カルテルに関するQ&A

Q.カルテルの定義は?

A.カルテルとは、事業者または業界団体の構成事業者が、本来各事業者が自主的に決めるべき価格や販売・生産数量、販路などを他の事業者と共同して取り決める行為である。独占禁止法第2条6項によると、契約や協定、その他名義を問わず、事業者間で合意があり、結果的にそれぞれが同一の行動をとった場合は、「不当な取引制限」とされる。

例えば複数の事業者が共同で販売価格や企画プランに関する料率に一定基準を設ける取り決めをする行為は「価格カルテル」。また複数の事業者で生産量を取り決め共同で市場への供給量を制限する行為は「数量制限カルテル」となる。しかし近年では、価格や数量以外の内容に関する合意などもカルテルにあたるとして調査・摘発されることも増えているため、注意したい。

例えば「顧客・販路カルテル」「技術カルテル」「雇用カルテル」などがある。

Q.カルテルの何が悪いのか?

A.カルテルは、事業者間の公正な競争を減殺、競争の基盤を侵害する行為であり、結果的に消費者に不利益を与えるため、独占禁止法で禁止されている。本来消費者に選んでもらうためには、競合相手よりも良質な製品やより安い価格で提供しようとするべきだ。しかし例えば、各社横並びの価格をつけると消費者はより安価な商品を選べない。

また例えば複数の企業で生産量を取り決め共同で市場への供給量を制限する行為が行われれば、需要と供給の関係が乱れて一般的に価格が上昇する。その不利益を被るのは、消費者だ。そもそも公正な競争は、市場の活性化のためにも重要である。競争の基盤を侵害する行為は、厳しく処罰されるため、注意したい。

Q.カルテルの目的は?

A.カルテルを行おうとする目的は、事業者により異なる。しかし一般的には「売上や利益の維持・向上」「費用の抑制」などといった経営上の利益を得るのが目的だろう。ただなかには、消費者利益を目的として同業者間で価格などの足並みをそろえようとするカルテルもある。例えば同業者間で過当競争により質の低下や共倒れが発生すると結果的に消費者が不利益を被る。

そのような事態になるのを防ぐ目的で行うカルテルを「防衛的カルテル」という。独占禁止法は、事業者が互いに公正な競争を行うことで消費者に良質・安価な商品を提供することが目的である。目的や事情は何であれ公正な競争を阻害する行為には注意が必要だ。

Q.カルテルの身近な例は?

A.カルテルが発生すると公正取引委員会のサイトなどで公表される。このなかから身近な例を2つ紹介する。

・壁紙販売業者3社で行われたカルテル事例
公正取引委員会によると原油価格の高騰で壁紙の仕入れ値が上昇傾向にあるなか、1社が取引先への出荷卸値の引き上げを通知し、他の2社が追随。3社の営業責任者が見本市の会場で卸値について協議をし、1社の値上げに合わせて他2社も引き上げる旨の合意があった。

・近畿地方の複数の百貨店によるギフト商品配送料にかかるカルテル事例
各社は、お歳暮などのギフトを全国一律料金で配送するサービスを行っている。しかし実費の一部は、各社負担だ。各社は、配送業者から値上げの要請を受けて担当者同士で一律料金を引き上げる旨合意していた。

ちなみに2つの事例とも独占禁止法違反を事前申告した事業者は、課徴金納付命令を免れている。事業者は、気の引き締めのためにも随時事例のチェックをしておきたい。

續 恵美子
著:續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。こうした経験をもとに、生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などを行う。
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