最盛期の1989年の3万8915円87銭以来32年ぶりの高値だった
※今年の株価を振り返ってみて、どういうことを感じていますか
答:昨年末との対比では5%の上昇となりました。
新型コロナウィルスの問題は引き続き経済活動を抑制していますが、ワクチンを含めた対策などで過度な不安感は抑制されてきました。
ウィルスと共存しながらの経済活動の再開も模索されてきました。
金融政策と財政政策は、引き続き緩和していて、景気が下振れることを防いでいます。
ただ、欧米の経済活動再開と円安、そしてデジタル化の恩恵を受けた企業と、対面サービスを中心に感染拡大抑制策の大きな負担を受けた企業との大きな業績の差が生まれました。
問:今年後半の日経平均株価は、上値の重い状態が続きました。
※菅前総理の退陣表明をきっかけに9月8日に3万円の大台を一時回復したものの、その後、岸田総理の口から飛び出した金融所得課税強化発言などによって、2万7000円台まで急落して、「岸田ショック」と揶揄された
※来年は自動車のリベンジ生産が期待されている中、株価はどういう展開になるとみていますか?
答:来年の株価を左右するポイントは三つです。
一つ目は、当然ながら、新型コロナウィルスの問題を乗り越え、経済活動を正常化できるかです。
二つ目は、円安です。円安は日本経済にとってポジティブな動きですが、今年は原油高と同居したため、コスト上昇が意識されてしまいました。
来年は、日米の金利差の拡大による更なる円安が、経済活動の再開と原油価格の安定で、前向きに評価されるかに注目です。
三つ目は、岸田内閣の新しい資本主義の政策がマーケットにしっかり理解されながら、より前に進めるかです。
新しい政権による新しい政策哲学はマーケットの誤解などで警戒感を生んで、最初は拒絶されることになります。
分配と成長の好循環は正しい方向性ですから、マーケットの理解が深まるとともに、追い風になってくるでしょう。
問:去年に引き続き日本経済は新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。
※特に第5波では変異株であるデルタ株が猛威をふるい、ピーク時には全国で1日に2万5000人を超える新規感染者が確認された
※また、首都の東京では、元日から9月末までのほとんどの期間で「緊急事態宣言」か「まん延防止等重点措置」が発出された
※実質GDPをみてみると、1~3月期はマイナス、4~6月期はプラス、7~9月期はマイナスといった風にプラス成長とマイナス成長を繰り返した
※飲食業と宿泊・旅行業が大きな打撃を受けたわけですが…、今年の日本経済の動きについてはどうご覧になっていますか?
答:OECDの予測によると、今年の実質GDP成長率は、米国の5.6%、ユーロ圏の5.2%に対して、日本はわずか1.8%と、経済活動の再開が大きく出遅れました。
夏場の感染拡大による緊急事態宣言の延長で、企業と家計の体力が限界に近づく中、バラマキ批判などの安全圏からの優しさのない強者の論理がまだ支配的で、財政政策の拡大による支援が大きく遅れたのが痛恨でした。
問:では、2022年の日本経済はどうなるのでしょうか?
※年明けに期待されていることに「リベンジ消費」がある
※また、政府の観光需要喚起策「Go To キャンペーン」が早ければ来年1月中旬から2月にかけて再開すると言われている
※オミクロン株への警戒感もある中、条件が揃えばそれなりにしっかりした景気回復は期待できるのでしょうか?
答:大きく遅れましたが、56兆円規模の経済対策を含む補正予算が成立しました。
困窮世帯への支援は全く足りず、支援はもっと中間層へ広げるべきですが、一定の効果は生まれると考えます。
OECDの予測によると、来年の実質GDP成長率は、米国とユーロ圏は減速するとみられますが、日本はこれから経済活動の再開と経済対策の効果が出ることで3.4%に加速することになります。
日本だけ加速するということが、日本の株式市場が欧米の上昇に追いついていくきっかけになると考えます。
問:ただ、アメリカやヨーロッパではインフレ懸念が強まっているほか、中国景気はもう1段の減速が懸念されています。
※こうしたことによる影響についてはいかがですか?
答:欧米の5%のインフレはやはり一時的ですが、これまでの1%台には戻れず、2-3%の水準に落ち着いていくと考えられます。
欧米の中央銀行の物価目標をやや上回りますが、それでも、ゆっくりとした金融政策の調整になると予想されます。
中国は、習近平国家主席の三期目を目指す動きの中、行政指導でインフレを抑制しながら、財政政策で成長率を支えるとみられます。
グローバルに景気が崩れていくことにはまだならないとみています。
問:政府は来年度の日本経済の成長率について、実質でプラス2.2%程度としていたこれまでの見通しをプラス3.2%程度に引き上げました。
※日本でも原材料費の高騰が懸念されている中、 来年の経済、どういう部分に注目していますか?
答:岸田内閣の新しい資本主義の分配と成長の好循環がマーケット理解され、政策としてより具体化されていくかです。来年夏の参議院選挙の前までには、グリーン、デジタル、そして経済安全保障を中心とした政府の成長投資を含む、追加経済対策が実施されるとみています。今回の経済対策は分配中心でしたが、成長投資も加わることで、マーケットの理解も深まり、来年度の成長率は4%に達する可能性もあるとみています。
【番組紹介】
文化放送 「おはよう寺ちゃん」 月~金 5:00~9:00
パーソナリティ 寺島尚正
コメンテーター 会田卓司(金曜日レギュラー出演)
【会田の出演日時】
金曜日 6:00-7:30
【ニュースコメント】
▶大納会 32年ぶり高値
▶世界株 時価総額伸び最大2000兆円
▶英仏で新規感染者過去最多更新
▶RCEPあす発効 中韓と初協定
▶年越しお札 過去最高121兆円
岡三証券チーフエコノミスト
会田卓司
岡三証券エコノミスト
田 未来
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