不動産投資をする中で「賃貸併用住宅」という言葉を耳にしますが以下のような疑問を感じたことはないでしょうか。

  • 賃貸併用住宅とは何?
  • どんなメリットやデメリットがあるの?
  • どんな人に向いているの?

賃貸併用住宅には、投資家の個人属性やライフプランによって向き不向きが明確に分かれる可能性があるため、投資をする前に正しく理解することが必要です。本記事では、賃貸併用住宅の概要や4つのメリットおよび3つのデメリットについて解説します。

「賃貸併用住宅」とは?

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(画像=Rawf8/stock.adobe.com)

一棟の建物の中に賃貸部分とオーナーの自宅が併存している住宅を「賃貸併用住宅」といいます。具体的なパターンは以下の通りです。

  • アパート(賃貸部分)と戸建(オーナーの自宅)がつながっているパターン
  • マンションの1室にオーナーが住んでいるパターン

「賃貸部分が事務所や店舗」「オーナーの自宅が併設されている」などでも賃貸併用住宅と呼びます。賃貸併用住宅は、賃貸部分からの家賃収入を得ることができるため、その中から住宅ローンを賄うことができれば家賃収入でマイホームを建てられるともいえるでしょう。

賃貸併用住宅のメリット4つ

賃貸併用住宅のメリットは、以下の4つです。

  • 固定資産税・都市計画税を抑えられる
  • 組めるローンの選択肢が増える
  • 住宅ローン控除の対象になり得る
  • 相続税対策になる

固定資産税・都市計画税を抑えられる

不動産を所有すると毎年固定資産税や都市計画税(一部地域)という税金がかかります。しかし賃貸併用住宅にすればこれらの税金を抑える効果が期待できるでしょう。なぜなら賃貸住宅では、戸数×200平方メートルまでの敷地部分は「小規模住宅用地」、それを上回る部分は「一般住宅用地」として扱われ課税金額のベースとなる課税標準額が以下のように軽減されるからです。

<固定資産税>

  • 200平方メートル以下の部分:小規模住宅用地として課税標準の6分の1に軽減
  • 200平方メートル超の部分:一般住宅用地として課税標準の3分の1に軽減

<都市計画税>

  • 200平方メートル以下の部分:小規模住宅用地として課税標準の3分の1に軽減
  • 200平方メートル超の部分:一般住宅用地として課税標準の3分の2に軽減

固定資産税・都市計画税は、固定コストの一つとなるため、軽減できればキャッシュフローの改善効果が見込めるでしょう。

組めるローンの選択肢が増える

一般的に賃貸アパートなどを購入・新築する際は、アパートローンという不動産投資など自己居住の用途以外の目的で利用できるローンを使うことが多い傾向です。賃貸併用住宅の場合は、投資という目的のみならず自己居住という目的も併存しています。そのため自己居住用の住戸面積が建物の延床面積の50%以上を満たせばアパートローンだけでなく住宅ローンも使える可能性があるでしょう。

2階建てなど比較的小規模な賃貸併用住宅で1階部分を自己居住用の住戸、2階部分を賃貸住戸とする場合などは、住宅ローンを使える可能性があります。アパートローンは、住宅ローンよりも金利が高いのが一般的です。そのため低い金利で融資を受けることができる住宅ローンを使える点は、支払利息という固定コストの削減ができることから大きなメリットといえるでしょう。

なお金融機関によっては、自己居住用の住戸と賃貸住戸の面積比率に関係なく居住スペースと賃貸スペースは、それぞれに別のローンで組まなければいけないこともあるため、注意が必要です。

住宅ローン控除の対象になり得る

住宅ローン控除とは、個人がマイホーム購入やリフォームのために金融機関で住宅ローンを組むとき条件を満たすことで一定期間(10年または13年)にわたって所得税・住民税の控除が受けられる制度です。住宅ローン控除を受けるための一定の条件は、「物件の購入かリフォーム(増築を含む)か」「購入する物件が新築物件か中古物件かで変わります。

<新築物件を購入した場合>
以下の5条件をすべて満たす必要があります。

  1. 本人が住居の引き渡しの日から6ヵ月以内に入居し、各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
  2. 床面積が50平方メートル※で床面積の2分の1以上の部分が自己居住用であること
  3. 合計所得金額が3,000万円以下※であること(控除を受ける年)
  4. 対象住戸のローン期間が10年以上であること
  5. 居住用にした年およびその前後2年の計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例等の適用を受けていないこと
    ※2021年度から床面積が40平方メートルに緩和されましたが、40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得の要件が1,000万円以下となります。

<中古物件を購入した場合>
新築物件を購入した場合の上記5条件に加えて以下の3条件を満たす必要があります。

  1. 以下の条件のうちいずれか
  • 住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得していること
  • 耐震基準適合証明書を取得していること
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
  • 築20年以内(耐火建築物の場合は築25年以内)であること
  1. 生計を共にする親族等から取得したものではないこと
  2. 贈与による取得でないこと

<リフォーム・増築の場合>
新築物件を購入した場合の上記5条件に加えて以下の3条件を満たすことが必要です。

  1. 以下の条件のうちいずれかを満たすリフォーム・増築であること
  • 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕または大規模の模様替えの工事
  • マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
  • リビング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
  • 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定または地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
  • 一定のバリアフリー改修工事
  • 一定の省エネ改修工事
  1. 工事費用が100万円を超えていること
  2. 工事費用のうち2分の1以上の額が自己の居住用部分の工事費用であること

相続税対策になる

賃貸併用住宅では、以下3つの税制度の活用によって相続税対策をすることができます。

  • アパート等の貸家としての評価
  • 貸家建付地という土地としての評価
  • 小規模宅地等の特例

賃貸住宅の建物およびそれが建っている土地という性質を利用すれば建物および土地それぞれの相続税評価額を圧縮することが可能です。具体的には、建物および土地のそれぞれの評価額を算出する際に借地権割合・借家権割合・賃貸割合等の数値を乗じることで価値がディスカウントされます。

賃貸併用住宅のデメリット3つ

賃貸併用住宅のデメリットは、以下の3つです。

  • 投資の収益性が下がる
  • 売却が難しくなる
  • 入居者から直接クレーム等を受ける可能性がある

投資の収益性が下がる

賃貸併用住宅では、建物の一部を自己居住用として使うため、一棟全体を賃貸する場合よりも家賃収入が減少し投資の収益性は下がるでしょう。そのため利回りを最優先に不動産投資を考えている投資家にとっては、賃貸併用住宅は向いていないかもしれません。住宅ローンや住宅ローン控除の活用を考えて自己居住用の住戸の比率を高めると収益性が下がります。

収益性を重視すると賃貸併用住宅のメリットを最大限に活かしきれない事態になりかねません。そのため不動産投資とマイホーム取得のどちらを重視するかを再確認しておきましょう。

売却が難しくなる

不動産投資は、売却というゴールを見据えることが必要です。しかし賃貸併用住宅の場合、物件を売却するとマイホームも同時に手放すことになるため、投資の出口戦略を立てるのが難しくなります。また「自己居住用の住戸が戸建て」「賃貸部分の間取りや構造と著しく異なる」といった場合は、購入する側もその後の運用に難しさを感じて敬遠してしまう可能性もあるでしょう。

そのため賃貸併用住宅を取得する場合は、売却も見据えて運用計画を立てることが非常に重要です。

入居者から直接クレーム等を受ける可能性がある

入居者と同じ建物に居住するため、入居者からのクレームや事務的な申し出などが管理会社を通さず直接オーナーに来る可能性があります。管理会社に委託料を支払って管理のアウトソーシングをしても自主管理に近い状態になり賃貸経営上の手間が増えてしまうリスクがあるでしょう。

投資プランのみならずライフスタイルもあわせて検討しましょう

賃貸併用住宅は、マイホームの取得と不動産投資を同時にできるため合理的な点もあります。一方で収益性や売却戦略の観点からは、不動産投資として非効率な点があることも事実です。賃貸併用住宅を検討する際は、マイホームの取得と不動産投資のどちらを重視するのかを加味して投資プランとライフプランの両面から考えることが求められます。

(提供:YANUSY

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