日本円以外の通貨で預金する外貨預金。為替変動による利益や金利も魅力だ。特に為替変動により大きな利益が出た場合は利益を確定したいと考える方も多いだろう。利益を確定したときには税金が発生するが、外貨預金は一般的な円預金とは課税の仕組みが異なることはあらかじめ知っておこう。そこで本記事では、外貨預金で利益が出る仕組み、利益が出た場合の税金の種類や申告の必要性などについて解説する。
外貨預金で得られる利益とは?
税金について述べる前に、まず外貨預金ではどのような利益を期待できるのか確認しておこう。
預金利子
一般的な銀行預金同様に、外貨預金もあらかじめ決められた金利で「利子」が付与される。例えば年利5%の米ドル預金に1万米ドル預けた場合、1年後に500米ドル(1万米ドル×5%)の利子が付与される。
為替差益
外貨預金は、外貨で預け入れるが、その際円貨を外貨に換金して預け入れ、払出時には外貨を円貨に換金して受け取るのが一般的だ。この2つの換金タイミングで、為替レートが預入時よりも払出時に円安になった場合に得られる利益が為替差益だ。先の例のように米ドル預金の場合で考えてみよう。
預入時の為替レートが1米ドル=150円、払出時のレートが1米ドル=170円だとしよう。預金額が1万米ドルだとすると、円換算では以下の金額になる。
- 預入額:150万円(1万米ドル×150円)
- 払出額:170万円(1万米ドル×170円)
為替レートは、20円分円安になっており、20万円の為替差益を得られる計算になる。もちろん為替がどのように動くかはわからず、逆に払出時に円高となる可能性もある。この場合は、損失を被ることになるが、これを為替差損という。ちなみに外貨預金の種類によっては、外貨でそのまま払い出しできるものもある。この場合は、円貨に換金していないため、為替差益(差損)は発生しない。
外貨預金にかかる税金は2種類
外貨預金で2種の利益を期待できることを確認したあとは、税金の確認をしていこう。これらの2種の利益では、それぞれにかかる税金の種類が異なる。
利子にかかる税金
外貨預金の利子は、日本円と預金同様に「利子所得」となり、利子が支払われる際に20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金分が源泉徴収される。
為替差益にかかる税金
為替差益は「雑所得」に分類され、総合課税の対象となる。詳しくは後述するが、雑所得は利子所得のようにあらかじめ決まった税率で源泉徴収されるものではない。給与所得など他の所得と合算した課税所得の額によって税率が決まる。
そのため、あらかじめ利益の何%分が税金となるのかを確認することは難しい。総合課税の所得税は「累進課税方式」が適用され、課税所得額が多いほど税率も高くなることは知っておくといいだろう。なお為替差益にかかる税金は、実際に払い出し(換金)した場合にかかる。そのため、含み益(外貨預金にそのまま預けている状態)にはかからない。
為替差益(雑所得)にかかる税金はどれくらい?
すでに述べたとおり、為替差益は雑所得に分類され、他の所得と合算、各種所得控除を差し引いた課税所得がいくらになるかで最終的な税率および税金額が決まる。ここでは、自分で目安を立てやすいように計算ステップを紹介しよう。
雑所得の計算
雑所得とは、利子所得や給与所得、事業所得など、所得税法で定められた9種の所得のどれにも当てはまらない所得である。為替差益以外にも、公的年金等収入、アフィリエイトによる収入、暗号資産の利益など雑所得になる収入は少なくない。つまり為替差益を得た年に他にも雑所得がある場合は、すべてを合計することが必要だ。
なお他の外貨預金や外国株式で為替差損が出ていたり、暗号資産などで損失が出ていたりする場合は雑所得から損失分を差し引ける。その分、課税対象となる雑所得が少なくなるため税金の軽減につながる。
総合課税の仕組み
総合課税とは、以下に該当する複数の所得を合算して総所得金額を求め、その金額から税額を計算する課税方式のことだ。人によって各所得の有無は異なるが、該当するものがあればすべてを合算しよう。
- 利子所得(源泉徴収課税となるものを除く)
- 配当所得(源泉徴収課税および申告分離課税を選択したものを除く)
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得(不動産および株式等の譲渡所得を除く)
- 一時所得(源泉徴収課税となるものを除く)
- 雑所得
ちなみに給与所得は、給与から税金が天引きされるため、年末調整で課税関係は完結可能だ。しかし他の所得があり確定申告する場合は、給与所得も合算が必要となる。
所得税計算の仕組み
為替差益(雑所得)と他の所得を一定の方法により合計したものが総所得金額である。そこから基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除などといった所得控除の合計額を差し引けば課税総所得額が算出可能だ。課税総所得額に応じた税率を乗じれば1年間の税額を計算できる。
外貨預金に確定申告は必要?
外貨預金では、利子所得と為替差益(または為替差損)が発生するが、利子所得は税金が源泉徴収されるため、自ら申告する必要はない。一方、為替差益が発生した場合、原則として確定申告が必要になる。
前述した1~12月までの「雑所得計算」「総所得金額計算」「課税総所得金額」のステップで所得税(および復興特別所得税)の額を計算し、申告・納付手続きを進めていこう。
確定申告が不要なケースも
確定申告が不要なケースもある。以下のいずれかに該当する場合だ。
- 年収2,000万円以下の給与所得者で、外貨預金の為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下
- 年金収入が400万円以下の年金所得者で、為替差益を含めた年金所得以外の所得が年間20万円以下
- 年間のすべての所得合計が48万円以下
ここで注意が必要なのが、メインとなる所得(給与や年金など)および外貨預金の為替差益のほかにも収入がある場合だ。前述したように雑所得は、為替差益以外にもさまざまなものがあり、総合課税として他の所得と合算する必要がある。その結果として、給与あるいは年金以外の所得が20万円超となった場合は申告が必要だ。
例えば、給与所得800万円の人が外貨預金の為替差益15万円を得たとしよう。確定申告は不要に思えるが、同じ年に副業で6万円の所得があった場合は、20万円(15万円+6万円=21万円)を超えるため確定申告が必要だ。
確定申告が不要であれば、結果的に為替差益に対する所得税はかからない。しかし住民税は、原則として発生するため、別途申告(申告期限までに各市区町村宛)が必要だ。意外と忘れられがちであるが正しく申告するようにしよう。
外貨預金の為替差益にかかる税金の正しい知識をつけておこう
為替差益は、雑所得に区分され、他の雑所得および他の種類の所得と合算する総合課税方式が適用される。原則として確定申告が必要だが、例えば会社員で給与所得と為替差益の他に所得がなく、年間の為替差益が20万円以下であるなど一定要件を満たす場合は申告が不要となり為替差益に対する税金は発生しない。
なお、20万円をラインとした申告要否の判断が必要なのは、為替差益が確定した年(引き出しなどをした年)である。預金のまま保有している場合の含み益には課税されないため、他の所得の状況を見ながら利益を確定させるか判断することも一つの方法といえるだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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