マンション経営をしている大家さん、もしくはこれからマンション経営を始めたいとお考えの方にとって、家賃は重要な収入源です。家賃は適正に設定することはマンション経営の成否に大きく関わってきます。そこで本稿ではマンション経営の戦略上、きわめて重要な「家賃の設定方法」について解説します。マンション経営の収益を安定化させ、末永くマンション経営を成功させたいとお考えの方は、ぜひマスターしていただきたい知識です。
1.マンション経営の家賃を設定する方法
マンション経営の家賃を設定する方法について、基礎知識として押さえておいていただきたい知識をまとめました。
1-1.「欲しい家賃」=適正家賃ではない
賃貸住宅の大家さんというと、どんぶり勘定で「欲しい家賃」を設定しているのではないかと思う方は多いかもしれません。以前はそんな大家さんもいたと思いますが、今どきのマンション経営にどんぶり勘定はほとんどありません。
「欲しい家賃」を設定しているだけだとそれが適正ではなく、入居者がつかないために稼働率が下がってしまったり、逆に満室経営なのに利益が出ないといったことが起こります。
適正家賃がいくらなのかを知り、それを設定することがマンション経営の成功には欠かせません。
1-2.経営優先で家賃を設定する方法
「欲しい家賃」を設定するものではないといわれても、やはり自分の思う家賃のイメージどおりにしたいと思う方は多いでしょう。
そこでマンション経営の収益優先で家賃を設定するための計算式を紹介します。その計算式は、以下のとおりです。
(元本価格×期待利回り+年間諸経費)÷12 =収益目標に必要な家賃
ここにある元本価格とは、マンションの取得価格のことです。
マンション物件を取得する価格にどれだけの利回りを望むのか(期待利回り)を掛け、そこに物件を維持管理するための年間費用を足したものを12で割ると、毎月の必要な家賃を求めることができます。
それでは、実際に計算してみましょう。
物件価格が3,000万円、期待利回りは5%、年間の諸経費は50万円と想定してみます。
(3,000万円×0.05 +50万円)÷12=16万6,666…円
3,000万円の物件で毎年5%の利回りが欲しいと思ったら、諸経費も考慮して毎月約16万7,000円の家賃を設定する必要があることがわかりました。
あくまでもこれは「欲しい家賃」に近いものなので、この家賃設定が市場の相場から見て適正かどうかは別の話です。
以降は市場の相場をチェックしつつ競争力のある家賃設定をする方法について解説していきます。
1-3.競合物件を考慮して家賃を設定する方法
「欲しい家賃」ではなく、入居者から選ばれる家賃に設定するには競合物件を調査するのがとても重要です。
「SUUMO」や「アットホーム」などの不動産ポータルサイトを使えば所有している物件の近隣物件をすぐに探すことができます。
SUUMO
https://suumo.jp/
athome
https://www.athome.co.jp/
近隣で築年数や広さなどの条件が似ている物件の家賃がいくらに設定されているのかを見て、その家賃と同等に設定するのがセオリーです。
ただし、ポータルサイトで調べることができる家賃はオーナーが「欲しい家賃」を提示しているだけの可能性もあります。
提示されている家賃ではなく、成約家賃を競合調査する必要があるわけですが、それについては後述します。
1-4.家賃はいつ設定するべきか
マンション経営を始めたら、家賃はいつ設定するべきなのでしょうか。
理想的なのは、マンションの購入前です。購入前の収支シミュレーションで「欲しい家賃」と適正家賃を知り、それが納得できるものだけを購入するべきです。
このシミュレーションの段階で採算が合わない、適正家賃に現実味がないといった結果が出たのであれば、「買わない選択」をすることで失敗を回避できます。
2.家賃を決める5大要素
賃貸マンションの家賃は、どうやって決まるのでしょうか。家賃の設定に影響を及ぼす5大要素があるので、それを1つずつ解説します。
家賃を設定するために必要な5大要素
1.立地条件
2.物件が持つ集客力
3.周辺環境
4.需要
5.特別な魅力
2-1.立地条件
「不動産」というだけあって、不動産は動かない資産です。それだけにマンションが建っている場所つまり立地条件は家賃を決める最大の要素です。
どのエリアにあるマンションなのかも重視されますし、それぞれのエリアのなかでも最寄駅からの距離、利便性などによって家賃は変動します。
これと同じ構図になっているのが、コインパーキングです。
便利な場所にあるコインパーキングは駐車料金が高いですが、不便な場所や入出庫が難しい場所にある駐車場はその分料金が安く設定されていることにお気づきの方は多いと思います。
マンションの家賃にも同じことがいえるので、立地条件は家賃を設定するのにあたって最も影響の大きい要素であることを押さえておいてください。
2-2.物件が持つ集客力
入居者はマンションを選ぶのにあたって、自分が住んだときにどんなメリットが得られるのかをシビアに精査しています。
その物件が持つ集客力、つまり優位性があれば家賃を高く設定できますし、それがない場合は家賃の安さで勝負する必要があります。
それでは、入居者が重視するマンションの魅力にはどんなものがあるのでしょうか。以下の項目を比較検討されることが多いので、これらの項目に優位性を持たせることをイメージしてください。
・築年数
・間取り、広さ
・部屋の階数や方角
・設備(エアコン、床下暖房、浴室乾燥、IHヒーター、インターホンなど)
・水回り
・宅配ボックスの有無
・防犯性能
・駐車場、駐輪場
いかがでしょうか、ご自身がマンションを借りようと思うときに何をチェックするのかを考えると、上記のような項目になると思います。
特にマンションは他の住宅と比べると利便性が高いので、設備の充実度を重視する入居が多い傾向があります。これらの項目で優位性があると思える数が多ければ多いほど、家賃を高く設定しやすくなります。
2-3.周辺環境
前項で挙げた項目はいずれも、マンションの内的要因です。次に家賃を決める要素として考慮したいのが、外的要因です。そのマンションが建っている場所の周辺環境のことです。
スーパーやコンビニなど生活に必要なものがしっかり揃っているか、ファミリータイプのマンションであれば学校や公園などが近くにあるかといったことに加えて、今どきのマンション選びでは治安が重視されるようになっています。
最寄駅からのルートに暗い夜道になるような場所があると家賃設定に悪影響を及ぼします。また、廃墟のようになってしまっている空き家などの建物があることも、浮浪者が住み着いたりするリスクや火災の火元になってしまうリスクがあるためマイナス要因といえます。
2-4.需要
マンションの家賃も他のさまざまな商品やサービスと同じように、市場原理によって決められます。いくらで買ったマンションなのかは入居者にとって関係のないことで、あくまでも家賃を決めるのは需給のバランスです。
この基本を踏まえたうえで優位性を多く持たせることがマンションの家賃下落を防ぎ、高く設定することも可能になります。
2-5.特別な魅力
マンション物件に特別な魅力があることも、家賃に影響を及ぼします。以下のような特別感を持たせているマンションは実在しますが、これらはすべて戦略的に設けられたものです。
・女性専用マンション
・ペット飼育可
・防音設備
・無料Wi-Fi
こうした特別な魅力があるマンションは、それぞれの事情に関わりがある人たちにとっては数少ない選択肢になり得ます。
3.家賃を設定する際のコツと注意点
所有物件に家賃を設定する際に知っておくと便利なコツと、注意点について4つの項目で解説します。
家賃設定のコツと注意点
1.類似物件との比較は「成約家賃」に注目しよう
2.ネットでの検索を意識しよう
3.相場への理解を深めよう
4.家賃の現実を真摯に受け止める
3-1.類似物件との比較は「成約家賃」に注目しよう
先ほど不動産ポータルサイトを使って類似物件、競合物件の家賃を調査する方法を解説しました。しかしそこで成約家賃をベースに考える必要があります。
いつ見ても同じ物件がずっと表示されているような場合、その物件は家賃設定が不適切で入居者がついていない可能性もあるため、不人気物件を参考にすることはありません。
不動産ポータルサイトには、成約家賃をベースに全国各地の家賃相場を検索できる機能があります。この機能は実際に成約した家賃をベースに集計されているので、家賃設定の際には参考にすることができます。
3-2.ネットでの検索を意識しよう
今どきの入居者は、ほとんどの人がネットで物件情報を検索しています。
ネットで良さそうな物件を見つけたら問い合わせをして、問い合わせをした不動産会社に案内されて物件を内覧するといった流れになります。こうした部屋探しの流れを意識して、ネット検索で生き残るための家賃設定を意識したいところです。
3-3.相場への理解を深めよう
家賃を決める権限を持っているのはオーナーですが、その権限は適切に使わないとマンション経営失敗の原因になってしまいます。
家賃の設定においては「自分が欲しい家賃」よりも相場を重視することがとても重要で、入居者がついているときであってもこまめにネットで検索して競合物件がどんな条件の出しているのかをチェックしましょう。
家賃は同じであっても「敷金ゼロ」にしている物件が人気を集めている可能性もあるので、相場と競合の調査をこまめにすることはマンション経営の成功につながります。
3-4.家賃の現実を真摯に受け止める
「欲しい家賃」に設定したい誘惑はとても大きいのですが、先ほども述べたように実質的に家賃を決めるのは市場の相場です。
新築時は高い家賃を設定できたマンションであっても、築年数が数十年となってくると家賃を低く設定しなければ入居者がつきにくくなる場合もあります。
相場と家賃の現実を真摯に受け止めて、柔軟に対応することが重要です。
4.相場と正しく向き合うことが重要
マンションの家賃はどうやって設定するべきか?どうやって決まっているのか?といった疑問にお応えするための情報を解説してきました。
マンションの家賃設定は奥が深く、緻密に計算されているものだとご理解いただけたと思います。
「欲しい家賃」にこだわりすぎず、相場と正しく向き合うことで導き出された適正家賃は、マンション経営の長期的な安定に欠かせない「武器」なのです。
(提供:Dear Reicious Online)
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